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中編3
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親切な先輩

サークル仲間に無理矢理参加させられた合コンは予想通り人数合わせの様で、仲間の二人は合コンというより初めからカップルで参加していて、相手の男が連れて来たのもさえない人数合わせの様で、全くK子さんの趣味に合わなかった。

カラオケでも行こう、という二人の誘いを断ったK子さんは居酒屋を出て、駅へ向かおうとしていると『二次会は行かないの?』と声を掛けられた。

声を掛けてきたのは同席していたSだった。

同じ大学の先輩だと名乗ったSはかなりの美人で、男たちの注目を集めていたのを思い出した。

Sの誘いでもう少し飲んでいこうという事になり、駅前の居酒屋に入った。

『K子さん、T県出身なんだって?』

合コンの失敗をネタに盛り上がっているとSが言った。

『さっき自己紹介で言ってたでしょ。夏休みはT県に帰るの?』

二日後からは夏休みだった。

「どうしようか未だ決めていない、旅費が結構掛かるから」とK子さんが答えると、Sは「T県のハイキングコースのゴミ拾いのボランティアが有るので参加しないか?」と言った。

Sが所属しているアウトドア愛好会グループはバーベキューキャンプを予定しており、T県のそのハイキングコースにあるキャンプ場のオーナーと契約して、ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアを行う代わりにキャンプ場を無料で使用させて貰える。

しかもバーベキューの食材も提供してもらえる、との事だった。

『どう?ボランティアだからバイト代は出ないけど、行きは私の車で一緒に行けば旅費も掛からないしね。ただ、私達はその後の予定があるから、帰りはK子さん、自分で何とかしてもらわなければならないけど』

実家には2年くらい戻っていない。かなり旅費が掛かるので今年も行かない予定だった。

確かに片道分の旅費で済むし、野外でバーべキューというのも楽しそうだ。

『じゃあ、行こうかな』

K子さんが答えると、Sは言った。

『そう。じゃ、明後日の朝7時に学校の前で待ち合せしましょう』

K子さんは携帯番号を教えてもらい、Sと別れた。

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翌日。

部屋の掃除と洗濯を済ませて、明日の準備をしていると携帯に電話が掛かって来た。実家からだった。

久しぶりの帰省に喜ぶ母親に、明日は近くのキャンプ場で友達と泊まってから、翌日に家に向かう事を告げると「キャンプ場なんて有ったかしら?」と言う。

ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアの事を説明して、その近くだと言うとハイキングコースなんて無いだろうと言われる。

『お前、忘れたの?あそこはセメント工場のハゲ山だったでしょう』

そう言われたK子さんは、子供の頃に電車から見えた木のない削り取られた灰色の山々をハッキリと思いだした。

Sに電話して問い合わせるのも躊躇われたK子さんはサークル仲間に電話して、Sの事を聞いてみた。

『ああ、あの合コンのきれいなお姉さん?』

サークル仲間によると、みんなSとはあの時が初対面で幹事役が聞いたところだと、都合が悪くなった女の子の代理で来たと言っていたという。

「じゃ、その都合が悪くなった女の子は?」と聞くと友達の友達とかいう人で、良くは知らないし、携帯とかの番号も聞いていない。

翌日の待ち合せにはK子さんは行かなかった。

「Sから電話が有ったらどうしようか?」と怖かったが、電話は掛かって来なかった。

友達と一緒にSの携帯に電話してみると、何度掛けても呼び出し音が鳴り続けるだけで、2日後には通話不能となった。

調べてみると、Sの言っていたハイキングコースなど無くキャンプ場も存在していない事がわかった。

学校に問い合わせると、Sという生徒は在籍していなかった。

都合が悪くなったという女の子も未だに見つかっていない。

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