music:4
(あー、死にてぇ….。)
ここ1ヶ月ほど僕はそんな事ばかり考えていた。
きっと鬱なのだろう、 なにもする気になれない。大学にもしばらく行っていない。幸か不幸か一人暮らしのため、大学に行かなくてもとやかく言ってくる人間はいない、そして心配する人間もいない。
思えばこうなったのは、僕がしていたバイトが原因なのかもしれない。
大学に入ってから不採用続きで、やっと採用されたバイトだったが、仕事でどうしてもできないことがあり、店長からよく注意されバイトに行くのが嫌になっていた。そしてついに店長からのシフトの電話にも出れなくなり、今に至る。
(1ヶ月全く連絡をとってないから、辞めたことになってるんだろうな。)
sound:16
ピンポーン
不意に玄関の呼び鈴が鳴った。一回は無視したが、2回3回としつこくなるので仕方なく出ることにした。
「高橋(僕の名字)さーん、お届けものでーす。」
宅急便のお兄さんがインターホン越しに言う。
「はい………」
僕はドアを開ける。
「ここにハンコお願いします。」
そう言われて僕がハンコを押すと
「ありがとうございます。」
そうさわやかに言って宅急便のお兄さんは去っていった。
(この荷物、差出人が書いてないけどなんだろう?とりあえず開けてみるか。)
僕は不思議に思いながらも箱を開けてみた。すると中には、瓶に入った薬のようなものと、取り扱い説明書と思われる紙が入っていた。
僕は久しぶりに贈り物をもらったことと、この不可解な状況に気分が良くなりその紙を読んでみることにした。それにはこう書いてあった。
「死」取り扱い説明書
本製品は一錠服用していただけば、安全かつ確実に死ぬことができます。
注意
必ず用法・用量を守って服用して下さい。
この取り扱い説明書は決して捨てないで下さい。
どうやらこの薬を使えば確実に死ぬことができるらしい。どうにもうさんくさい話だが、僕はちょうど死にたいと考えてたため、使ってみることにした。
(これから死ぬのなら、最後にLINEぐらい確認しておこうか。)
僕はLINEを確認した。僕のトーク履歴には大学のサークルの友人や先輩、後輩からのメッセージが大量に届いていた。
隆
まこと(僕の名前)!最近見ないけど大丈夫か?読んだら一言でいいから返信してくれ。
奈々実
まことさん。何か困ってることがあるなら相談して下さいね。できるかぎり力になります。
翔さん
まことー!みんなお前のことを待ってるぞ。帰ってこい!
そんな感じのメッセージが読み切れないほどに届いていた。
僕はみんなに
お疲れ様です。
皆さん心配かけてすみません。僕は大丈夫です。ただ、また皆さんに会えるかどうかは分からない状態です。また会えることになったら連絡します。
と返信した
そして僕は薬を飲んだ。その瞬間、僕の意識は遠のいていった。
music:5
気がつくと朝になっていた。昨日までの憂鬱な気分が嘘のように今日は気分がいい。
(大学に行こう。)
僕はそう思い、大学へ向かった。
結局、あの薬で死ぬことはできなかった。いや、実際あの薬を使って昨日までの卑屈な自分は死んだのだ。あの薬は、服用した人のマイナス面を死なせるものだったのだろう。
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『今日午前10時ごろ、都内の大学に通う高橋まことさんの遺体が自宅アパートで発見されました。遺体は死後3日ほどたっていますが、目立った外傷はなく、また、知人男性の「3日前に大丈夫だってメッセージをもらったのにこんなことになるなんて信じられない」という証言から警察は事故と病死の方向で捜査を進めています。』
作者白真 玲珠
どうもプラタナスです。
新作ですが、いろいろ読みづらいところやおかしいところがあるかもしれません。もし何か気づいたら優しく指摘して下さい>_<
コメントいただけると嬉しいです。