母の兄にあたる章おじさんは仕事柄海外に滞在することが多く、帰国時には、たくさんの土産話を聞かせてくれます。
その中の怖い話を書きたいのですが、まず、章おじさんが紫斑病に罹った時の不思議体験を書きたいと思います。
※祖父母の体験①参照※
章おじさんは小学校一年の時、紫斑病に罹りました。
戦後の混沌とした時代、今と違い、致死率の高い病気だったので、普通なら慌ててしまうのにも関わらず、章おじさんの両親である祖父母は落ち着いて対処できたそうです。
話は章おじさんが生まれる前に遡ります。
祖父母は戦時中満州に居りましたが、丁度その頃に神戸で空襲が起きました。
神戸空襲の翌日、祖父はどうも幽体離脱をしたようで、空襲により焼け野原になった神戸生田地区、多分現在の市役所があるあたりに降り立ち、そこで見知らぬ女性と出会い、空襲により傷ついたその女性から、お腹の赤ちゃんの命を引き継いだのです。
その赤ちゃんこそ、章おじさんです。
引き継ぎの時女性から、この子は心配のない子だが七つの歳の頃に血液の病気になる、しかし近所の軍医が治してくれるから大丈夫だと託されました。
果たしてその章おじさんが七つになる頃、本当に血液の病気の一つ、紫斑病に罹りました。
そして近所の軍医が治療をしてくれたのです。
その治療中、自宅療養をしていた時、章おじさんは不思議な夢を見ました。
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「うわぁ、めっちゃ綺麗なお花畑やん。」
章おじさんは何処かは分からないが、あるお花畑に立っていました。
「母さんの大好きな水色の花いっぱいあるやん!」
と、摘もうとしたその時。
『もし。』
後ろから柔らかい声が。
「うわっ、ごめんなさい!」
章おじさんは花畑の持ち主が現れたと思い、すぐに謝りました。
『坊や、花を摘んだ事は怒らんよ、ただ、その花は持って帰ったらあかん奴やねん、堪忍な。』
「なんで持って帰ったらあかんのん?」
『それは坊やのお父さんに聞いてみぃ。』
「父さんに聞いたら分かるん?」
『せやで、坊やのお父さんに聞いたら分かると思うでぇ。』
「父さんの友達なん?」
『せやで、友達やで。坊やのお父さんは坊やを救ってくれてん。坊やのお母さんと大事に育ててくれとるから安心しとんねん。』
「ふうん、そうなんや、母さんも知っとん。」
『うん、でも会ったことあるんはお父さんだけや。坊やも目が青いんやな、お父さんとよう似とんな。』
「僕は母さんに似とぅっていっつも言われるで。」
『うふふ・・・お父さん、お母さん、両方に似とんやで。さ、そろそろ帰らなホンマに戻れんようになってまう。坊やは長生きするさかい、早よぅ戻りぃ。』
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気がつくと目の前に両親である祖父母と軍医の顔があり、妹である私の母が章おじさんの手を握って泣いていました。
丁度夢を見ていた頃、章おじさんは酷く熱が上がり、意識が朦朧としているのかうわごとを発していたようです。
さっきの花畑での事は夢やったんやな、とわかった章おじさんは祖父母にお花畑で話した女性の事を話しました。
すると心配顔だった祖父は「ほう!」と笑顔になり、祖母は天を仰ぎ「ありがとうございます、ありがとうございます。」と、泣いていたそうです。
祖父が幽体離脱した時に出会った女性が章おじさんを助けてくれたんやなと、祖父母の体験①を聞かされたそうです。
全部聞き終わった章おじさんは、
「あんな、父さん、そのお花畑で会った女の人が、ここの花は持って帰ったらあかんやつや言うてんけど、なんで?」
と祖父に聞くと、祖父は少し考えて
「多分、その花畑は、死んだ人が行くところなんちゃうか。その花摘んでもたら、死んだ人の仲間入りしてまうんちゃうかな。知らんけど。」
一連の話を聞いた軍医は、往々にしてそういう不可思議な事は起こるもので、章君はお花畑の女性に守られているので、どんな事があっても無事に生き延びられるんやで、と言っていたそうです。
今でも青い眼の章おじさんは元気に世界中を飛び回っております。
後に、命がなんぼあっても足りないような体験をたくさんしている章おじさんが中東やアフリカ大陸などで遭った恐ろしい事件、ピレネー山脈での不思議体験などを綴りたいと思います。
作者ゆ〜