4月1日、16歳の春のことだ。
「お兄ちゃん、今日も体調良くないの?」
「あぁ・・・ごめんな。また迷惑かけて」
「ううん、大丈夫だよ!今日は私もずっとお家にいるから、何かあったら言ってね」
妹の雨宮ひなは元気がいい。身体の弱い俺とは相反して、風邪を引いたことも少ない。
俺は少しひなのことが羨ましかった。彼女には普通と違う特別な霊能力がある。それに比べて俺は、霊感があるだけで除霊する力を持っていない。
俺の祖父は有名な霊能力者だったらしい。だから、いつか俺も...ひなが自分の力を制御できないことに悩まされて俺に泣きついてくる度、そんなことを考えてしまう。
「どうしてなんだ・・・」
部屋で一人、寝そべりながらポツリと呟いた。ひな、なぜお前は・・・
○
目が覚めた。寝ぼけたままの視線を動かし、時計を見る。午前8時・・・そういえば、今日はエイプリルフールだったか。
「夢か・・・エイプリルフールにしては随分たちの悪い夢だったな」
そうだった。ひなはもうとっくに・・・。
重い身体を起こし、布団を敷きっぱなしのまま居間へ向かった。
「おはよう、露」
「あ、おはようございます旦那様!」
「あっ、露・・・後ろに蛇がいるぞ」
「へっ!?やっ、うそっ!どこですかっ!!」
「嘘だよ。今日はエイプリルフールだろ」
「なっ・・・もう、朝から何なんですかぁ!」
4月初めの朝から露の可愛い反応が見れたから、まぁいいか。そうだ、別に霊能力が使えなくても・・・。
今日も、俺は平凡だ。
作者mahiru
4月1日のエイプリルフールに投稿する予定だった短編作品です。Twitterで読みたいというお声を頂いたので、遅れ馳せながら投稿させて頂きました。ありがとうございます。