中編4
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ホラーナイト

某ファミレスにて

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wallpaper:943

店に入ると既に二人は席に着いていた。

一人は煙草を吸いながら若干不機嫌な顔をして、もう一人は嬉しそうに笑っている。

不機嫌な顔の方がこちらに気が付くと、席を立ち歩いてきた。顎を少し上げ大股で歩くその男は、自分が苛々しているという事を隠そうとしない。

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「お前来るの遅すぎ」

後ろを一瞬チラッとみてから小声で言った。

「悪い、遅れた....いや遅れてないだろ、5分早めに着いたぞ」

「小林って奴から急に連絡がきて、話したい事があるから来てくれって呼ばれたんだよ」

「僕はお前に来るように言われたからここへ来た」

「大事な話って、なんだよ?」

「さあ。これからその大事な話ってやつを小林君?が話してくれるんだろ?」

「君達!早くこっちおいでよー僕も会話に混ぜてよ」

少し恰幅の良い男が手を振りながら言った。

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wallpaper:1908

テーブルの上には既に料理の皿が並んでいた。脂っこい料理ばかりだなと思った。

料理のほかに、ワインやビールも置いてある。

席に着くと小林君は2枚の取り皿に料理を盛っていった。自分の皿には何も料理を取らずに。

「急に呼び出してごめん、大した内容じゃないんだけどさ、でも大事な友達だから、話しておきたくて。数年ぶりに連絡しちゃったんだ」

「大した内容じゃないならわざわざ呼ぶなよ」

「うん、でもこうでもしないとレオ君と会えないから...」

「俺はお前と友達じゃない」

「つまらない話じゃないよ!実は、僕に彼女ができたんだ!生まれて初めて彼女ができたんだ!本当に嬉しくて嬉しくて。こんな僕に彼女ができるなんて...想像できる?」

「はあ」

「凄いよね本当凄いよね!僕、舞い上がっちゃったよ」

「.......」

shake

小林君は手を叩きながら体を揺らす。テーブルの上にあったフォークが落下した。

「もう、本当、やったー!って騒いじゃったよ。独りの部屋で」

「......」

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「レオ君は彼女いるよね?」

sound:28

友人は横を向いて煙草をまた吸い始め、何度も腕時計の時間を確認していた。時折こちらに目で訴えてくる。カチカチとライターを鳴らし、足を何度も組み直す。

「レオ君は彼女いるよね?」

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「ねえ聞いてる!?」

突然大きな声で小林君が叫んだ。

shake

ガシャーン!

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レオが驚いた拍子にグラスを倒してしまった。

「大丈夫か?」

「んあ、大丈夫だ。あ!お姉さんすみません」

店員さんがタオルを持ってきてくれ、テーブルを拭いてくれた。

「ありがとうございます、お姉さん。ふー、グラスが割れていなくて良かった」

「お客様は濡れませんでしたか?大丈夫ですか?」

店員さんがタオルをレオに渡そうと手を差し出した。

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shake

「結構です!平気です触らないで下さい、大丈夫ですから!早くあっち行って下さい仕事してください!ここでだらだら喋ってないで自分の仕事して下さい」

店員さんのタオルを小林君は取り上げ、吐き捨てるように捲し立てた。

店員さんはびっくりして固まっている。もちろん僕達も固まった。厭な空気が漂う。

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「お姉さん、びっくりしましたよね。こいつ酔っぱらってるんです、こいつが言ってる事は流して下さい」

「いえ、あの、すみません」

小林君は黙って二人のやり取りをじっとみていた。冷たく生気のない顔、プラスチックみたいだ。口をもごもご動かし、右手で左手の皮を抓る。

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wallpaper:3706

「レオ君、あの店員さんの事、好きなの?」

「は?」

「好きだから優しくしたんだ」

小林君の様子がおかしい。表情がサァーッと暗く、黒くなった。

「彼女がいるくせに」

「彼女?」

「彼女がいるくせに、他の女に色目使いやがって!」

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shake

ガシャーン!

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小林君がテーブルを拳で叩き、皿が音を立てた。

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少し離れた席に座って居るカップルが驚いた表情でこちらをみる。店員さんはびっくりして厨房の方へ行ってしまった。

テーブルの上に散らばったナポリタンのソースと具をナプキンでかき集める。小林君はギッとレオの方を睨んでいる。歯を剥き出し今にも襲いかかりそうな犬の様だった。

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「彼女がいるくせに!この浮気者!浮気者!浮気者!」

「なに言ってんだ?」

「小林君、落ち着きなよ。店の中でそんなに大きな声で騒いだら迷惑..」

「浮気者!浮気男!ヤリチン!クソ野郎!カス野郎!」

ダン!ダン!とテーブルを叩き音を立てる。小林君の目が完全にイッていた。

まともじゃない。こちらが冷静に諭しても効果がない。

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「小林君、あんたおかしいよ」

「お前は黙ってろ!こいつは浮気者なんだ!浮気者!裏切者!」

「俺に彼女なんていねーよ。そもそもお前は誰なんだよ、俺の友達でも知り合いでもないだろ」

レオが低い声で言った。店内が一瞬シーンと静かになった。

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wallpaper:3474

「あたしはあんたの彼女だろうがあああ!」

shake

小林君が叫びながら自分の髪に手をかけた。

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wallpaper:3732

sound:39

目の前にはカツラを握りしめる鬼の形相の女がいた。

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「......またお前か」

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