中学三年生の夏のことだ。
その日はやけに蒸し暑く、俺と友人は山の麓にある小さな神社で涼みながら駄弁っていた。友人の名はカラス(仮)といい、俺はついこの間体験した奇妙なことをそいつに話していた。
nextpage
○
夏休みに入ってすぐの頃、俺は戦争に関するツアーのようなものへ参加していた。
それには地元で名のあるローカルテレビ局の取材も来ており、そこそこな規模のものだった。
俺には一つ年下の後輩に友人が多く、その一人にKという男子がいた。Kは頭が良く、中学では生徒会員(後に副会長)で、霊感が強く、戦争史跡巡りをしていれば何か見えるのではないかと期待していた。
しばらく様々な史跡を巡り、防空壕や物置用(?)の洞窟など、いかにも出そうな所へ行ったので、俺はちょこちょこKの様子を窺っていたが、特に何かを気にするような素振りも見せず、途中でテレビ局の取材があり厳ついカメラマンと穏やかな口調の記者が一人一人にインタビューをした。
インタビューを終え、ツアーも終盤に差し掛かってきた頃、とある林間学校の廃墟へ入った。そこは、戦時中に東京から疎開してきた子供達のための学校だったらしい。
学校の門を通ったとき、俺はKにこっそり何か見えるかと訊いてみた。
するとKはこう言った。
「あそこの木の下に、男の子がいるのがわかります。たぶん、男の子です。」
「え?」
俺はゾッとした。奇妙なことはカラスとそこそこ多く体験してきたつもりだったが、こうも平然と言われると...
その後、そこの木の下では男の子が「家に帰りたい」と泣いていたのだと、ガイドから聞かされた。
帰りのバスでKに、他にも何か見えたかと訊いてみたら、移動中に海で溺れている霊を見たと言った。史跡関係ないじゃん...(笑)
俺はこの話をカラスに全て話した。カラスは興味無さげに「ふ~ん」と言った。
「え、そんなもん?カラスのことだからもっと興味示すかと思ったよ。」
「Kってやつには少し興味があるね。でも...」
カラスは少し口ごもり、その後話を続けた。
「男の子の霊に関しては、もう知ってた。」
...流石はカラスだった。やっぱり、こいつには敵わない。
作者mahiru
烏シリーズ新作。過去のお話です。