中編4
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無限遊技

私には弟がいます。

自分の世界に入りがちなところがありますが、いたって普通の子でした。

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ある日、いつも通り遊びから帰ってきた弟が、頭痛と耳鳴りを訴えました。

風でもひいたのだろう

翌日、熱はでなかったので、弟はだるそうに学校に向かいました。

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学校から帰って来て、弟は言いました

「みんなも頭いたいって」

みんな=あゆむくん、たくみくん、ゆうすけくんのことかなと思いました。

その四人は弟とよく遊んでいました。

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夜中、隣室の弟のうなされている声が聞こえました。

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その翌日、弟は学校から帰ってきて言いました。

「みんな、同じ怖い夢みたんだよ!」

ほんとー、とテキトーに反応したのが悪かったのかもしれません。

翌日、弟は夜遅くになっても帰らなかったのです。

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そろそろ警察に連絡しようか、家族とそう話していたところに、弟がお巡りさんに補導されて帰ってきました。

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竹下(仮名)公園に一人でいましたよ、とお巡りさんは言いました。

竹下公園?

今まで弟は行ったことのなかったところでした。

弟は、遂に熱を出していたので、説教もほどほどにすぐ寝かされました。

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その次の日のことでした。弟は失踪しました。

学校に連絡しても、

友達に連絡しても、

家族と心当たりを探しても、

みつからない。

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幼く、しかも病床の身で行けるとは思えませんでしたが、あの竹下公園も探しました。

みつからない。

とうとう警察に連絡し、私たちは一旦帰りました。

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帰って来て、なにか手がかりはないか、私は弟の日記を読んでみました。

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△月□日

今日、ちょっとだるかったけど、竹下公園であそびました。楽しかったです。帰りはパトカーに乗りました。

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下の絵には、弟と男の子と、二人描かれていました。

弟と遊んだのは誰か。私は弟と仲の良い例の三人の家に、電話をかけていきました。

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ゆうすけくん、違う

たくみくん、違う

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あれ?

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あゆむくんの電話番号は?

連絡網にないということは、他クラスか、、、

学校に電話すると、返答は不可解なものでした。

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「そんな生徒はいませんよ。」

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ありえない。

私は、すがるような思いで、ゆうすけ宅、たくみ宅にかけ直しました。

しかし

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「そんな人はいないよ」

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背筋が凍りつきました。

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弟は誰と遊んでいたのでしょうか。

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その夜だったのです。

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目覚めると室内が煙たくなっていました。

火事か!

と、起き上がろうとしても、動けない。

ドリルのような音がすぐ耳元で鳴り響く。

かろうじて、横を見ると

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sound:19

吸い込まれるような黒目の男の子が、私を見下ろしていました。

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「遊ぼ」

「遊ぼ」

「遊ぼ」

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shake

「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」

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気がつくと私は、あの竹下公園にいました。

辺りには木々が繁り、目の前には小さい丘がありました。

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「お兄ちゃん」

そう、弟が耳元で囁いたように聞こえて、

私は弟の名前を呼びながら辺りを探しまわりました。

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ちいさな丘の向こうには、すでに閉められた教会がありました。

入り口には体の細った老人が立っていて、

彼は私を招いて言いました。

「今度は幼い男の子なのですね」

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彼は丘を指差し、口を閉ざしました

弟でしょうか、

それとも別のなにかでしょうか、

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背を向けた丘の方から

男の子の笑い声が聞こえてきます。

しかし、振り返っても姿は見えないのです。

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shake

ウィィィーーン、ギュルルル、ギュルルル

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その音は背後からのものでした。

私は老人を振り返らずに無我夢中で逃げました

次は私だ、

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次は私なんだ

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数年後

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大学生になっても、頭のなかには

失踪したままの弟のことが

頭から離れませんでした。

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竹下公園で昔なにがあったのか

なぜ、弟がとりつかれ、失踪したのか

あのドリル音はなんなのか

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霊能力者に弟の居場所を聞くと、みんな決まって、

「たくさんの人に囲まれながら丘の上にいるよ」

と言いました。

私は、弟は何をしているのか聞きましたが、彼らは答えてはくれませんでした。

せめて、変える望みの有無だけでも教えてくれと言うと、何人目かの霊能力者が

「弟さんは死んではないよ。でも私にはどうにもできない。あの生き霊は強すぎる。」

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竹下公園は公園になるまえ、江戸時代には武家屋敷がありました。

そこが焼失すると、しばらくは何もなかったのですが、戦前には陸軍学校が建てられ、非人道的な人体実験が多く行われていたと言われています。

いまは、そこは公園となり、

周りには団地が広がっていますが、

そのうちの一室で10年前火事があったそうです。

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そこは3人家族の家でしたが、死体は両親しか見つからず、

両親の頭にはなにかが貫通したあとがありました。

幼い息子の遺体は遂に見つからなかったそうです。

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凄惨な過去を持った土地で育った、

霊感の強い子どもが、土地の霊気(穢れ)に侵され、異常人格を形成し、

最後は親を殺して、家に火を放ったのです。

彼は火事と人体実験の映像を見ながら育ったのです。

彼は今も生き続けていると共に、

その狂気は生き霊として土地に残りました。

私の弟は、その「彼」と遊んでいるのでしょうか。

そして

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「彼」はいま、どこにいるのでしょうか。

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