どこから説明したらいいだろうか・・・いま俺は都内のどこかにいる。しかしそれがどこなのか皆目見当がつかない。
友人と確かに先ほどまで家で酒を飲んでいたはずだが・・・
目覚めると、ひどい臭いと、生ぬるい風にさらされていた。
あたりを見渡すと、俺の他にも人はいるようだし、とりあえずへんぴな場所ではあるが人は存在しているようだ。
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とにかく現状を把握する必要がある。まずはあの俺好みの女にきいてみるか、
「あのー、ここってどこですか?なんか迷い込んでしまったみたいで・・・」
女は動じることなく、若干あきれた感じで答えた、
「・・・あなたもどうしてここにいるのか分からないみたいね、、これで何人目よ・・・」
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つまりは、女が言うにはここにいる人間はみんななぜここにいるのか分からないらしい。
にしてもこの場所は臭いがひどいだけでなく、とにかく暗い。
まるで日没寸前といったところだ。
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どうやらどれだけの時がたっても朝も夜も来ないようだ。一体ここはどこなんだ・・・
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・・・ここにきてからどれくらいたっただろうか・・・一月は経っている気がするが、、、
・・・あれから俺は初日にあった女と恋に落ちていた。名前は百合子。
よくよく見ると黒島結菜に似ている。
とまぁ前置きはいいのだが、その彼女の様子が最近おかしい。
彼女はもうすでにここにきてから体内感覚で一年はいるそうだが、
さすがにこの現状に精神をやられたのかとも思ったがそういう訳でもないという。
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なんでも、彼女にはもう時間がないんだそうだ。
俺にとっては今なお夕闇に近いこの場所も、彼女にとっては最初来た時の暗闇がどんどんと昼間の明るさに近づいていっているらしい。
ここでは明暗の感じ方も個人差があるようだ。
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ある時、俺は彼女に聞いた、
「なぜ時間がないんだ?そもそもここに時間の概念を感じないよ。」
彼女は涙を浮かべながら答えた、
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「あなたももうすぐ感じるようになるわ。」
鼻を突くようなにおいに潮の香りをかすかに感じ取った時、彼女は俺に小さな声でいった、
「最期に好きな人ができて良かった・・・」
と、次の瞬間彼女は文字通りバラバラになった。細切れの肉片と真っさらな白い骨に・・・
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あれからどのくらいたっただろう・・・俺にはもうひどい臭いも、暗闇もなくなっていた。代わりに感じるのは潮の香りにかすかに混ざる百合子の匂いと、まばゆいばかりの光だ。
そのころには俺はすべてを思い出していた。
俺は友人に・・・・
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日本人の年間行方不明者数およそ10万件。
殺害した後、トイレや排水溝などに流す事件多数発覚。
地下の宮殿-完-
作者ジンジン