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美「 なるほどね。だいたいの話は分かったわ。
つまり優人は私と亮輔くんの間を完全に断ち切ろうと希美を使って、亮輔くんだけをその謎のトイレに閉じ込めるつもりだったって事ね…
ほんとばっかじゃないのあいつ?なんでそんなくだらない事を思い付くのかしら? 考えてる事がほとんど小二じゃないの! いや、小一ね!
…てかさ、なんで私と亮輔くんの仲を断ち切る必要性があるの? もともと私、亮輔くんと友達でもなんでもないのに 」
川「 えっ? 吉岡って亮輔の事が好きなんじゃないの? 」
美「 だ、誰がそんな事言ってたのよ! 確かに亮輔くんはスポーツ万能でイケメンだし、別に嫌いなタイプではないけど、特別好きってわけでもないわよ。
優人も川口くんもなに勘違いしてんのよ」
川「 え、そうなの? お、おかしいな… 」
希「 美穂ー、どうしよう。秋田くんたちってほんとにその場所に居るのかなぁ?」
美「 そんなのわかんないわよ。わかんないけどこうなった以上、行くしかないじゃない!もしこの話が事実だとしたら私の見てる夢も説明がつくし。
さっき希美が言った通り、あの子達は何者かに今もそこへ閉じ込められてるって事よ」
希「 えっ、えっ?行く?そこに行くの?もしかして私も?」
美「 あったりまえじゃないのよー。あんた優人達を見殺しにする気?
あ、それからもちろん川口くんもね! 」
川「 …うっ!」
美「 嫌とは言わせないわよ。こうなったのは川口くんの責任でもあるんだからね!でも三人じゃちょっと心細いわね…
誰か私たちと一緒に行ってくれる心強い人っていないかしら? 」
希「 ちょ、ちょっと待って、美穂落ち着いて!
こんなの私達だけで解決できるわけがないじゃん!後は警察とかに任せた方がいいよ絶対! 」
美「 ふふふ、希美もしかして怖いの? 普段あれだけオカルト好きをアピールしてるくせにー。
ま、冗談よ冗談。もちろん警察に頼むわよ。私たちだけで何が出来る訳でもないし。
そうね、とりあえず先生たちから警察に連絡して貰おうかしら? 」
希「もー、びっくりした!」
美「あはは」
川「 よ、吉岡… 警察に言うのはちょっと待ってくれないかな?」
美「 えっ、川口くんどうしたの? てか『吉岡』って呼び方、読者が混乱するからやめてくれない? 美穂でいいわよ」
川「 あ、ああ、じゃあ美穂ちゃん。警察への連絡はもう少しだけ待って欲しいんだ。実は先にこの事を報告したい人がいるんだよね」
美「 何言ってんの川口くん?この一刻を争うって時にさ。
一体誰に報告するつもり? 」
川「 ああ。この廃校の事を教えてくれた先輩の稲河さんだよ。
稲河淳太さん」
希「 えっ?えっ?えっ?
川口くん、今、いながわじゅんたって言ったの?」
美「 なに?希美もその人知ってるの?」
希「もちろんよ」
美「誰よ、その聞いた事があるような、ないような名前の先輩は?!」
希「 美穂ったらマジであの稲淳を知らないの? ここら辺じゃ超、有名な人だよ!
心霊マニアの間じゃカリスマ的な存在で、霊的な力が凄くていままで数々の強い霊を退治してるの。 雑誌なんかにも稲淳の体験談が載ってるよ。私毎月買って読んでるし。
凄いね川口くんそんな人と知り合いなんだ…」
川「 の…希美ちゃん詳しいんだね… まあ知り合いっていうかさ、実は兄貴の先輩なんだよ。
昔、色々と世話になった事があってね、それ以来、稲河さん俺の事をいつも気にかけてくれてるんだ… 」
美「 ふーん、世話になったってどういう事? 」
川「 うん…俺さ、昔変なもんにとり憑かれちゃってて死ぬ事しか考えてない時期があったんだ。
そんな時に兄貴が稲河さんを連れて来てくれてさ、あっという間にそいつを退治してくれたんだ。稲河さん曰く俺にはそういう悪い物を引きつける力が強いらしくてさ…
これからも何かあったらまず相談しろって言われてんだよ… 」
美「 な、なるほど… そんな話ってほんとにあんのね…てかその稲河さんて何歳なの? 」
川「 56だけど… 」
美「 オッサンじゃん!! 私先輩っつうからてっきり2、3コ上を想像してたんだけど!? で、その人普段は何してる人なの? 」
川「 うーん詳しくは知らないけど多分真っ当な事はしてないと思うな。いつも一緒にいる人達はヤ◯ザみたいなんばっかだし。
あっ!でも実家はたしか寺だって言ってたような… 」
美「 だ、大丈夫なのそのオッサン?! 優人達見つけた後に、法外なお金とか要求されたりしないだろうね?ねえ、希美はどう思う? 」
希「 美穂は考えすぎだよ。私は大丈夫だと思うよ。わーい稲淳に会える」
美「 あら、希美ちゃんたら目がキラキラしちゃってんじゃん。
ま、まぁいいわ、川口くんそのおっさんに連絡取るんだったら早くしてね。 優人達を早く見つけだしてあげたいからさ」
川「 分かった!安心して美穂ちゃん。稲河さん自体はそんなに悪い人じゃないと思うからさ。
とにかく今日の夜に会ってくるからまた連絡するよ。はいこれ俺の電話番号。じゃあまた。」 スタスタスタ
美「 ふう、本当に大丈夫なのかしら。
優人…お願い生きてて。
なんかとんでもなく嫌な予感がするわ… 」
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その夜
美「 お、お母さんそれ本当なの?!」
母「 だから本当よ。なんでいちいちあなたに嘘をつかなくちゃならないのよ?
あの熊のぬいぐるみは優人君がくれたんじゃない。あんたそんな事まで忘れちゃったの?ぐすん」
美「 もう泣かないでよお母さん。
いくら悲しんだって光代お婆ちゃんは帰ってこないんだよ。それに行方不明の優人だってまだ帰って来る可能性はあるんだから!
もうあの事件から1ヶ月も経つのに、私はお母さんの体の方が心配だよ…」
母「…ぐすん、そうね。美穂の言う通りよね。
お母さんがいつまでもこんな調子じゃ、光代おばさんも天国で心配してるかもね。ぐすん」
美「 そうだよー。ほらほら見てよ猫ちゃん達もみーんなお母さんの事を心配してるんだから!」
猫達「……??」
美「ま、まぁとにかく!
早くいつもの元気なお母さんに戻ってね。お願い! 」
母「 美穂ごめんね心配させちゃって。
でも、本当に優人君が光代おばさんにあんな酷い事をしたのかしら?やっぱりお母さんは未だに信じられないわ。あんなに優しい子がこんな事をするだなんて…」
美「私はあり得ると思うけど…」
母「 やっぱりお母さんはどうしても信じられないわ。だって優人君は小さい頃から凄いお婆ちゃん子で、光代おばさんも優人君の事を溺愛してたのよ?
そんな子がまさか殴ったりするだなんて、あり得ない!ぐすん 」
美「 ほらほらお母さんまた涙出てるよ… はいハンカチ」
母「…ぐす。
…あ、ありがと… ズル、チーーーン!! 」
美「……… あっ、そうだ!
お母さんそういえばさっきのぬいぐるみの話だけどさ。本当の本当の本当に、優人が私に渡してくれって持って来たのね?
絶対に間違いないのね?! 」
母「 もう美穂!あんたちょっとしつこいわよ!
お母さんが嘘言う訳ないでしょ!もう二階上がって寝ちゃいなさい!!…ぐす、うぇーーーん!!」
美「 はあ、だめだこりゃ… 」
…
ギイ、バタン!
美「 あれ?着信入ってる。これ見た事ない番号ね、誰かしら?
やだ、希美からも鳴ってんじゃん」
プルルル
美「もしもーし」
希「 あっ、美穂だ。もーやっとかかってきた!何回も電話したのになんで出ないの?」
美「 あ、ゴメン。ちょっと下でお母さんと話しててさ。どうしたの? 」
希「 なんだそっか!おばさん…あっ!
美穂のお母様… 少しは元気戻った? 」
美「 ダメね、まだまだ重傷だわ。全然立ち直れてない。
それよりさ希美、分かったのよ!あのぬいぐるみの謎!」
希「 え、そうなの?お母様に教えて貰ったの?」
美「 うん。やっぱりあれ私の物じゃなかった、貰い物だったのよ。
ねえ、あれって誰が私の家に持って来たと思う? 」
希「 えっ?んー、わかんない、誰?」
美「 ヒント。最初に『ゆ』が付くわ」
希「 ゆ?んー、なんだろ? ゆ…ゆ…ゆ…
あっ!もしかして、ユリアンレトリーバー?」
美「…希美。あんた全く当てる気ないでしょう?」
プルプル、プルプル
美「 希美ちょっとごめん、キャッチだわ。
やだまた知らない番号からかかってきてる、誰かしら?」
希「 あっ、それ多分川口君だよ美穂。今夜また連絡するって言ってたじゃん」
美「 あっ!完全に忘れてた…」
希「 もう、美穂ったら私もそれが気になって電話したんだよ。とにかく早く出てあげて!お話終わったら連絡ちょうだいね 」
ピッ
美「 も、もしもし」
川「 あっ、やっと繋がった!!
美穂ちゃん俺、俺、川口だよ! 良かったー。もう一生繋がらねーかと思ったよー」
美「 ごめんなさい川口くん。てか大袈裟ね。ちょっとこっちも色々あってさ…
で、そのなんとかっていうオッサンには会えたの?」
川「 ちょっと美穂ちゃんオッサンはやめてよ!いま急いで稲河さんとそっちに向かってるからさ。もう少し待ってて」
美「向かってる?」
川「うん、で、突然で悪いんだけどさ。出掛ける準備だけしといてくれないかな?」
美「 はあ?何よ突然。つか、ぜんぜん意味がわかんないんだけど…
今こっちに向かってるってどういう事?ちゃんと説明してくれないかしら? 」
川「 今は説明してる暇がないんだ。こっちも色々と集める物があってさ。とにかく稲河さん曰わく、一刻を争う緊急事態だから早く解決しないとヤバイんだって。いいから準備しといて! 」
美「 え~!そんな事言ってももうお風呂に入っちゃったし。パジャマにも着替えちゃったし。今からちょっとだけ『相棒』の続きでも見てから寝ようと思ってたのに…ぶつぶつ」
川「 ちょっとこんな時になに呑気な事言ってんだよ美穂ちゃん!?マジでやばい事になってんだよ!優人達が助かるどころか美穂ちゃん… 君たち二人も危ないんだよ!
奴らに… 優人達を連れてった奴らに君たち見初められちゃってる可能性があるらしいんだ! 本当に危ないんだよ!何回も言うけど一刻を争うんだ!! 君たちが連れて行かれない為にも早く手を打たないと大変な事になる…
とにかく着替えて待ってて!必要なもん揃えるのに少し時間がかかるけど、一時間もしたらそっちに行くから!じゃまた連絡する!」
プチ、プー、プー
美「 切れちゃった…
な、何よ? 連れて行かれるですって? どういう事? 一体誰に連れてかれんのよ…
だいたい何者なのよその稲河ってオッサン? 信用できないわ! それって怪しい宗教とかスピリチュ…なんとかなんじゃないの?
うん!絶対そうだわ!どうせ変な壺とか御札とかほうきとか買わされんのよ! もう何時だと思ってんのよ!!
ま、 まぁでも一応着替えとくか… 」
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続く
作者ロビンⓂ︎
幼馴染み ①
http://kowabana.jp/stories/29921
幼馴染み ⑦
http://kowabana.jp/stories/30101
登場人物
秋田優人
吉岡美穂と幼馴染みの高校生。
中学生の時に両親を亡くし、以後、祖母と二人暮らし。
吉岡美穂
美人で優等生だが、絵が下手。
家で猫を10匹飼っている。
親友は永田希美。
永田希美
天真爛漫で何事にも興味津々な性格。
官僚の父を持つお嬢様。
趣味はヌイグルミ集め。
川口拓海
秋田優人のクラスメート。
真面目で読書家。
オカルトサークルの会長である兄の影響で、霊能者の稲河淳太と交流を持つ。
石原亮輔
秋田優人や川口拓海と同級生で、陸上部主将のスポーツマン。
優しくてイケメンだが、体育会系に有りがちな「どこか間抜けな一面」を持っている。
稲河淳太
肩書きは自らの体験談を語る初老の怪談師だが、確かなその実力から霊能者としても活躍している。
怪談を通じて川口拓海の兄と親交がある。
金と名誉に異常な執着がある一面も。
北野真子
稲河淳太の助手。
36歳、バツイチ子無し。
学生時代に火の玉を見て開花し、霊界に興味を持つ。