助手席からゼロを降ろし、彼の家のインターホンを押した。
「はーい」
出てきたのは中学生ぐらいの少女、ゼロの妹である神原琴羽ちゃんだ。
「悪いな、疲れて寝ちゃってるから、部屋まで連れてくよ」
「あっ、すみません!お兄ちゃん、怪我してる・・・」
「色々と想定外なことが起こってさ。ゼロが、ほとんど戦ってくれたから」
ゼロは一流の呪術師であり、天才超能力者でもある。それに比べて俺は、呪術師としての腕前は二流といったところか。俺なんかが藤堂家を引き継いでいいものかと、最初は戸惑ったこともあった。
「ごめんな。俺が強ければ、もっとゼロをサポートできたかもしれないのに」
俺はゼロをベッドに寝かせながら言った。
「右京さんは、お兄ちゃんのこと十分サポートしてくださってると思いますよ。そもそもお兄ちゃんが無茶ばかりするのがいけないんです。本当、迷惑かけてばかりですみません」
琴羽ちゃんは俺にペコリと頭を下げた。
「そんな・・・迷惑なんて思って無いさ。ゼロには、いつも助けてもらってるからさ」
「右京さん、今後も、兄のことをよろしくお願いします」
「ハハ。じゃあ、これで失礼するよ」
「ありがとうございました!」
俺はゼロの家を出て車に戻った。
「さて、しぐちゃん。呪術の修練に行くぜ!」
「お願いします!先生!」
先生か。こんな二流でも、俺を慕ってくれる誰かがいる。嫁の沙耶も、娘の蛍も、しぐちゃんも・・・みんな俺のことを思ってくれているのか。そう思うと、また頑張ろうって思えるんだよな。
「おう、任せとけ!」
俺は胸を張って言った。二流だけど、それでもいい。俺は俺らしく頑張ればいいんだ。また明日も、これからもずっと。
作者mahiru
http://kowabana.jp/stories/29308 の右京さん視点の短編です。
おまけだと思って読んで頂ければ嬉しいです。