これは私が数年前に会社の同僚と旅行にいった時の話です。
あまり怖くなく、長文、駄文ですがご了承ください。
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1999年12月29日、待ちに待った年末休みに入った私達は前もって予約した3泊4日旅行に出かけた。
メンバーは私(薫)、竜也(タツ)、沙苗(サナ)、智子(チコ)の4人。
場所は北関東のとある旅館。
決めたのは竜也で、どうしてもそこに行きたい理由が《旅館の離れに有名な心霊スポットがある。なかなか行けないからこの時に行っときたい》である。
竜也の言う通り、私達の家、会社は北海道でいつでも行ける距離ではない。
ただ問題なのは竜也が大のオカルト好きで、怖そうな場所を見つけては一人ででも行き、尚且つ心霊アルバムなんてものを作ってる危ない奴だ。
まぁ撮った写真に心霊的なのは何一つなかったが。
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私達は新幹線と電車を利用し、目的地の駅に到着した。
時間は14時を回ったとこで、15時半のチェックインまではまだ時間がある。
竜也『着いたなぁ!時間あるし軽く何か食べよか!』
私『だな。それよりタツ、お前マジで行くのか?』
竜也『もち!俺にとってはその為の旅行だし!』
私『物好きだねぇ。ま、結果楽しみにしてるわ。』
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くだらない話をしながら私達は近くの喫茶店に入り、各サンドイッチとコーヒーを注文した。
程なくして料理を持ってきた店員に竜也が尋ねた。
竜也『店員さん、この辺の人ですか?』
店員『はい。そうですが。』
竜也『じゃあこの辺の有名な心霊スポット知ってます??』
私『バカ‼店員さんに失礼だろ‼』
店員『構いませんよ。多分首坂トンネルだと思いますね。』
竜也『そこの場所わかりますか??』
店員『確か122号線沿いにあったと思いますけど、ちょっとお待ちください。』
店員は奥からパンフレットのような物を取り出し、渡してきた。
店員『これに詳しく場所が載ってるのでどうぞ。』
竜也『ありがとうございます!』
店員『私としてはその場所はあまり勧めたくないんですけどね。悪い噂しか聞きませんので。それにトンネル自体崩れて封鎖されてるはずなので行っても入れませんよ。』
そう言って店員は奥へと消えていった。
沙苗『やめといた方が良いんじゃない?店員さんの目、マジだったよ?』
竜也『行ってみねーとわかんねーよ。さ、出ようぜ!』
皆それぞれ会計を済まし、店を出て旅館へ向かった。
旅館は駅からさほど離れてなかったので喫茶店からでも10分で着いた。
時間は16時過ぎ、館内に入りベルを鳴らすと館主らしきおじさんが出てきた。
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竜也『予約してた木嶌(竜也の名字)です。』
館主『お待ちしてました。お部屋は2階なので、さっそくご案内します。』
私『結構広いなぁ!』
沙苗『うん!それに綺麗だし!』
館主『お待たせしました。こちらです。食事は1階にて、18時半からですのでまたお呼びします。』
館主が案内してくれた部屋は20帖以上はある大部屋で、広々としたベランダには洒落たテーブルと椅子。
また、和式仕様なのが癒される。
部屋の中央に間仕切りドアも付いている。
これは男女2組なので、就寝の際に別々で寝るため。
旅館に着いたことで、長旅から疲れが出た私は今日は何処にも行かず1日ゆっくりすることにした。
智子『薫くん、何処も行かないの??』
私『ああ。3泊あるし今日はのんびりするよ。』
智子『じゃあアタシはサナと出かけてくるね!』
私『晩飯までには戻ってこいよ。』
女子達は手を振って部屋から出ていった。
竜也はというと… あの場所に行く準備を淡々と済ませている。
そんな竜也を見ながら私は眠りについた。
。
。
。
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沙苗『……くん、…薫くん起きて!』
私『んあ??ああ、悪い。寝入ってしまったな。』
智子『もう中居さんが食事出来てるって!』
私『じゃあ降りよか。…あれ?タツは?』
沙苗『アタシら帰ってきた時はいなかったよ?といれじゃない?』
智子『とりあえず下行こ!そのうち降りてくるよ!』
私は仕方なく竜也に一言メールだけ入れて下に降りた。
大広間を開けると豪勢な食事が並んでいた。
竜也を除いた私達は談笑しながら食事にがっついた。
1時間くらい経っただろうか、未だ竜也はから返事がないことに気付いた私は心配と、竜也の身勝手な行動への苛立ちが入り交じった感情を抑えながら電話をかけた。
が……
《お掛けになった番号は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません》
私『あのバカ電源切ってやがる』
沙苗『……もしかして、あそこに行ったんじゃ!?』
私『あの何とかトンネルってとこか??行ったとしても不思議じゃないだろ。アイツ昔からそういう所一人で行く奴だし。それにあの店員さんも封鎖されてるって言ってただろ?心配しなくても収穫なしで帰ってくるよ!それより温泉入ろうぜ。お前らも入ってこいよ。』
そう言って私は足早に温泉に入り、日々の疲れを癒した。
3~40分程浸かり身体も温まった私は寝間着に着替え、部屋に向かうと女子組が落ち着きのない行動をとっている。
私『どした??』
智子『竜也君から電話があったんだけど、何にも喋んなくて… その後変な雑音が聞こえたと思ったら切れちゃって…』
私『イタズラしてんだろ。俺かけるわ』
『♪~♪~ガチャ。…(私→)タツか?お前イタズラしてんのかよ?』
『……ぃ……』
私『あ??』
『…た……ぃぃ…』
私『はっきり喋れよオメー‼』
『いぃい------‼‼……ガチャ‼ツー、ツー、』
最後の悲鳴のような声を聞いた時、霊自体信じてない私でもこれはただ事じゃないと感じた。
私『俺、ちょっと行ってくるしお前らは部屋で待ってて!絶対出るなよ!』
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私はパンフレットを持ち、上着を着て旅館を飛び出した。
時間は21時過ぎ、地図を頼りに足早に向かった。
10分くらい歩いただろうか、看板が見えた。
【この先旧首坂トンネル・工事中につき別ルートを利用ください】
看板を確認した私は足を速めた。
竜也は無事なのか、それとも…
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色んな事が頭を過る中、トンネルに着いた私は持っていた懐中電灯で中を照らし様子を伺ったが、入り口からでは暗すぎて奥まで見えないのでとにかく突き進んだ。
50メートル程進むと何やら人影が見えた。
その人影は俺に背を向け、土下座??のような体勢をとっている。
私『タツ??』
声をかけても返答はない。
竜也であることは間違いない。
ただ、しきりにブツブツ言いながら頭を上げ下げしている。
その異様な光景に恐怖しながらも私は竜也に近付き何をしてるのか確認すると、崩れた岩中の中央にある祠のような物の中の鏡に向かって頭を上げ下げしていたのだ。
そして竜也が呟いていた言葉もわかったのだが、その鏡に向かってひたすら謝っている。
私『タツ‼お前何してんだよ!帰るぞ‼』
私が掴む手を強く振りほどき、竜也は謝り続けている。
竜也『ごめんなさい。。ごめんなさいぃぃ…』
私は竜也を押し退け、鏡に何が写ってるのか確かめてやった。
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そこには顔半分が欠如し、憎悪に満ちた顔で竜也の首に鎌を突き立ててる女の姿が写し出されていた。
私『うぉあ‼‼』
常識ではあり得ない光景に腰が抜けた。
横には未だ謝り続けている竜也がいる。
私は震える足で踏ん張り、強引に竜也を引っ張り旅館へ連れて帰ろうとした時だった。
【ニガサナイカラネ】
それがハッキリ聞こえた時本当に泣きそうだったが、今は竜也を連れて帰ることで必死だった。
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何とか旅館に着いた私は竜也を布団に横たわらせた。
気絶してるのか、寝てるのかわからないがとりあえず落ち着いているようだ。
心配していた女子組に事情を話すと、2人とも震え上がり泣いていた。
無理もない。私でも泣いた。
あれは尋常じゃなかったし、またあの言葉から易々と帰れるとは思えなかった。
私『とにかく連れて帰れたし今日はもう休んで、明日神社なり行って相談しよう』
しかしこの判断が間違っていた。
。
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沙苗、智子『キャーッ‼薫くん‼早く起きてー‼』
女子達の悲鳴で飛び起きた私の目に飛び込んできたのは、正座し頭を前後左右に振り回してる竜也の姿だった。
かなり強く振り回してるからか、目がカメレオンみたいにあらぬ方向に向き、舌を垂らしている。
私『タツ‼しっかりしろ‼』
胸ぐらを掴み頬を叩くが、竜也は止まらない。
私達の悲鳴に気付いたのか、館主さんや中居さんが入ってきた。
中居さん『キャッ‼』
館主『お客様!大丈夫ですか!?何があったんですか!?』
私『今は説明してる暇はありません‼誰か神社かどこか連れてってください‼』
館主『すぐ車を用意します‼』
館主さんが用意してくれてる間に中居さんにロープを持ってきてもらい、竜也を縛り付けて皆で抱えながら下に降りた。
既に館主さんがワゴン車を停めてトランクを開けてくれたので、強引に竜也を押し込んで館主の運転で神社に向かった。
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車で走ること30分、神社に着いた私達は竜也を引きずりながら本堂の扉を開けると、神主さんらしき人が竜也を見るなり開口一番に叫んだ。
神主『お前達何をした!?』
私は事の経緯を細かく話すと何故か私が神主さんにビンタされた。
神主『馬鹿者が‼友人なら何がなんでも止めるべきだろ‼』
私『…すいません。』
神主さんは大きく溜め息をつき、冷徹に言い放った。
神主『この者は助からん。恐らくは一生このままだろう。お祓い出来ないとか呪いが強いとかそういう問題ではない。』
私『竜也はこのまま死ぬんですか?』
神主『もう死んでるようなものだ。既に魂は喰われておる。』
私『喰われてるって… まさかあの鏡に写っていた女にですか?』
神主『そうだ。あの鏡は来死鏡【らいしきょう】と言って見た者を不運に、または死に至らす魔の鏡よ。その効果は様々ですぐに死が訪れる者もいれば、おぬしの友人のように永遠の地獄をさ迷うはめになる場合もある。どちらにせよあの子は助からん。私に出来ることはあの子の最後が来るまで預かってやるくらいしか出来ん。
おぬしらはあの子の家族や勤め先に正直に事の経緯を話なさい。恨まれるのを覚悟の上でな。』
神主さんに叱りを受けた私達は3泊の予定を急遽変更し、1泊分と残りのキャンセル料を払い北海道へと帰った。
その後会社、竜也のご家族に事情を説明してお詫びの品を渡し、ただただ謝り続けた。
竜也の母親は私達を訴えると目を血走らせていたが、父親は《もう良いから、今後2度と顔を見せないでほしい》とのことだった。
私達は最後に深々と頭を下げてその場を去った。
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それから3年後、風の噂だが竜也の母親が自殺したと聞いた。
私達を恨みながら首を吊ったと……
また、何度かあの神社に竜也の様子を電話で聞いたが依然として変わらず、あのまま衰弱していっている。
死は近いだろうと。。
私達はあの時の事をずっと後悔しています。
皆さんも興味本意で心霊スポットには行かないでください。
【終】
作者ともすけ
あまり怖くありません。
すみません。
9月の傑作のつもりですが……
画像いくつかお借りしました。
読んでくださる方々、ありがとうございます!