wallpaper:237
ふと立ち寄った深夜のコインランドリーに、下着姿の女がいるんだ。
nextpage
時間は深夜2時。
俺も俺で、なんでこんな時間にコインランドリーに来ているかというと、「明日のデートはこれで行く!」と決めていた服の上に、誤ってコーヒーをこぼしてしまったからだ。
今から部屋の洗濯機で洗濯したところで朝までには乾かないので、乾燥機のあるコインランドリーに行こうと思い立ったわけだ。
nextpage
で、汚してしまった服を持って、部屋着のまま近所のコインランドリーに来てみると、中に下着姿の若い女が、椅子に座って雑誌を読んでいるんだ。
それも結構な美人が。
nextpage
わが目を疑ったね。あまりに非常識な光景だ。
それから俺は考えた。この場合考えられるのは……、
nextpage
その1、「見間違いだ」。
ぱっと見、下着姿に見えるが、肌色の服を着ているだけかもしれない。
ガラス戸の外からじろじろと観察する。
いや、やはり下着だ。服は着ていない。
nextpage
その2、「これは夢だ」。
俺はいつの間にか寝てしまっていたんだな。
淫夢ってやつだ。醒めるのもったいないなー。
えいっ!痛てて……。
ほっぺをつねるがちゃんと痛い。夢ではないようだ……。
nextpage
その3、「アブナイ人だ」。
いくら深夜だからって、下着姿でコインランドリーにいるなんてなあ……。普通じゃない。
ちょっとアブナイ人かもしれない。
美人なのになあ……。胸も大きいし。E?F?G?Hカップか……?
でも話しかけたら奇声をあげたりなんかして……。
nextpage
「こ、こんばんは~……」
「あ…、はい。こんばんは。こんな時間にお洗濯ですか?」
「え、ええ。明日着ていく服にコーヒーこぼしちゃって。いや~僕ってドジで……」
「まあ、大変ですね」
nextpage
ふ、普通な対応だな……。恥ずかしがってるようにも見えないし。
もしかして幽霊、とか思ったけど、ちゃんと足もあるしな。
あとは……。
nextpage
その4、「透視能力に目覚めた」。
彼女が恥ずかしがっていない以上、自分にだけ彼女が下着姿に見えている!
やったよ!全人類の夢が叶っちゃったよ!
道行く女性の下着も、その下も見放題だよ!
俺今後往来を普通の顔して歩けるかしらん……。
ってそんなわけないか。自分の身体見たらちゃんと服着てるしな。
nextpage
それにそもそも透視能力って、道行く男性の服も透けて見えちゃいそうで、一概に良い能力とも言い難いな……。
さてさて……。
nextpage
結論としては、
「なんだかしらんがラッキー」にしておくか。
まあ最初から理由なんてどうでもいいし。
せいぜいさりげなく見貯め(?)しとこ~っと。
nextpage
汚れた服と洗剤を洗濯機に入れ、コインを投入する。
そして、彼女の隣の椅子に座って、置いてあった古い週刊誌を広げる。
漫画を読んでいるふりをしながら、下着姿を堪能……、
nextpage
――ピー。
先に回っていた洗濯機が終了を告げる。
彼女が席を立つ。
なんだよもー。
nextpage
洗濯機の蓋を開けて、中の衣類を取り出す。
白いワンピースのようだ。
ただ、そこには大きなシミが。
nextpage
「あー、やっぱり血って落ちないもんですねー」
言うが早いか、彼女は俺に走り寄って、どこから取り出しのか大型の包丁を俺の腹に突き立てる。
nextpage
「だってあなた、見ちゃうんだもん」
すねた口調で言う彼女も可愛かった。
作者綿貫一
こんな噺を。