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長編11
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あいつは・・・誰だよ?

あのお寺さんの蔵の出火から早1か月が過ぎた

梅雨も明け快晴の日が続いている

7月に入り湿気が少しとれたように思える

だけど・・・暑さが日々増している

来月お盆の日は私たち家族でお寺さんへ行く予定だ

もちろんS君も同行

これといった出来事もなく無事に過ごしている

お盆の日か大みそかの日になにかしら起きるという予感はしている

F子の「超能力」が消えてしまった以上先に備えての準備が出来なくなってしまった

7月のある日曜日に久しぶりにF子とS君が東京から帰ってきた

なんとなく2人とも垢抜けしたように思えた

「ふぅ・・・やはりここが一番落ち着くぜ

あっちは相変わらず時間に追われてな

かわいそうにF子も相当疲れているよ

F子の人気が出てからさらに忙しくなった

まぁ撮影時間は今まで通りだけどな

夜の撮影はすべてやめたよ

F子は少し怒ってたけど体が大事だからな」と帰ってきた途端にS君、しゃべりだした

S子とF子は会った途端におしゃべりをしはじめた

S君にはお寺さんの近況を伝えた

「ほお・・・もう修復工事を始めたんだ・・・すごいよな・・・あそこのお寺さんの宿泊予約は来年の夏まで埋まってると旅行雑誌に載ってたぜ

宿泊料金が他の所より安くてデザートにあの水ようかんが出て和尚の談話付きだとさ

それでたったの1泊2日で3千円だとさ

もちろん料理はお寺自慢の料理がついてるから

まぁ1日2組しか予約できないからな

手軽に山登りが出来るし例のあの神社コースだよ

俺たちは知らなかったけれどあの辺は結構見るところがたくさんあるみたいだぜ」

「そっかぁ・・・一人3千円ならそんなに家計に負担かからないよな

え?一人じゃなく家族4人で1泊2日で3千円!!すげぇーな

そりゃ予約殺到だよな」とS君と話をしていた

突然F子が私にしゃべりかけてきた

「アニキ!来月に私の写真集が出るから絶対に買ってよね

買わないと口を利かないからね!!!」

「え?写真集!?出すの?あちゃ・・・そっか

厄除けに買おうかな・・・」

「厄除け!!!アニキ、私を怒らせると怖いの知ってるでしょ!!!」

「あははは・・・冗談だよ(お小遣いが減る・・・・)」

「パパ、F子ちゃんの写真集は私も買うから、パパも買うんだぞ

かわいい妹の頼みなんだぞ!!」

「あはははは・・・あはぁ・・・・」

「ありがと!S子ちゃん!!!アニキ!!!かわいい奥さんが買うんだから買うよね」

「あちゃ・・・押し売りだな・・・、わかったよ、買うよ」

にぎやかになってきた

さて・・・私の部屋でS君と一緒に写真の整理をはじめよう

住職の奥さんがオアキ・オハルちゃん関連の資料や写真をメールで送ってくれることになった

先日の火事の時にお寺の方で燃えてもコピーを私たちのところにあれば大事な資料や写真を失うことはないだろうとメールに書いてあった

確かに・・燃えてしまったらもうおしまいだ

暇なときに資料や写真をスキャンしてメールに添付して送ってくれている

だいぶ溜まってきた

もうそろそろ整理しないと大変だ

一枚一枚写真や資料を見てどんどん整理していった

「パパ~~、つまんない、パパのところにいていい?」と楓と葵が不満そうな顔をして入ってきた

「いいよ、ゆっくりしていくがいいさ」

「よお!おひさ、葵ちゃん、楓ちゃん」

「わぁ!!おじさん、帰ってきてたの、ということはF子おねえちゃんも一緒なの?

後でF子お姉ちゃんに遊んでもらおうね、葵」

「うん、あたち、F子姉ちゃんと遊ぶ」

葵と楓はおしゃべりをしながら作業を見ていた

「あ!!!F子お姉ちゃんだ、綺麗だ!!!おじさんいつの間に撮ったの?」

と楓が驚いた声を出した

「あ、いや・・・この人はオアキちゃんという人だよ」

「え!?おじさん嘘を言わないでよ、オアキちゃんは私と同じような年頃だよ

なんでこの人が「オアキ」ちゃんなの!!!」

「どう説明したらいいのやら・・・楓ちゃんや葵ちゃんが会ってるのは幼少の時のオアキちゃんだよ

これは大人になったオアキちゃん、つまり楓ちゃんや葵ちゃんのご先祖様だよ

おじさんもそうだけどね」

「わかんない・・・ご先祖様!?・・・」

「あぁ・・・わかんないかな・・・パパのママのおばあさんにあたる人だよ」

「ばあちゃんのおばあちゃん!???・・・楓・・・わからないよ」

「葵もわからないんだぞ」

「そっかぁ・・・説明が難しいな・・・まぁそのうちわかるよ」

「おじさん、うまく逃げたね」

「あははははは!!!」

「楓ちゃんはしっかりしてるなぁ・・・」

私は横で聞きながらクスクスと苦笑いをしていた

だいぶ疲れてきた・・・この1枚で少し休憩しよう

え!・・・・こいつは・・・・こいつ・・・いや名前が・・・同姓同名だろ・・・

「S君!このオアキちゃんを撮った人の名前を見て見ろよ」

「え?うん・・・・はぁ!?・・・・うそだろ・・・こいつは・・・」

びっくりした、最後の一枚のオアキちゃんの写真だ

写真の裏に撮影者の名前が書いてあった

まぁおそらく同姓同名だとは思う

じゃなければ・・・辻褄があわん

あれはたしか私たちが中学校2年生だった

5月頃だったかな、転校生がやってきた

朝の朝礼のあとに転校生の紹介になった

そいつは京都から引っ越ししてきたという先生の話だった

そいつの自己紹介の番になった

緊張してるせいだろう、声が小さかった

一見、ゲゲゲの鬼太郎みたいな雰囲気だった

いや決して片目じゃないよ、けど・・・雰囲気がどうも昭和という雰囲気じゃなかったな

古臭いという感じ

もちろん学生服は最新のバリバリだったよ

「おい!S!、あいつ・・・なんか古くせーよな」と私はS君とそいつの話をした

中学校2年の時にS君と同じクラスになった

本当にこの1年間は充実したいい1年間になるはずだった・・・そいつがいなければな

そいつのせいで俺ら危うく死ぬところだった

今思えばそいつは・・・得体の知れん奴だった

2学期にはどこかへ行ってしまった・・・というかいつのまにやら消えた

先生に聞いてもダンマリしてた

今でもわからない

やはりというか案の定・・・クラスで浮いた

妹のように一人ぽっちの気持ちは痛いほどわかってる

小学生の時に妹たちの面等を見てきたからな

S君と2人で何とかしようということでそいつに声をかけた

「やぁ・・・おはよ、今日な帰りにいつもおれら寄っているゲームセンターがあるけど一緒に来ない?」とそいつをさそった

「あ・・いや・・・ゲームセンター?それはなに?」と聞いてきた

驚いた、こいつゲームセンターも知らない

マジかよ、とおもった

「君、ゲームセンターも知らんのかよ」とS君が少しからかった

「うん、全然知らない、ぼくのところではそんなものはなかったから・・・」と答えてきた

え?マジ?こいつ・・・どんな田舎にいたんだよ

「まぁいいや、授業が終わったら声をかけるから」

「あ・・・ありがとう」と顔を下に向いたままになった

マジで驚いた、ゲームセンターも知らないとは・・・

授業が終わり放課後、そいつに声をかけた

「さぁ、行こうぜ」

「あ・・うん」と小さな声で返事をしてきた

ゲームセンターについた

そいつは本当にはじめてなのかあたりを見回していた

「おい!、F!あいつ・・マジではじめてかもな」とS君が小声で話しかけてきた

「だな・・・しかし・・・古臭いというか・・・ダサいというか・・・」と私はS君に小声で返事をした

そいつはぼんやりと人がゲームをしているのを見ていただけだった

「おい、お金を入れてゲームしろよな」

「あ・・うん・・・でも・・・お金持っていない・・・」

「はぁ??お金持ってないって・・・せめて200円くらいもってるだろ?」

「え!!!!200円!!!そんな大金僕持ってないよ・・・」

「はぁ!?大金?200円だぞ!!!」とS君は少し怒った

マジかよ、200円が大金???もう意味わかんねー

こいつ・・・と色々な場所へ一緒に連れて行った

正直!!!意味が分からん

お金は持ってきてないし行くところ行くところびっくりした顔をするし

すべて俺らが負担をした

おまけに私服も・・・まじで古臭い・・・もう貧乏の子、そのものだ

趣味で写真を撮ってた俺ら

そいつも撮影の場所へ連れて行ったさ

カメラにすごく興味を示した

こいつ・・・カメラも知らなかった・・・・お前いつの時代の人間だよ

バスに乗ったらこいつびっくりしたのか大声で騒ぎ始めた

バスにも乗ったことが無いと言いやがった

騒いだおかげで途中で降ろされた

ある日なんかは俺らマジでこいつと心中するんじゃないかと危ない目にも遭った

こいつ・・・市内の中心部へ連れて行ったときに横断歩道が赤にもかかわらず

平気で渡ろうとした、俺ら慌てて止めようとして車道へ出てしまった

そこへダンプが突っ込んできた

間一髪でダンプがよけてくれて走り去っていった

マジで・・・・勘弁してくれ・・・

そういう昔の思い出

徐々に思い出してきたよ

S君も思い出したようだ

「あいつ・・マジで意味わからんかった・・・」とS君はほざいた

そいつの名前がオアキちゃんの撮影者と同じなのだ

少し休憩をした

隣で葵と楓がはしゃいでた

なんと!整理した写真や資料を手にもってぐしゃぐしゃにしていた

「わぁ!こら、パパたちが整理してたのに、何してるのさ」

「あ!パパ、ごめん・・・ちょっと・・えへへへ」と楓は照れ笑いをした

「せっかく・・・整理したのに・・・」

不思議と怒りがわいてこなかった

というか・・・幼少の時のS子とおなじ感覚だな

S子が私に対して結構なことをされてきたけれど不思議と怒るという感情が湧かなかった

それとおなじだ

うん!?・・・・え?・・・・こいつ・・・こいつは・・・・

「S君、この写真を見て見ろよ、サインの名前、あいつと同じ名前だぞ

こいつ・・・あいつの面影が残ってる・・・・あり得ん・・・」

「どれ・・・げっ!!、ゲゲゲの鬼太郎じゃん!!!そんな馬鹿な・・・

間違いなくあいつだぞ・・・えーーと、大正・・・えええええ、大正だって・・・

信じられん・・・あいつ・・・大正時代というか明治生れだったのか・・・」

はっきりと今分かった

あいつはやはり昭和生まれじゃなかった

あの古臭さ

そりゃ・・明治ー大正時代の人間にゲームセンターなど知るわけがない

ましてやバスなどと・・・

そいつがオアキちゃんの撮影者とは・・・S君相当なショックを受けたようだ

S君の一番好きなオアキちゃんがこともあろうことかあの得体の知れない奴が写してた

ましてや綺麗に撮れている

「あかん・・・得体の知れんあいつに負けた・・・」と下に向いたままになった

S君、またカメラを最新のものに変えていた

でも・・・写した画像を見ると・・・なんか・・・これはカメラのせいではない

単に・・・下手・・・やめておこう

ということはあいつ・・・タイムトラベルしてきたのか・・・!?

それとも何かのタイミングで来たのか・・・

しかし、ちゃんと中学生の制服は着ていた

ちょっと待てよ・・・確か・・あいつと一緒に写ってたのがあったはず・・・

えーーと、どこだ・・・・

私は古いアルバムを探した

あったーーー夏休みの時にある神社へ行ったときに3人が写ってるはずだ・・・・

「え????あ・・・こいつはだれだ?あいつじゃなかったのか?

たしかにあいつとわたしとS君であの神社へ行ったんだ・・・

でも写ってるのはあいつじゃない!!!」

「どうした?・・・なに?・・・・どれ・・・

おい!こいつだれ?ゲゲゲの鬼太郎じゃなかったのかよ

どういうことだ・・・唯一あいつを写したのはたしかあの神社だけだった・・・

んでこいつはだれ?」

もうわからん・・・頭が混乱してる

勘違い!?いや・・・転校してきた奴はあいつだ、ゲゲゲの鬼太郎だ

でも写ってるのは全然知らん奴・・・

こりゃ・・・私は近くに住む同時同じだったクラスメートに電話してこの写真をメールで送って確かめてもらった

返事は「意味がよく分からん、だった・・・するとおまえらが送ってきた名前は知らないが写真に写ってる奴は知っているとのこと・・・」どういうこと?

もう1度写ってる奴の名前を聞いてみた

え・・?俺ら全然知らない名前だぞ、写真に写ってる顔も知らない

S君と私の勘違い?・・・2人だけの勘違い・・・

私たち2人だけが幻影をみていたということかな・・・

でも・・・オアキちゃんの撮影者の名前だけははっきりと覚えてる

もちろん今までオアキちゃんの写真を見た中ではあいつの名前は出てこなかった

でも2人ともあいつの名前を憶えていた

もういいや・・・・頭が痛くなってきた

「パパ、2人でなにをしてるの?大きな声を出したりびっくりした顔をしたりしてさ」

と楓が話しかけてきた

「うん・・まぁ・・・」

試しに全然知らない奴の写真を楓に見せた

「この写真を見ておじさんとパパはびっくりしてたんだよ」

「どれ・・・・うっ!・・・パパ、楓、気分が悪くなってきた

パパ・・・この写真に写ってる人!私知ってるよ・・・

こいつ・・・お寺に火をつけた奴・・・あのね・・・こいつ・・・私に好意を持ってて・・・

何度も私を誘ったの・・・私は全部断った・・・うっ・・・こいつのせいでお寺が燃えた・・」

え?お寺が燃えた?火をつけたのはこいつ?何の話だ

「楓・・・大丈夫かい?この人はパパの同級生だよ、なんで楓が知ってるんだい?」

「うっ・・・大きなお兄ちゃん・・・この方・・・お寺に火をつけてるところを私は見たのよ

・・・この人のせいでお寺は焼けた・・・絶対に許さない」

えええ・・・大きなお兄ちゃんって・・・オアキちゃんなのか?

「オアキちゃんなの?ちょっとまって・・・オアキちゃんを撮影した人の名前って

ここに書いてある名前なの?・・・合ってる・・・え?その顔の人がオアキちゃんを写してた人なのか・・・」

「大きなお兄ちゃん・・・そうだよ・・・私を写してた人はこの人なの

この人、本当にしつこくつきまとって怖かったの・・・断ったから腹いせにお寺に火をつけたんだわ」

思いもかけない展開になった

1回目のお寺の火事は火をつけられたのだ

でも・・・疑問がある・・・あのゲゲゲの鬼太郎の顔は・・・だれ?名前は?でも本人が写ってる写真の顔は面影がある・・・でも・・・火をつけた奴の顔と面影のある顔は全然違う

S君も完全にわからなくなってる

「パパ・・・大丈夫?顔色悪いよ、おじさんも・・・・」と楓は心配そうな顔をして声をかけてきた

もう完全にわからない

単純に勘違いといえばそうかもしれない・・・だが・・・オアキちゃんの撮影者の名前は憶えていたのだ

どういうことだ?

あの神社の写真の奴は誰だよ

確かにゲゲゲの鬼太郎なはずだ

いや・・・まさか・・・最初からゲゲゲの鬼太郎はいなかったんだ

どこかで・・・・オアキちゃんの写真を見たんだ・・・それを記憶違いで覚えてしまったのか?

しかし・・・この写真ははじめてみるんだ・・・もう訳が分からん・・・

この事象だけは未だに分からん

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