「うーん、まだキミがされてきた事に比べたら足りないよねぇ?」
頭の中でアニメの機械的な甲高い声で話しかけてくるピエロ。
「…ねぇ、これって僕の為にやってくれてるの?」
「…当然さぁっ!必ず助けるって言ったじゃないかッ♫もうキミは痛い事なんかされないよ〜」
「ほんとうに…?ピエロさん…ありがとう」
「君は本当にいい子だッ!!今度僕が困った時は助けてくれるかい??」
「…うん……うん!」
やっとだ…
やっと自由になれる…
僕は久しぶりに声を出して泣いた。
たくさん、たくさん泣いた。
出る涙もなくなり、ようやく落ち着いた僕はピエロの人形が置いてあった方に目をやった。
?
あれ?
最初見た時となんか様子が…
気のせいかな…?
ピエロの人形はもっとこう…
「早く早くぅ♫続き見ようよ見ようよ!!」
僕は人形に近づこうとしたが、ピエロの声に足を止めた。
そしてピエロの問いかけに頷くとまた続きの映像が頭の中で流れた。
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髪の毛を鷲掴みにされたまま宙に浮いてる母。
ギャーギャーと喚く声がかすれてきている。
ピエロは突然パッと手を離し、
「お〜っと!忘れるとこだったぁ!」
そう言って、グゥーに握った手をもう片方の手のひらの上にポンと乗せた。
そのピエロの手には母の髪の毛が何本、何十本と絡まっている。
「っうわ!?やめろぉぉお!!」
今度は父の髪の毛を鷲掴みにし、鼻歌交じりに引きずって歩き出した。
「フフン♩フフフン♫」
父は叫びながらもピエロの腕に両手で必死にしがみついた。
「いってーーよォォオ!くそッ、なんだっつんだよぉお!! 」
ドンッ----
父を浴槽の中に放り投げた。
「…おい…何する気だよ…?」
ビクビクしながら問いかける父に無表情のピエロは首を傾げて指をパチンと鳴らした。
「うわぁ!!あっち!ぅあっちィ!やめてくれよ!ゔわぁぁああ!!!」
最高温度に設定された激熱のシャワーが父めがけて
流れ出した。
ガンッ バンッ ガタガタッ----
絶叫しながら浴槽の中であばれる父。
浴槽の外に出ようにも何かに邪魔をされ何度も戻されてしまう。
その様子を不機嫌そうに見つめるピエロ。
「なーんだ。これ…全然楽しくないねー。こんな事して何が楽しかったの?」
そう言ってシャワーを止めた。
身体を小さくさせ情けない姿で震えている父。
「…わ、悪かった、ヒロト…悪かったよぉ…」
いつも僕に罵声を浴びせ、罵り、暴力を振るい、傷つけてきた父が今となってはひざまづいて謝罪している。
そんな父の姿を見て僕の口角が緩む。
謝って欲しかったわけじゃない
僕はただ、他の家の子の様に親に愛されたかっただけなんだ。
だけど、なんだろうか…
2人が酷い目に遭う度に身体が軽くなっていく…。
身体の至る所が痛いはずなのに…
1つ1つの痛みが消えていく様だ…
気分までふわふわして心地よい。
そうか…
身体だけじゃなく…
心も解放されたんだ…
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「ギヒヒ イヒヒ ♫」
ズンッ---
!?
「ヒーーーヒッヒッヒッ♫ホンッッットォォオに、めんどうなガキだったが やっとだゼェ、ギシシシッ ♫」
先程までの頭の中に聞こえてきていた機械的な声とは違い、映像の中で聞いたドスの効いた低い不気味な声が頭に響いた。
パチンッ----
指を鳴らす音が聞こえると、目の前も頭の中も真っ暗になった。
「え?な、なに…?」
!?
あれ?
身体が…動かない……
さっきまで嘘みたいに軽かったのに…
「ギヒヒヒヒヒ ♩ まぁでも俺は約束通りにお前を救ったゼェェエ?イーッヒッヒッヒッ♫」
なに…怖いよ……
「わかんねぇのか?わからねぇよなぁ?イヒヒ 教えてやんよォォオ」
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パチン------
ピエロの指が鳴ると同時に視界がパッと明るくなった。
!!?
そんな…まさか…
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
う、うう、嘘だ…
僕は…何を…
やめろ やめろ やめてくれ!!
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手には包丁が握られていて僕の下には無惨な姿の母が仰向けで横たわっている。
上にまたがり、すでに動かない母めがけて何度も包丁を振り下ろす僕。
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
ザシュッ ザシュッ ザシュッ
辺りは一面血の海で、血を浴びて真っ赤に染まった僕は壊れたおもちゃの様に笑い声をあげながら繰り返し包丁を突き立てている。
「ち、違う、ぼぼ、僕じゃない…」
『なぁ〜に言ってんだよ?お前だよぉ〜♩この感触、感覚が分からねぇのかぁ?キヒッ』
「…い、いやだ…やめてくれよ…」
『おいおーい!シラケるダロォーがヨォ〜 あぁ?お前の為でもあるだろーが 』
「で、でも僕…こんなの…望んでないっ」
『ハァアア? テメェの望みを叶えるなんて言ってねぇよ ブァーーーーーーカ♫ キーヒッヒッヒッ♫』
僕は悔しくて悔しくてピエロをぶっ飛ばしてやりたいと思った…けど、身体がもういうことをきかない。
チクショウ……チクショウッ!!
生まれて初めて殺意という感情を持った。
今まで散々両親に酷い目に遭わされてきたけど…
やっぱりどっかで親を慕っていた。
優しかった時もあった。
楽しかった事もあった。
ただ人より僕の親は感情表現が下手なだけだ。
お母さん……、僕の手には、感覚がある。
お母さんの身体をナイフが突き抜ける感覚…
血の臭い…、生温かくてベタッとした血の感触…
!?
「お父さん…お父さんはッ?」
僕の問いかけに母を刺し続けていた手をピタッと止め、ピエロはお父さんがいる方に視線を移した。
そこにいた父は壁に大の字に貼り付けられた状態でこちらを向いていた。
顔は涙や鼻水でぐちゃぐちゃだ。
口の周りや洋服、足元には嘔吐物が広がっている。
目の前で惨虐な光景を目の当たりにしたのだ。
吐いてもおかしくない。
普通なら気が狂うところだ。
でも良かった…
父はまだ生きている…。
「な、なぁヒロト?なぁ、悪かったよ!俺たちが悪かった。頼むよ…許してくれよ!」
父は泣きながら僕に謝っている。
だけどこの身体…僕の意思では動いていない。
言葉も発せない…見えてる景色は僕の目から見えてる景色なのに。
まるで操縦が効かなくなったロボットの操縦席にいるかの様な…
僕であって僕じゃない…
母にまたがっていた僕はナイフを握ったままスッと立ち上がって父を視界に捉えたまま動き出した。
「ピエロさん!やめてよッ!!僕の…僕のお父さんなんだッ!!」
僕は必死でピエロに訴えた。
『ギヒヒ 腐ってても親ってか?…クゥーッ!泣かせるねぇ キヒ♫』
「なぁ、なぁ!なあって!!マジで頼むよ!!!一生償うし、なんでも聞いてやるから!な?」
父も必死で訴えている、
自分が今どんな表情をしているのかは分からない。
「どいつもこいつもウルセェなー だから人間っつーのは嫌いだ あんまりうるさいと舌をちょん切るぞ」
!?
僕の口から発した声は僕の声ではなかった。
不気味で恐ろしくて不快なそのままのピエロの声。
「だ、誰だよ!は?なんだよその声!?お前…ヒロトじゃねぇな?どうなってんだ?」
父も僕の発した不気味な声に混乱している。
あれ?でも父はピエロの声を知ってるんじゃ……?
『ギヒヒヒヒヒ 気付いたか? 』
また頭の中で不気味な声がひびく。
『お前に見せてた2人への仕返し映像は半分ウッソ〜 ♫
全ては俺を信用させて、殻を壊し、お前の身体を借りる為にやった事さっ♫
特別にいいこと教えてやるよ
僕の目的はね〜
完全に復活する事なんだっ♡』
「そんな…、復活って…なに?」
『まぁ夢の中で俺がいつも通り殺りたかったんだけどね〜…残念ながらまだそこまで回復してなくてねぇ めんどくさくてイラついたけど。でもまぁ…人間を殺す感覚…ギヒヒ…久しぶりに楽しめたから良しとするかぁ♫』
「…いつも通り…?」
『あ!でもね?今見てるこの光景は本物だよ!キミの母親は君の手によって絶命致しましたー!!イェイ♩そしてキミの父親は…うーん…どーしよっかな〜♫』
「ねぇ!!
さっきからなに言ってるか分かんないよ!
なんだよ復活って?いつも通り殺るってなんだよっ!?キミは人殺しなの?」
『アァーめんどくさいなー めんどくさいの嫌いなんだよねー僕……あ!……』
急に僕の動きも止まり、ピエロの声も止まった。
『…ギヒヒ そうか…よしっ♫ 』
少しして突然ピエロの弾んだ声が頭に響いた。
「な、…なに?…ナニが『よしっ♫』なの!?」
『フフ フフフフ♫知りたいかぃ?実は何と……
僕が完全復活できるかもしれない方法を発見しましたぁあーーー♩パチパチ〜♫』
僕の体もパチパチと手を叩く。
僕とピエロの頭の中の会話が聞こえていない父は突然の僕の拍手に身体をビクッと強張らせた。
「…え?…そ、その方法って?」
『大丈夫だよ〜♩僕に〜、ま・か・せ・て♡』
何か…何か良くないことをするつもりだ…。
頭の中で僕とピエロが会話している間、父はブツブツと目を閉じて何か喋っていた。
「夢なら覚めろ夢なら覚めろ夢なら覚めろ夢なら覚めろ夢なら覚めろ」
ひたすら呟いている。
父にはもう抵抗する気力も残っていない。
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!!
父の足元にはあのピエロの人形がある。
!?
やっぱりそうだ…
さっき感じた違和感。
あの人形…変化してる…
初めて見た時の人形の姿は派手な衣装と帽子をかぶって、目と鼻と口がちょこんと付いてて、ピエロメイクがチョチョイとされてる簡易的なものだった。
ピエロに身体を取られる前に違和感を感じた時の人形は、ビー玉の様に大きな目、真っ赤な目立つ鼻、口もニンマリ笑ってる様な表情をしていた。
しかし今、そこにあるのは、帽子からモワッとはみ出した髪、こちらを睨んでいる様な目、先の赤い高い鼻、不気味に口角が上がって笑っているピエロの人形。
今にでも喋って動き出しそうだ。
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そうか!
このピエロは僕達の命を食べてるんだ!
僕の生命力が弱まって来てるから助けに来たと言ったのは…
僕が早々に死んだら困るからだ。
僕に嘘の映像を見せてその中で徐々に命を吸い取りながら、僕の身体を乗っ取る隙を狙ってたんだ。
味方のフリして近づいて、身体が弱っているところに、張っていた気も緩んだ僕は弱ってるピエロにとっては最高の獲物だ。
身体を乗っ取る頃には、僕の命をギリギリまで吸い取っていたお陰で、ピエロは母一人、余裕で殺せるくらいの力が戻っていたんだ。
そしてあの時…
ピエロの動きと喋りが一瞬止まった時、間違いなく人形を見ていた。
ピエロ自身も人形の変化をその時気付いて確信したんだ!
僕達の命を喰えば復活できると。
間違いない。
母を殺す前と後の人形は明らかに違う…
そしてピエロの力が確実に強くなっているのは確かだ。
身体を通じて僕にも伝わってくる。
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きっと僕はこのまま命を吸い取られて死ぬのだろう。
お母さん…
お父さん…
ごめんなさい。
僕のせいで…
本当に僕はいない方がいい子だったね。
僕がいなければピエロがウチに来ることもなかったもんね。
ごめんなさい。
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『さぁーて 今度はお前の番だァァア♫』
ピエロが壁に張り付く父の元へゆっくりと近づく。
ナイフをスッと軽く上に投げてはキャッチ、上に投げてはキャッチ。
手元を見なくても慣れた手つきでナイフを弄ぶ。
父の目の前まで来ると、持っていた血塗れのナイフをべロンと舐めた。
すぐに鉄の味が口に広がった。
先程まで母の身体を貫いていたナイフ…
吐き気がした
『お前はー…んー、そーだなー…』
そう言って腕組みをして考え込んだピエロ。
『そーだ♫ ジャガジャガジャーン♫
では質問です♩デデンッ♫昆虫やエビやタコは身体切り離されても少しの間は動いてるそうですが人間は?人間はどうなるでしょーーーかっ!』
………ッ!?
僕は言葉が出なかった。
ピエロの言っている事と僕の捉え方が同じだったとしたら…
残酷過ぎて…想像するだけで気を失いそうだ。
「…お、おい、う、う、嘘だよな?な、なに言って…なに言ってんだよ?」
父もかなり動揺している。
「そ、そそ、そんなもん死ぬに決まってんだろッ?!…なぁ、おい!頼むよぉ〜!死にたくねーよォ」
必死に頭を下げて命乞いをする。
『ブッブー。ハズレ。死ぬのは分かりきってる。人間ていうのは本当にすぐ死ぬからなァ♩
俺が聞いたのは切り離した後も動けるのかって聞いたんだよ 』
パチンッ----
ピエロの指の鳴る音がしたと同時に僕の手にズシッと重さを感じた。
さっきまでもっていたナイフがナタに変わっていた。
しかもかなり大きい…
刃渡り約80cmはあるだろうか
それを僕は片手で軽々と持ち上げる。
『はい、正解は…デデンッ♫
まず右足いきまぁーす♫』
「は?は?ちょ、ちょっ…!!!?」
ピエロはナタを思いっきり振りかぶり、そして躊躇いもなくケタケタと笑いながら振り切った。
ダンッッ----
「ギャァアァァァァアアッ‼︎」
ドサッ----
父の右足は太ももから下の部分だけが床に転がった。
切り口からはとめどなく血が流れ落ちていた。
それでも父は壁に張り付いたまま動けずにいる。
「ごめん…ごめんなさい…」
目を背けたくても、ピエロが見てる景色が僕には見えてしまう。
僕の手には父の足を切断した感覚が残っている。
『正解は切り離された部分は動かないけど本体は動くでしたー♫パチパチ〜♫』
イカれてる…このピエロは本当にイカれてる。
父はガクガクと震え始め、目が虚ろになってきている。
「…な、なぁ、も、もう…殺し…殺してくれよ…」
「何言ってるの!?お父さん!しっかりしてよ!嫌だよッ!」
いくら叫んでも僕の声は父には聞こえない。
『あーあ、なんかさーお前、最高につまらないよね〜。』
そう言って転がっている父の右足を蹴飛ばして父の前に立ち、くるりと反対を向いてゆっくり歩き出した。
『次のが最後にしてあげる♩
僕が投げたナタがお前に刺さったらお前の負け、ハズレたらお前の勝ち♫』
そう言って、部屋の端に着いたピエロは背中を向けたままフゥっと息を吐いた。
『さん、にー、いち、で行くよー?
せーの、さん、…』
シュッ---ザシュッ---
!?
数を数え終わる前にピエロはナタを投げ、父の顔ど真ん中を貫いた。
『ギーヒッヒッヒッ♫ あぁーあーつまらなかった!!ギーヒッヒッヒッ♫』
つまらなかったと言いながらお腹を抱えて笑うピエロ。
父はもうピクリとも動かない。
僕は…僕はどうしたらいいんだろう…
お母さんもお父さんもいない…
どうやって生きていけばいいのだろう。
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『今、どうやって生きていこうかって考えてただろォオ?…ギヒヒ…大丈夫…』
パチンッ---
ピエロの指の鳴る音と共に再び目の前が真っ暗になった。
「…僕を…僕をどうする気?」
『キヒッ 君とは最後…行きたい場所があるんだァァ…』
パチンッ----
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wallpaper:2057
僕はゆっくり目を開けて見た。
…公園?
ピエロの人形を見つけた公園だ。
僕と行きたいところって…公園?
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ポポーン ポポポーン
ポポーン ポポポーン
静まり返る公園で、突然変な音が聞こえてきた。
マリオがジャンプする時の効果音に似ています。
!?
ピエロの気配を感じ、背筋がゾッとした僕は辺りをキョロキョロ見渡した。
!!?
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wallpaper:4742
風船片手にこちらを見て佇むピエロ。
かなり不気味な光景だ。
「も、もうやめてよ!充分でしょ?…ねぇお母さんとお父さんは本当に死んじゃったの?」
僕の問いかけにピエロは大きく2回頷いた。
「お母さん達が死んだのも嘘なんじゃないの?」
今度は首を横に振っている。
「僕は…僕はどうなるの?」
『………。』
「僕は死ぬの?」
『………。』
しばらく時間を置いてニタァッと不気味に笑ってピエロ。
僕の心臓はドクンと跳ねた。
よくみるとピエロの口元…
血で汚れている…
まるで血塗れの何かに貪りついたような…
ドクンッ---
まさか!
「お母さんとお父さんをどうしたの!?」
今度は僕の問いかけにトボけたように首を傾げた。
僕は後ずさり、くるりと回って走り出した。
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ッッッ!?
目の前にはピエロが立っていた。
いつの間に移動したのか、手を伸ばせば届く距離にいる。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
生まれて初めて心臓の音がうるさいと思った。
怖い…
怖いよ。
身体が震えて動かないし声も出ない…。
ピエロはゆっくりと両耳に手を当て、耳を澄ましてる素ぶりをした。
そしてニタリと笑いスッと僕の方に左手を伸ばしてきた。
トントンと僕の左胸を指で指したピエロ。
ドスッ---
ッッッ!?
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「ッ!?…うっ!」
お腹に衝撃が走り、視線を下げるとピエロの右腕が僕の身体に刺さっていた。
何かぶつかった衝撃はあった…
だけど不思議だ…
痛みを感じないのだ。
ただ、グニグニと内臓をかき分けられ、お腹の中でピエロの手が動いているのは分かる。
体の中を何かが徘徊している気持ちの悪さったらない。
ッッッ!?
ドクンッ!!
一瞬息が止まった。
ピエロの手は僕の心臓を捉えた。
ぎゅっと握られているのが分かる…
「…僕は…死ぬんだね…」
ピエロは泣くフリをした後
僕に左手をヒラヒラと振って『バイバイ』と口を動かした。
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プチッ プチブチ
血管が引きちぎれる音が聞こえてきた。
僕は目を閉じて覚悟を決めた。
また体の中で何かが動き出す。
心臓が取り出される合図だ。
口の中には血が沢山溢れてきて鉄の味がした。
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あ…
ドサッ---
僕は心臓をとられたと同時に地面に倒れた。
目を開けると、ついさっきまで僕の体内にあった心臓はピエロの手の上で湯気をあげて月明かりに赤黒く光り輝やいていた。
ピエロはうつぶせに倒れた僕を足でグッと蹴りあげて仰向けにし、見下ろした。
ジュル ジュル ----
ジュル ピチャ クチャ ----
僕の心臓に軽くキスをして、汚い音を立てながらそれを貪り始めた。
ピチャ ジュル ジュルジュル ---
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一欠片も残さず食い尽くしたピエロは口を袖で拭ってしゃがみこみ、僕の顔を覗いて言った。
『…ギヒヒ♫ 僕が困った時に助けてくれるって約束…
これで成立♡
お前のクソみてぇな親の命とお前の綺麗なハートを頂いて俺はようやく復活だぁァァ キヒ ♫』
僕はもうきっと死んでいる。
喋る事も動く事も視線を動かす事も瞬きさえ出来きない…
ピエロはスッと立ち上がって、コミカルな動きをして僕に向かって丁寧なお辞儀をした。
『ギヒヒ…キミは良い子過ぎた……残念だ 』
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wallpaper:4729
頭をあげたピエロの顔は不気味な笑みを浮かべていた。
そして暗闇へと消えていく…
作者upa
ピエロ 復活 《後篇》です。
大変お待たせして申し訳ありません。
何度もチェックはしておりますが万が一、誤字脱字がございましたら毎度の通り優しく教えて下さいませm(__)m
後篇が楽しみだと仰って下さった方がたくさんいらっしゃったので皆様の期待に応えられてるか不安なupaです。
長編ですので、お時間ある時に読んで頂ければ幸いです。