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丸山敏夫は大学教授であり、それなりに金もあり、大学教授という肩書きもあったため、まあ順風満帆な人生を送っていた。しかし、彼には愛人がいた。
丸山には妻がいたが、子供はおらず、また丸山の妻に対する愛もすでに冷めていた。丸山は妻と離婚し愛人と一緒になりたいと思っていたが、妻に勘付かれてしまい、離婚すれば愛人がいることを世間にばらすと言われていた。
愛人のことが世間に知られれば、丸山は大学を辞めざるをえなくなり、全てを失うことになってしまう。しかし、もう妻に対する愛情もない。丸山はどうにかして、うまく離婚できないかと考えていた。
そのメールが届いたのはちょうどその頃だった。
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差出人:majinaiya-naraku@kuo…>
宛先:tosi-mruyama@go…>
呪い請け負いのご案内
こんばんは、呪(まじな)い屋 那楽です。
私は人の願いを叶えるお手伝いをすることを生業としています。
今、貴方に命に代えてでも叶えたいと思うほどの願いがあれば、ご返信頂ければ私が叶えてみせます。
尚、呪いのご依頼をされない場合、このメールはすぐに削除するようお願いします。
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(なんだ?広告メールか何かか?)
丸山はすぐにでも削除しようと思ったが、そのメールが不思議と気になり、返信した。何より願いを叶えるという文句が今の彼が最も望んでいることだったのだ。
丸山がメールの返信をした翌日、再びメールが届いた。
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差出人:majinaiya-naraku@kuo…>
宛先:tosi-mruyama@go…>
呪い実行のご連絡
丸山様、呪いのご依頼ありがとう御座います。
呪いの方は無事、完了いたしました。
三日以内に効果が出ると思いますので、また三日後にお代に関するご連絡をさせていただきます。
尚、こちらのメールは確認次第すぐに削除するようお願いします。
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(まじない実行の連絡をしてくるとは、まさか本当に効果があるのか?)
丸山は一瞬そう考えたが、すぐにその考えを振り払った。そして同時に大学教授でありながら、まじないなどというものを一時的にでも信じてしまった自分を恥ずかしく思った。
だが、事態は丸山が思っていたものとは違う方向に向かっていった。
二通目のメールが届いた次の日のことだ。なんと丸山の妻が離婚に応じると言い出したのだ。愛人のこともばらすつもりはないらしい。これにはさすがに彼も驚き、同時に妻が何か企んでいるのではと疑ったが、思い切って妻に尋ねてみると彼女にも新しい恋人ができたため、丸山のことなどどうでもよくなったということだった。
結果、丸山は妻と以外にも簡単に別れることができた。
これで愛人と一緒になれると、丸山は舞い上がっていた。
そして、二通目のメールから三日後、予告どおり丸山のもとにメールが届いた。
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差出人:majinaiya-naraku@kuo…>
宛先:tosi-mruyama@go…>
お代のお支払いについて
丸山様、呪いの効果はいかがでしょうか。
本日は、先日ご連絡させていただいたように、お代についてのご連絡をさせていただいています。
お代の方ですが、以下のいずれかでお支払いください。
・依頼者様ご自身の魂
・依頼者様と血縁関係にある方の魂
・依頼者様の配偶者の魂
・依頼者様のご友人の魂
上記のいずれかを選択していただき、返信していただくようお願いいたします。尚、ご自身の魂を選択された場合に限り、お支払い日を指定していただけます。また、三日以内に返信されなかった場合、契約違反とみなし依頼者様ご自身の魂を強制的に徴収させていただきます。
尚、このメールは三日後に自動的に削除されます。
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丸山はこのメールを確認したが、まじないを信じていなかったことと、離婚手続きがうまくいったことから、ただの悪戯だろうと無視していた。
そして三日がたった。
『こんにちは、午後のニュースです本日未明、元夫が息をしていないと119番通報があり、救急隊員が駆けつけたところ、太都大学理学部教授の丸山敏夫さんが、自宅の寝室で心肺停止の状態で倒れているのが発見され、病院に搬送されましたが、間も無く死亡が確認されました。病院関係者と家族の話によると、亡くなった丸山さんは健康状態に問題はなく、なぜ心肺停止におちいったのかは分かっていないとのことです。』
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その頃、あるアパートの一室で一人の男がほくそ笑んでいた。
「まさかインターネットを通して呪詛を飛ばし、魂の回収までできるとは。これほど楽に魂を集められるなら、もっと早く気づいていればよかった。」
男の名は苦怨寺那楽、天才呪術師である。
作者白真 玲珠
どうも、プラタナスです。
皆様、流シリーズを覚えていらっしゃるでしょうか?
流は出てこないサイドストーリー的な話ですが、新作です。読んでください。