利き手ってあるじゃん。
アレと同じで、五感にも利き感覚があるのって知ってる?
視覚優位か聴覚優位か身体感覚優位か。
簡単に言うと、「見て把握すんのが得意」か、「聞いて理解すんのが得意」か、「感触や匂いで雰囲気を掴むのが得意」かってことな。
それによって、コミュニケーションの取り方や効果的な学習方法が違ってくるってんで、話題なのさ。
NLP診断とかVAKタイプとかで検索すると幾つか引っ掛かるから、興味あるならどーぞ。
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で、こっからが本題。
俺の友達に霊感あるやつが何人かいるんだわ。
仮にV、A、K、Oとする。
診断やってみるとわかるけど、人間って結構色んな感覚駆使して生きてっから、完全に視覚に偏ってるとか聴覚ばっか使ってるってことにはなりにくいのね。
俺なんかは、一応視覚優位だけど、診断変えれば身体感覚優位にならんこともない…って感じかな。
でも、VAKOの四人は割と利き感覚がはっきりしてる方でさ。
それが一番顕著に出るのが…
そう、心霊現象が起こった時なのよ。
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集まって宅呑みしてる時に、やっこさん、ふらっと寄ってきたりするだろ。
俺が、(あー、きたきた…)って思ってると、Kがまず言う。
「うっわ、空気不味くなったんだけど。俺酔いすぎ?」
で、同じくらいのタイミングで、Oが鼻摘まんでトイレに駆け込む。
Aが、「ごめんごめんうっさい……」って溜め息ついて場所移動して、
Vは今までAが座ってた側の奥の壁を眺めながら「幼女かぁ…虐待かな?」なんて顔をしかめる。
これだけ書くと、「見え」てるVが一番霊感強いように感じるよな?
でも多分、そうじゃない。
Vには声は一切聞こえてないし、臭いや空気感も全くわからんらしいんだ。
だから、見た目がごく普通の霊体に出会うと、大抵実在の人間として認識してる。
ドアの向こうに何かがいても、絶対気付かないしな。
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逆にAなんかだと、姿は一度も見えたことないんだと。
その代わり、声や物音だけははっきりと聞こえる。
この少女は「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、許して」をひたすら繰り返してたっぽい。
歯が幾つか抜けているのか、空気が漏れるような発音が気になったって言ってた。
俺の認識は、精々「壁際で耳を押さえて踞ってる女の子が、何かぶつぶつ呟いてる」ってとこらへんまでなのよね。
だから、喋ってる内容を知りたい時とかはAに確認取るようにしてる。
正直、便利よ。
あちらさんが伝えたいことがはっきりしてさ。
言葉こそ人類最大の発明ってのがよくわかるね。
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KとOはどっちも身体感覚優位者で、Kは触覚、Oは嗅覚に優れたタイプ。
認識スピードで言うなら、基本こいつらが一番早い。
で、霊障で体調悪くしやすいのもこいつら。
所謂死臭ってのをモロに食らうし、違和感を肌で感じるから仕方ないんだよな。
Oがトイレに駆け込んだのは、風呂に入らせてもらってない女の子の体臭が、酔ってるとこにガツンときたからじゃないかね。
俺にはちょっとしかわからんかったけど。
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まあ、そんなこんなで認識方法がかけ離れてる奴らが集まってんのが面白くてさ。
よく実験すんのよ。
どういうのかっつーとだ。
まず、曰くある場所に行ったり、ネットに転がってる降霊術試してみたりするだろ。
そんで、各々何かしら認識したら、何を見たり聞いたり感じたりしたかを紙に書くっていう、ただそれだけ。
勿論、全員が書き終わるか「特に何も感じない」ってお手上げするまで、書いた内容はバラさない決まりな。
最終的に答え合わせすると、こんな感じ。
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O『潮の匂いもきついが、腐敗臭?っぽいのがヤバい。空気が途中から湿気てきた。』
K『俺の後ろを、大きめの気配が通りすぎてった。そいつの移動で動いた風がじっとり湿ってて、微かに海のにおい。あとなんか臭い。』
A『濡れ雑巾床に落としたみたいな、多分足音。ポタポタ水の垂れる音も聞こえる。』
V『Kの後ろを水死体らしきものがゆっくり歩いて行く。赤黒くて相当膨れ上がってる。目と舌は飛び出してるっぽい。濁った水が足下に流れてる。』
俺『Kの後ろに土左衛門?暗くぼやけてる。なんか色々ぼたぼた垂れてんのはわかるな。ちょっと異臭する。』
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証言の辻褄が合っちゃう訳。
どう考えても毎回みんなが同じものを認識してんだけどさ。
五感の何処を使えるかが人によって違うってのは、なんつーか不思議な気もするし、当然な気もするよなあ。
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よし。話、ちょっとずらすぞ。
普通、人が同時に活用できる感覚ってのは、ひとつかふたつ…多くてもみっつくらいまでらしい。
ほら、一所懸命何かやってる時は、周りの音が聞こえなくなったりするじゃん。
逆に、聞くことに集中したい時は目を閉じたりする。
それってつまり、視覚を遮断することで聴覚を活用しやすくしてるってことな。
これ、当然心霊体験にも応用がきく。
自分の中で一番優秀な感覚以外の意識レベルを落とすことによって、見たり聞いたりの精度を上げる訳。
聴覚が優れている人なら、例えば「目隠しして、極力何にも触れず、風や香りをあまり感じない」状況下で、第六感と聴覚だけをフルに働かせる。
すると、余計な感覚が生じてる時に比べれば格段に、この世ならざる音を拾う確率が上がるって寸法だ。
しかも、そういう訓練を続けていけばさ、意図的に感覚の調整ができるようになんのよ。
結果、霊的なものを感じとるのが上手くなっていく。
…って、それなりに霊感強いと、わざわざ感覚なんて限定しなくても総合的に「視え」るから、やる必要ないんだけどね。
霊感ゼロだと、幾らほかの感覚鍛えようとも無駄だし。
ちなみに、どっかイチ感覚でも霊を捉えられるようになれば、やり方次第でほかの感覚も使えるようになるぞ、その内。
ほら、日常生活でも、食べ物の写真見て匂いや味を想像したり、木々のざわめきを聴いて風に揺れる緑が頭に浮かんだりするじゃん。
それと一緒。
感覚と感覚を自然にリンクさせられるようになれば、得意じゃない力も段々上がってくるのだよ。
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ま、よかったらやってみて。NLP診断。
その結果をどう活用するかは、個々の判断にお任せってことで。
以上。健闘を祈る。
作者いさ
「夜行バス」の友人から聞いた話をそれっぽく。常識だったらすみません。急いだのと詰め込んだので、いつも以上に乱文に…。うーん…読み辛い…よな…
私はどっちかというと聴覚タイプな気がしますが、幼い頃「ルドルフとイッパイアッテナ」を読んでいてシシャモのシーンではっきり匂いを感じたことがあります。もしかしたら嗅覚優位かもしれません。(ちなみに嗅覚、味覚、触覚を合わせて身体感覚の括りみたいです)
「めっちゃ焦げ臭いんだが、何??どした??」と思って匂いの元を探すも結局見つからない…みたいなことが、家でも出先でもたまにあるのですが、これってまさか……。
あとアレね。「めっちゃカメムシ臭いんだけど何処だよおおお」で、見つからない……恐怖。お粗末様でした。