いつものように朝起きて、少しボーッとした頭で洗面所に行き洗顔をする。
そこもいつものように、通りすぎる鏡に写る風呂場の窓。そしてそこにはいつも通り狂ったように笑う髪の長い女の生首が浮かんでいる。この日はいつもより回りが静かに感じたせいか、寂しかったんだと思う。
「おはよう」と挨拶してタオルで顔をふく。
そのかん、生首は首をかしげながら消えて行く。
台所に行き朝食を食べながら、テレビをつけてと、テレビ台の横にいつも座っている頭に釘を何本も刺した少年に声をかける。
暫くニュースを見ていた。その横では先程の風呂場の生首がアーモンドを楽しそうにかじっている。
少年はパンの耳にマーマレードを付けてテレビに見いる。
まだ食べている二人を置いて「ごちそうさま」と言い本を読みに寝室に戻る。
ドアを開けると、窓際のカーテンが仕切りになびいている。
カーテンの近くに行きその端を見ると、壁から生えている腕がカーテンを持ち、揺らしている。
「ちょっと待ってて」といい、タンスに向かう。
一番高い段を開けると、いつの間にか家に置いてあった藁人形が、探し物を手に取り渡してくれた。
ほぼ毎日の日課なので覚えたのだろう。
渡してくれたのは指輪である。
その指輪は、先程の腕の手にはめてあった指輪で、いつも就寝前に、手から抜けて落ちてしまうので、無くならないよう、タンスにしまっている。
それを手にはめて上げる。
そしてその手は自慢げに指輪を見せてくれる。
綺麗な青色。
そして、本を読む前に窓を開けて外を見る。
そこには夏らしい向日葵の群生があり青い空が広がり入道雲が向こうの方に流れている。
もう季節は夏の中。
作者トンルリース