短編2
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火事場

地元には世間一般的に幽霊屋敷と呼ばれる、家があった。

一度私はその家に友人と肝試しをしに行ったことがある。

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家の中は特に荒れ果てているわけでもなく、

人が住んでいないというだけで、生活感があるほど物もそこにはあった。

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「夜逃げでもしたのかな」

私が言うと、

「いや、なんでも一家全員殺されたらしい。なのに死体が見つからないんだ」

と友人の啓介は言った。

「死体が見つかってないのに、殺されたって、ちょっとおかしくね?」

「いや、この家にはいたるところに防犯カメラがついていたんだけどな、、、」

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「屋敷の住人が消える瞬間が録画されてたって話だ。

なんでも、黒い何かが覆いかぶさった後、首や胴体がバキバキに折りたたまれていたらしい。

そのあと、死体は画面から引きずられるように消えていった。」

「え、こわ!いきなり帰りたくなってきたわ。」

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その話を聞いたせいか、私は寒気を全身に感じながらも部屋という部屋を啓介と見て回った。

この屋敷には開かずの間というものが有り、入るには鍵が必要であるため、

肝試しをしに行った歴代の奴らも中に入ったことはなかった。

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しかし運がいい(?)ことに、開かずの間が開いている・・・

「誰かがカギ開けたのか、壊したのか・・・」

「まぁ行ってみよう。」

啓介は淡々と中に入っていった。

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中に入ると特に目新しいものはなく、部屋の隅に大きな箱が置かれているだけだった。

「開けてみよう。死体が入ってたりな(笑)」

啓介はおそるおそるその箱を開けた。

中に入っていたものは黒い喪服のような着物であった。

それと一緒に大量の髪の毛も入っていた。

「これは、、、やばいんでないか?」

私は啓介にビビりながらいった。

「これを盗むわけにもいかんし、とりあえず置いておくか、、、、、

見なかったことにして帰ろう。」

啓介も震えている。

「そうだな、実はここの家の関係者がまだたまに中に入っているのかもしれないしな。」

私も同意して開かずの間を後にした。

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開かずの間を出た瞬間、ものすごい勢いで戸が閉まったので

私と啓介は一目散に屋敷からでた。

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数日後、この屋敷は火災で跡形もなく無くなった。

消防車が到着する頃には火は既に全てを飲み込んでいたとのことだ。

その折に妙なモノを見た人が何人もいた。

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燃え盛る火の中で、

黒い何かが箱をもって屋敷の中を走り続けていたそうだ。

私は覚えている。

あの屋敷を出た後で、背後から黒い何かが玄関先まで迫ってきていたことを。

火事場-完-

Concrete
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