中編4
  • 表示切替
  • 使い方

断罪復讐

music:4

木島秀一が目覚めたとき、彼は見知らぬ部屋の中、正確には見知らぬ部屋に置かれた檻の中にいた。

木島は自分が置かれた状況を理解しようと、自分の身体を調べた。

両足は枷で檻に繋がれ、手錠がかけられて、自由には動けないようになっていた。檻の隅には刑務所にあるような便器が備え付けてあった。用はそこで足せということだろう。食事を差し入れるための小窓もあるようだ。

と、そこまで木島が状況を把握したところで、誰かがドアを開ける音が聞こえた。

ガチャリ

入ってきたのは20代半ばくらいの見知らぬ男だった。いや、正確には見知らぬはずの男だった。というのも、木島は男を見た時、一瞬どこかで会ったような気がしたのだ。

「やぁ、目が覚めたんだね。」

男は木島が起きていることに気づき話しかけてきた。

「僕が誰かわからないって顔をしてるね。まぁそうだろうね、君たちの側の人間は、僕たちのことなんかすぐに忘れてしまうよね?

あぁ、別に構わないよ、今すぐ思い出さなくて、これからゆっくり思い出してくれればいいから。呼び名が必要なら二十面相とでも呼んでよ。

とにかく、君が置かれている状況を説明しよう。まず君は見ての通り檻の中だ。両手両足には枷がかけられ自由がきかない。君にはその檻の中での自由しかない。そこまでは見れば大体わかるね?じゃあ次だ、これから君がどんな目にあうか。賢い君なら察しがつくだろうけど、想像を絶するほどひどい目にあってもらう予定だよ。ふふふ、まぁ、想像を絶するのだから、言葉にはできないよ。実際に、体験してもらうと、しようか、今日から、じっくりとね。さて、今日の食事だ。」

そう言って二十面相と名乗る男は食事用の小窓から食事を差し入れた。パン一切れを。

「水は給水器からご自由にどうぞ、犬用のだけどね。」

二十面相は檻の上部についているペット用給水器を指差しそう言った。

「おい、食事ってこれだけなのか⁈」

木島がそう食ってかかると。

「そうだよ。あぁ、言いたいことはわかるよ。全然足りないんだろう?そりゃあそうさ。それが君がこれから体験する酷い目の第1弾なんだから。なあに、大丈夫だよ、死なない、程度の、量は、あるから。」

そう言って二十面相は部屋を出て行ってしまった。

木島はパン一切れを食べ終えると、特にすることもないので体力温存のためにその日は眠った。

次の日

「やぁ、おはよう。気分はどうかな?」

「最悪だ…。」

二十面相の問いかけに対して木島は答える。

「まぁこれでも食べて元気を出しなよ。朝食だ。」

そう言って男はパン一切れを差し入れた。

「二十面相、トイレに行くから、この手錠と枷を外してくれ。」

「用をたすくらい外さなくてもできるだろう。そういう風に設計してあるんだから。」

「二十面相、風呂に入りたいからここから一度出してくれないか。」

「まだ風呂に入らなくても問題ないさ。フランス人なんか1週間に一度くらいらしいじゃないか。」

木島はどうにかして逃げ出すチャンスを作ろうとしたが、二十面相は全て想定済みで、全て失敗に終わった。

監禁から1週間後

「やあ木島くん、ご機嫌いかがかな?今日は面白いものを持ってきたんだ。これ、な〜んだ?」

二十面相の手には鞭が握られていた。

「鞭…か?」

「大正解。そろそろ次のステップに移行するころかと思ってね。用意したんだ。」

そういうと、二十面相は木島をその鞭でたたき始めた。

「うっ…っぐ…ぐぁっ…。」

木島がうめく。

「やっぱり僕の思った通りだ。エアガンとか棒とかも考えたんだけど、鞭が一番たたきやすい。」

二十面相がもう一度鞭を振り下ろした時、木島が振り下ろされた鞭をなんとか掴んだ。

「まだ、そんな力が残ってたんだ。」

そういうと二十面相は懐からエアガンを取り出し木島に向けて撃った。

「残念だけど、想定内だよ。僕が、対策を、立ててないわけが、ないだろう?」

そういうと二十面相は鞭を持って部屋から出て行った。

監禁から1ヶ月後

「ねぇ、木島くん、まだ僕が誰か思い出せないのかい?」

「………。」

「そうみたいだね。じゃあ今から思い出させてあげるよ。」

そういい、二十面相は鞭を振り上げ、

「俺は!」

ビシィッ

「学生の頃!」

ビシィッ

「お前に!」

ビシィッ

「散々!」

バシィッ

「嫌がらせを!」

バシィッ

「受けた!」

バシィッ

「鈴木だ!」

バシィッ

その時木島は全てを悟った。今自分を鞭で打ち据えている男は、自分が学生の時に嫌がらせをしていたクラスメイトの鈴木であり、彼はその復讐のために自分を監禁していたのだと。

(そうだ、思い出した。こいつ、高校の時同じクラスだった鈴木だ。)

「鈴木、すまなかった…。俺が悪かった。だから頼む…。許してくれ…。ここから出してくれ…。」

木島はそう懇願したが、鈴木は冷ややかな目で彼を見下ろすと

「悪いけど、許すつもりなんて、毛頭無いよ。」

そう言い放ったのだった。

Concrete
コメント怖い
7
9
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信