私には弟がいます。
自分の世界に入りがちなところがありますが、いたって普通の子でした。
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ある日、いつも通り遊びから帰ってきた弟が、頭痛と耳鳴りを訴えました。
風でもひいたのだろう
翌日、熱はでなかったので、弟はだるそうに学校に向かいました。
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学校から帰って来て、弟は言いました
「みんなも頭いたいって」
みんな=あゆむくん、たくみくん、ゆうすけくんのことかなと思いました。
その四人は弟とよく遊んでいました。
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夜中、隣室の弟のうなされている声が聞こえました。
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その翌日、弟は学校から帰ってきて言いました。
「みんな、同じ怖い夢みたんだよ!」
ほんとー、とテキトーに反応したのが悪かったのかもしれません。
翌日、弟は夜遅くになっても帰らなかったのです。
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そろそろ警察に連絡しようか、家族とそう話していたところに、弟がお巡りさんに補導されて帰ってきました。
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竹下(仮名)公園に一人でいましたよ、とお巡りさんは言いました。
竹下公園?
今まで弟は行ったことのなかったところでした。
弟は、遂に熱を出していたので、説教もほどほどにすぐ寝かされました。
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その次の日のことでした。弟は失踪しました。
学校に連絡しても、
友達に連絡しても、
家族と心当たりを探しても、
みつからない。
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幼く、しかも病床の身で行けるとは思えませんでしたが、あの竹下公園も探しました。
みつからない。
とうとう警察に連絡し、私たちは一旦帰りました。
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帰って来て、なにか手がかりはないか、私は弟の日記を読んでみました。
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△月□日
今日、ちょっとだるかったけど、竹下公園であそびました。楽しかったです。帰りはパトカーに乗りました。
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下の絵には、弟と男の子と、二人描かれていました。
弟と遊んだのは誰か。私は弟と仲の良い例の三人の家に、電話をかけていきました。
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ゆうすけくん、違う
たくみくん、違う
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あれ?
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あゆむくんの電話番号は?
連絡網にないということは、他クラスか、、、
学校に電話すると、返答は不可解なものでした。
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「そんな生徒はいませんよ。」
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ありえない。
私は、すがるような思いで、ゆうすけ宅、たくみ宅にかけ直しました。
しかし
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「そんな人はいないよ」
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背筋が凍りつきました。
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弟は誰と遊んでいたのでしょうか。
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その夜だったのです。
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目覚めると室内が煙たくなっていました。
火事か!
と、起き上がろうとしても、動けない。
ドリルのような音がすぐ耳元で鳴り響く。
かろうじて、横を見ると
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sound:19
吸い込まれるような黒目の男の子が、私を見下ろしていました。
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「遊ぼ」
「遊ぼ」
「遊ぼ」
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shake
「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」「遊ぼ」
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気がつくと私は、あの竹下公園にいました。
辺りには木々が繁り、目の前には小さい丘がありました。
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「お兄ちゃん」
そう、弟が耳元で囁いたように聞こえて、
私は弟の名前を呼びながら辺りを探しまわりました。
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ちいさな丘の向こうには、すでに閉められた教会がありました。
入り口には体の細った老人が立っていて、
彼は私を招いて言いました。
「今度は幼い男の子なのですね」
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彼は丘を指差し、口を閉ざしました
弟でしょうか、
それとも別のなにかでしょうか、
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背を向けた丘の方から
男の子の笑い声が聞こえてきます。
しかし、振り返っても姿は見えないのです。
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shake
ウィィィーーン、ギュルルル、ギュルルル
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その音は背後からのものでした。
私は老人を振り返らずに無我夢中で逃げました
次は私だ、
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次は私なんだ
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数年後
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大学生になっても、頭のなかには
失踪したままの弟のことが
頭から離れませんでした。
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竹下公園で昔なにがあったのか
なぜ、弟がとりつかれ、失踪したのか
あのドリル音はなんなのか
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霊能力者に弟の居場所を聞くと、みんな決まって、
「たくさんの人に囲まれながら丘の上にいるよ」
と言いました。
私は、弟は何をしているのか聞きましたが、彼らは答えてはくれませんでした。
せめて、変える望みの有無だけでも教えてくれと言うと、何人目かの霊能力者が
「弟さんは死んではないよ。でも私にはどうにもできない。あの生き霊は強すぎる。」
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竹下公園は公園になるまえ、江戸時代には武家屋敷がありました。
そこが焼失すると、しばらくは何もなかったのですが、戦前には陸軍学校が建てられ、非人道的な人体実験が多く行われていたと言われています。
いまは、そこは公園となり、
周りには団地が広がっていますが、
そのうちの一室で10年前火事があったそうです。
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そこは3人家族の家でしたが、死体は両親しか見つからず、
両親の頭にはなにかが貫通したあとがありました。
幼い息子の遺体は遂に見つからなかったそうです。
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凄惨な過去を持った土地で育った、
霊感の強い子どもが、土地の霊気(穢れ)に侵され、異常人格を形成し、
最後は親を殺して、家に火を放ったのです。
彼は火事と人体実験の映像を見ながら育ったのです。
彼は今も生き続けていると共に、
その狂気は生き霊として土地に残りました。
私の弟は、その「彼」と遊んでいるのでしょうか。
そして
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「彼」はいま、どこにいるのでしょうか。
作者ブラック
初投稿です。モデル場所はありますが、全てフィクションです。
生きている彼があなたの周りにいるかもしれません。