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中編3
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ホームルーム

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小学校4年の頃の話。

GWを前にした時期だったと思う。

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僕は4月からクラスに加わった転校生で。

都会から、田舎のその学校へやってきていた。

初めのうちは慣れなかったが、それでも、ひと月でだいぶクラスに馴染んだ頃だった。

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クラスメイトたちも仲良くしてくれた。

ひょうきんでお調子もののH君。転校初日に真っ先に話しかけてきてくれた。

クラスのリーダーW君。運動神経抜群で、明るい性格の兄貴肌。

同じ班のM君、Tさん、A君、Sさん。

M君はW君と親友で、よくつるんでいた。こちらもスポーツマンで女子にモテた。

でもTさんとこっそり一緒にいることが多かったから、ふたり付き合ってたのかもしれないな。

Tさんはおさげが似合うかわいい女の子だった。実家が弁当屋だった。

A君はのんびりした性格のふとっちょで、普段はぼんやりしているのに給食の時だけは輝いていた。

Sさんは勉強のできる大人っぽい性格の女子で、班長をやっていた。

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そして、となりの席のNさん。

ショートカットのちょっとボーイッシュな女の子で、明るく元気で、かわいかった。

家はTさん家の隣で、酒屋をやっていた。

僕にとって、彼女は特別だった。

転校初日に一目ぼれしてしまったからだ。

となりの席になれるとは、なんとラッキー。

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まあ、そんなこんなで他のクラスの子たちとも打ち解けてきたある日、下校前のホームルームでひとつの事件が持ち上がった。

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「皆気が付いていたと思うが、窓際の水槽、朝から空っぽだったろう?

今朝、先生が見たとき、水槽の中に習字の墨汁が入れられてて、中が真っ黒になっていた。

当然、中の金魚たちは全滅だ。

誰がこんなことやったのか、知っている奴はいるか?」

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いつもは温厚な男性の担任教師が、厳しい表情でクラスの皆に問いかける。

この担任は水槽の金魚をとてもかわいがっていた。

クラス中がざわめいた。

隣近所の席の子と、囁きあう。

「知ってる?」「誰だよ?」「しらねー」「だって昨日の放課後って、皆――」

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前日の放課後は、クラスのリーダーW君がドッジボールをやろうって言い出して、全員校庭に行ったはずだ。

結構白熱して、結局暗くなるまで皆残ってたっけ。

たぶん、全校生徒の中で、僕らのクラスだけが遅くまで学校にいた。

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「先生が放課後に一度、教室に立ち寄った時はまだ異常はなかった。で、今朝はもう真っ黒だ」

クラスはしんと静まりかえった。

担任はこのクラスの中に犯人がいると思っている、そのことに全員が気づいたからだ。

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「もう一度聞く。だれがやったか、知っている奴はいるか?」

担任が静かに、しかし怒りをこめて問いかける。

皆うつむいた。

お葬式のようなこの空気、苦手だ(得意な奴はいないと思うが)。

僕自身にやましいところはないのだが、連帯責任というような雰囲気に飲まれてうつむいてしまう。

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クラスの様子を見て、担任は言った。

「わかった。全員目をつぶれ。心当たりのある奴は手を上げろ。皆早く帰りたいよな?先生もだ。でも誰も手を上げなかったら、ずっとそのままだ」

えらいことになったものだ。この大人もちょっと、冷静じゃない。

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目をつぶれ、と担任は繰り返した。

真っ暗になる視界。

聴覚だけが敏感になる。

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時計の針の音。

誰かが椅子を引く音。

抑えた咳払い。

廊下や校庭から聞こえてくる、下校する生徒たちの声。

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耐え難い時間だった。

静寂の中、担任が皆の席の間をコツコツと歩き回る。

――早く帰りたい。

――なんで自分までこんなことに。いい迷惑だ。

――誰か!やった奴!早く名乗り出て手を上げろ!

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僕は焦(じ)れた。

そして耐えかねて、こっそり薄目を開けた。

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ひょうきんでお調子もののH君。

クラスのリーダーW君。

同じ班のM君、Tさん、A君、Sさん。

そして、となりの席の、憧れのNさん。

他のクラスメイトたち。

皆、目をつぶってうつむいている。

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そして皆、

黙って僕の方を指さしていた。

物言わぬ、動かぬ石像のように。

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僕は息を飲んだ。

コツコツと足音を響かせ、担任がゆっくりと僕の方に近づいてきた。

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怖い怖い怖い怖い怖いーーーーーー!!!!!

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最後まで読んで体温がスッと下がるのがわかりました。
恐い。

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いやいやいやいやいやいや、社長。
いやいやいやいやいやいや

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こわーーーーーーーーーーーーーっっっっっ

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なんてこった((((゜д゜;))))ガクブル

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