中編3
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枇杷の実

この間まで、とある山の麓にあるおばあちゃんの家に遊びにいってた。その時の話。

そこは、昔ながらの田園風景が広がる情緒広がる田舎って言う感じの場所で、家の裏手には山。

ちょっと奥までいくと水がすごく綺麗な川がある。

その川近くで散歩してたんだよ。

その時はちょうど夕暮れ時だったから、山に太陽が落ちていくところだった。

田舎って本当すごいよね。その夕暮れだけでも、息を飲むほど綺麗な風景になるから。

ちらほら虫も鳴いてるし。

んで「綺麗だなぁ綺麗だなぁ」ってな感じで、押さえられない感情の高ぶりを声に出しながら歩いてた。

そしたら、目の前の方向に丁度十字路がある。

その十字路を向かって左にいくと、違う山の入り口に行けて、右側に行くと違う町に行ける。

それで、まっすぐ進むと古い家が見えてくる。

その家の回りは蔦で覆われて、雑草も色々なところに生えてて、何処からどうみても廃墟ですっていう佇まい。

おばあちゃんにその家のことを聞いたことがあるけどずいぶん前から人がすんでいなくて、今は倉庫のような役割を果たしているらしい。

それで、散歩がてらその家の回りを何となく観て回ることにした。

地面は整備されてるところがあまりなく、踏みしめる度に砂利の感じが足の裏に伝わってくる。

その家の前まで来ると、先程よりも気温が下がったような気がする。

多分夜も近いし気のせいだろうと、歩みを進める。

その家に柵はなく、代わりに木を密集させて柵のようにしている。

そうして家の裏手に入ると、枇杷の木が植えてあって沢山の身をつけていた。

「美味しそうだなぁ」っててを伸ばしたらその手になにか落ちてきた。

「?」

伸ばした手を引っ込めて見てみると、枇杷の実だった。

すごいタイミングで落ちてきたなぁってその手のひらの実を眺めていたら、途端に何個もの実を地面に落とし始めた。

枇杷の雨。

そう表現できるほどの沢山の枇杷が落ちてきていた。

幸い落ちた木の実に当たることはなく、暫くその光景を呆然と見ていた。

いつやむのか見ていたんだけど、一向に降りやまないし、どうもおかしい。

どう考えたって木になっている実と落ちている実の数が違うし枇杷の木をみると木になっている実は一個も落ちている気配がしない。

じゃあ一体これは?

首をかしげて上を向く。するとその枇杷の木の上の方にぽっかりと大きな穴が空いている。

丁度そこだけ空を切り取って暗闇を置きましたっていう感じに。

それもただただ唖然とみてた。

そしたら、その穴から突然顔らしき物が覗いた。

それはよく見ると髪の長い女の人であるらしかった。

動けないままその人をみてたら、その人がこちらに向かって沢山の枇杷が詰まった袋を投げてきた。

それを投げてきたら目の前に降る枇杷の雨が止み、そしてぽっかり空いた穴もいつの間にか無くなっていて、自分もいつの間にかおばあちゃんの家の玄関にいた。

Concrete
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