集めた話の中で、短いものをいくつかまとめて投稿します。全て和歌山での話です。
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1
大塔村鮎川の人から聞いた話。その人の曾祖父が小屋にいると、大きな笑い声が聞こえてきた。
外に出てみると、何か真っ黒い大きなものが笑いながら山から降りてきたので、急いで小屋に逃げ戻ったそうだ。
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しばらくして外から戸が叩かれたかと思うと、ギャッと叫び声がした。
夜明けになって外を見てみると、鹿の生首が投げ捨ててあった。血はすっかり乾いていたそうだ。
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2
同じ集落のAさんが子どもの頃の話。
友達と二人で富田川の川原で遊んでいると、
「綺麗なかんざしが流れてくる」と突然友達が言い出した。そして「ちょっと取ってくるわ」と川へ飛び込み、そのまま行方不明になった。
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数日後、下流で遺体が発見された。肛門がすっかり開いてしまっていたという。
一緒にいたAさんには、かんざしは全く見えなかった。
ゴウラ(河童)がかんざしに化けて友達を誘い、肛門から身体の中を探ったのだ、と言っていた。
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3
市鹿野の山中で、猟師の仕掛けたトラバサミに狐が掛かり、足を一本失った。
後日、狐が仕返しに猟師の幼い子ども2人を滅茶苦茶にかみ殺して逃げた。
今でも時々、三本足の狐の足跡を見ることがあるそうだ。
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4
中辺路町野中の話。ある人が山仕事に出かけたまま二日経っても戻らないので、村の人達が探しに出かけた。
山に入ると、狸らしい足跡が、その人の足跡と並ぶように点々と続いており、崖の縁でどちらの足跡も途切れていた。
その人は狸に化かされて崖から落とされたのだろうと、人々は噂したそうだ。
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5
龍神村での話。
今から五十年ほど前、ある人が夜に友達の家から山道を帰っていると、障子くらいの丈で白い布を被ったものがいた。幅も障子ほどで、その辺をうろうろしていたそうだ。
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元々変な謂われがあるところだったので、怖くなって友達の家に引き返し、その晩は泊めてもらって翌朝帰ったことがあったという。
この人以外にも、同じような経験をした人が何人かいたそうだ。
作者岩坂トオル