ある少年の独白「捨てネコ」

中編3
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ある少年の独白「捨てネコ」

ほんの些細な親切心を見せたばっかりに、自分の身に災いが降りかかってきたという経験をしたことはありませんか?

実は今、僕はそういう状況にあります。

ことの始まりは、今から2週間ほど前…。

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僕は田舎町に暮らす高校生です。

ある日の学校の帰り道。

猛烈なにわか雨に遭い 、雨宿りに丁度いい橋を見つけ、自転車を乗り捨てて、急いで橋の下に逃げ込みました。

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するとそこに、ダンボールが置かれていることに気付きました。

中に入っていたのは捨てネコでした。

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可哀想だったけど、家に連れていくわけにもいかず、たまたま残っていたお弁当のウインナーを、そっとダンボールの中に入れてあげました。

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次の日、学校から帰ると、家の前に見覚えのあるダンボールが置いてありました。

あの、ネコが入っていたダンボールでした。

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僕は物凄く不気味に感じましたが、ダンボールがひとりでに移動してきたハズもなく、橋の下での出来事を見ていた誰かによる仕業なのかな?と思い、とりあえずダンボールの中を確認したあと、家族に見つからないように、物置にしまっておきました。

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その夜、部屋で寝ていた僕は、奇妙な物音で目を覚ましました。

気になって、物音がした辺りを見に行くと、部屋の前の廊下に、あのダンボールが置いてあったのです。

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ダンボール以外に、その場に人がいたような気配はありませんでした。

僕は、理解しがたい目の前の現実に恐怖心を抱きながらも、外の物置にダンボールを再び移動させました。

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しかし、次の日も、また次の日も、同じことが起こりました。

僕は、そのたびにダンボールをもとの場所に戻したのでした。

そんな恐怖の出来事が、一週間以上にもわたって、毎晩繰り返され続けたのです。

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ダンボールの存在に悩まされ続けた僕は、考え抜いた末、「受け入れてあげるしかない」と思い、ダンボールを部屋の中に迎え入れてあげることにしました。

それから数日間は、平穏な日々を過ごすことができました。

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が、その平穏も、つい先程、打ち砕かれました。

ダンボールが、ガサゴソと不気味にひとりでに動いているのです。

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「捨てネコが入っているんだから、当たり前でしょ」と思われるかもしれません。

しかし、そんなハズは絶対にないのです!

なぜなら…。

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最初に橋の下で出会ったその時にはもう、捨てネコはダンボールの中で、死んでいたのですから…。

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ガサゴソと動くダンボールのフタの隙間からは時折、爪を光らせたネコの前足が見え隠れしています。

ダンボールから、這い出ようとしているようです。

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皮膚は所々腐り、ウジ虫が何匹も這い回っているのが確認できます。

ダンボールが動くたびに、強烈な腐敗臭が僕を襲います。

いつの間にか、恐ろしげな鳴き声も加わりました。

きっと、このネコは、僕にじゃれつき、抱き締められたいと思っているに違いありません。

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「野良猫に同情は禁物」と、遠い昔、誰かが言っていたのを思い出しました。

2週間前、捨てネコに、一瞬でも無責任な同情を抱き、薄っぺらな愛情を注いだことを後悔した時もありました。

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ですが、今の僕に、後悔の念はありません。

この捨てネコは死しても尚、僕にすり寄ろうと、懸命にもがいているのです。

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そこまで好かれてしまった以上、僕はこのネコの愛情に応えてあげるしかないのです。

真の愛情をもって、このネコを抱き締めてあげることができたなら、きっと僕の腕の中で、成仏してくれるに違いありません。

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もう間もなく、捨てネコはダンボールの中から這い出してくることでしょう。

僕は覚悟を決めています。

心を込めて、しっかりと抱き締めてあげたいと思っています。

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それが例え、腐敗が進んだ、どんなにおぞましい姿であったとしても…。

Concrete
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ギリシャリクガメは完全な草食なので、ウンチも臭くないし、気性も穏やかです。
お散歩も、ひなたぼっこも、お風呂(温浴)も大好きです。
赤ちゃんとおじいちゃんを足して2で割ったような生き物です。

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