今回のお話も知り合いの絵梨花さんから聞いたお話です。
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最近、私はポケモンGOにはまりました。
しかし、レアなポケモンを捕まえるために心霊スポットに入りひどい目に遭いました。
激怒した旦那にスマホを取り上げられそうになりましたが、涙ながらに額を床に擦り付けてなんとか返してもらいました。
そのとき、もうポケモンを捕まえるために危険なところにはいくまいと心に決めたのです。
ピカチュウを捕まえるために原発に入ったというようなニュースを目にしても、私の心は冷静でした。
「あ~、なるほど原発にピカチュウいそうだよね、電気つながりか、わかるわ~」
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そんな時でした。
中学生の娘がネットである情報を見つけました。
「ママ、お城のあるところでカブトが出るって書いてるよ!」
カブトというのは文字通りカブトガニのポケモンで当然鎧の兜にも似ていました。
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「カブトが兜つながりでお城のあるところに出るなんて!
ニクイ演出考えるじゃない、ポケモンGO!」
まだ私はカブトと遭遇したことがなかったので、喜び勇んで近くのお城のある大きな公園に行くことを決めました。
とはいえ、近くにあるそのお城、今は大きな公園になっているとはいえ、その石垣が作られる際に人柱が埋められたという逸話のある地元では有名な霊的スポットでもありました。
そこで今回は前回の失敗を踏まえて、霊感の強い娘の椎奈と一緒に行くことにしました。
そもそも大きな公園ではポケモンがたくさん現れるので私の期待も大きく膨らみます。
そして、そのお城の堀の橋を渡って中に入るとすぐさまポケモン出るわ出るわの状態になりました。
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「ママ、お堀にさっそくカブトがいる!」
「石垣の方にイワークよ、イワーク出た!」
「ママ、近くにアズマオウもいる、多分お堀の方よ!」
「うへへへ、大漁じゃ~!」
まだ持っていないポケモンの乱舞に私達は狂ったようにはしゃぎました。
ところが、せっかくの楽しい時間だったのに空がいつの間にか暗くなりぽつぽつと雨が降り始めました。
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私と娘は仕方なく近くの建物の下で雨宿りをしました。
すると、近くにいるポケモンを示す画面に鎧武者に似た鋭いシルエットが現れました。
「か、かかか、かかかかか、カブトプスだ!」
カブトプスはその名前のグレードアップ感の通りカブトの進化ポケモンでカブトよりもさらにレアで強いポケモンでした。
「ママ、ちょっと待って、目の前のお城の方から何か変な感じがする」
「よし、お城の方ね、ママ行ってくるわ!」
「え、いや、ちょっと、そうじゃなくて」
私は雨の中お城の方に向かって走りました。
そして・・・現れました、カブトプスが!
しかし、スマホの捕獲モードの画面を見た時に何か違和感がありました。
ポケモンGOのポケモン捕獲画面では現れたポケモンの背景が実際にスマホのカメラで撮りこまれた映像になるのですが、カブトプスの後ろの背景に何かがいました。
「な、なに、これ?」
それは鎧を身に着けた武者でした。
鎧武者がカブトプスの後ろに背後霊のように立っていました。
「いえええ、また出た!」
私は慌ててスマホを目の前から離して前方を確認しましたが、武者らしき姿はどこにもいません。
そして、もう一度スマホの画面に戻ると、やっぱりいます、カブトプスの後ろに!
既にポケモンの捕獲画面に入っているので、私は後ろに振り返ると一目散に逃げました。
しかし、手に持つスマホの中の背景画像には鎧武者がぴったりと憑いて来ていました。
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こうなったら、カブトプスを捕まえてしまえば、背景画像も消えると思い捕獲用のモンスターボールを投げようとしましたが、雨の水滴で滑ってスマホの画面がうまく操れません。
「うえ~ん、さすが歴戦の強者だわ、水攻めか!」
私は泣きながら狂ったようにスマホ画面をなぞり続けました。
しかし、どうにか飛んで行ったモンスターボールもことごとくはじき返されました。
「ママ、だから言ったのに、貸して!」
娘の椎奈のところまで戻ってきた私は言われるままにスマホを渡しました。
椎奈は手に取ったスマホをお城の方に向けて、目をつぶりました。
「・・・お城の中で騒がしくして申し訳ありません。
どうか元のところにお戻りください」
祈るようにつぶやくとまるで九字を切るような動きですっと指先で捕獲用のモンスターボールをカブトプスに投げました。
とてもきれいで見とれてしまうような所作でした。
流れるような動きでボールが弧を描き、溢れる光がカブトプスを包み込みました。
すると非常にレアなポケモンなのですが、一発で捕獲することができました。
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椎奈はそれを確認してか、ゆっくりと目を開きました。
「・・・ありがとうございます。
貴方様の贈り物、武士の化身と思い大事にさせていただきます」
そう念じるようにお礼の言葉を発すると静かにお城に向かって頭を下げました。
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「すごい、しぃちゃん、なにいまの、悪霊の除霊?」
「ママ、あの方は悪霊なんかじゃないよ、むしろこのお城の守護をしている神様に近い霊だよ。
私達が公園の中であんまりにも激しい念を出して騒がしくしてるから、気になって近づいて来ただけ」
娘は私をたしなめるように説明しました。
詳しく見てみるとその頂いたカブトプスは同じ種族の中でも特に強い個体で、本当に歴戦の強者の化身のようでした。
「神様、騒がしくしてごめんなさい、でも強い武士の化身をありがとうございました」
喜んでお城を後にし、家に戻って旦那に話をしました。
すると、なんて危ないことをするのかとまた死ぬほど怒られました。
一つ間違えば神様を怒らせていたじゃないかと旦那は激怒しました。
言われてみればその通りでした。
私は今回も土下座して許しを請いました。
「心霊地はポケモンを捕まえに行くところじゃない!
二度あることは三度ある、もう許さない!」
旦那は今度こそポケモンGO禁止と言い放ちました。
そこに旦那の背後から娘も現れ、旦那に請い求めました。
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「パパ、ママは私が付いてよく用心するから、許してあげて、お願い」
「・・・椎奈がそう言うんだったら・・・もう次はないぞ、絵梨花!」
なんとか今回もポケモンGOの禁止だけは免れることができました。
娘には甘い旦那でした。
作者ラグト
このお話に出るお姉さんは特別な指導のもとで臨んでいます。
良い子は本当に真似しちゃいけないお話です。
基本的に一話ごとに完結していますが、一応①、②とナンバリングしていますので、①の方もリンクを載せておきますね。
ちょっとシリーズ話数が増えてきましたので、わかりやすくするためにサブタイトルも付け加えました。
心霊地でポケモンGO① 夜の公園でゲンガーの巻
http://kowabana.jp/stories/27396