短編2
  • 表示切替
  • 使い方

後ろを向いても

ここは動物園。

誰もが楽しめる場所。

私もその楽しみを享受しているひとりだった。

nextpage

「ちょっとー、1人で楽しんで。私別にそこまで動物好きじゃないのにー、

だから映画がいいって言ったじゃない。」

この場にそぐわない発言をかましてくれているのは、

私の彼女だ。

nextpage

そもそもデートに動物園を選んだのは、私が行きたかったからというのもあるけど、

彼女がリスざるを観たいと言ったからだ。

nextpage

それなのに突然、今日の朝になって、映画を観たいと言い始めた。

しかし、もうすでにレンタカーも借りてしまったし、

残念ながら動物園の決定は揺るがない。

そういうこともあり、彼女はふてくされていた。

nextpage

「まぁ、機嫌直してよ、もうすぐそもそもの目的のリスざる園だからさ。」

私は、彼女のテンションを何とか上げようとした。

「うーん、たしかにそうね、折角きたんだから楽しまなきゃね!」

作戦は成功したようだ(笑)

nextpage

リスざる園の前に着くと、親子連れ、カップルが囲いの中でリスざると戯れているのが見えた。

ここは、観るだけでなく実際に触れ合うこともできるのだ。

nextpage

「すごいよ、いろいろな場所にリスざるがいるよ!」

私は興奮していた。

彼女はというと私にお構いなしで、既にリスざる用の餌を買って餌付けしていた。

「お前、本当に行動早いな、こういうのは俺と一緒に・・・」

と言いかけたところで、どこからか見られている気配を感じた。

nextpage

「一緒に餌付けしよーよ。」

彼女の方から声をかけてきた。

私は妙な不安を感じながらも、彼女から餌をもらい受けた。

nextpage

私が餌をリスざるにやろうとした時だった、よくよく周囲を見渡すと、

先ほどまでいた親子連れやカップルの姿が無い。

代わりに先ほどまでよりも圧倒的にリスざるの数が増えている。

・・・ざくっ!

nextpage

右手中指の第二関節の皮膚をリスざるに持っていかれた・・・

え?ナニコレ?

私は混乱と痛みでどいう状況か分からないでいた。

彼女は?そういえば彼女は???

nextpage

横を見ると、見るも無残に体中にリスざるに覆われていた彼女がいた。

私は無我夢中でリスざるを追い払った。

「あぁぁ」

私は声にならない声を出し、彼女の前にしゃがみこんだ。

nextpage

彼女は身体じゅうリスざるに食い尽くされていて、もはや見るも無残な形となっていた。

彼女は私にかすれた声でこう言った、

「だから映画がいいって言ったのに・・・」

nextpage

うわぁああぁあぁああぁ

nextpage

ぴぴぴぴぴーぴぴぴぴぴぴぴー

時計の音がなった。

目に浮かんだ涙を拭った。

そして今日は動物園は止めて映画館に行くことにした。

後ろを向いても-完-

Concrete
コメント怖い
6
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信