僕の名前はボクオ。
高校のクラスメイトのミエコは、見た目は可愛いとは言えないが、性格は明るく気さくで、クラスの中心的存在だ。
ただ、口が達者で、おしゃべりに夢中になると、時々場の空気が読めなくなる一面があるのが玉にキズなのだが…。
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そんな彼女は、いわゆる「見える人」だ。
ちなみにこの話に出てくる友人はみんな仮名だが、キャラクターをイメージしやすい仮名にしている。
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ボクオはもちろん、この僕。
ミエコは「見える人」だから…という理由もあるが、見栄っ張りな性格だからという意味もある。
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ミエコの霊感についての噂を聞きつけ、
僕が以前、直接ミエコ本人に確認したところ、
「普通に見えるよ。ってか、ほら、今も天井のところを女の霊が通っていったよ」と、
アッケラカンとした表情で教えてくれた。
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まぁ、僕をはじめ、このクラスには霊感がある人がほとんどいなく、
真偽の確認のしようがないため、
あくまで「自称・見える人」ということになるのだが…。
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もともとオカルトに興味があった僕は、
その日をきっかけに仲良くなり、
最近では親しい友人といえる間柄になった。
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ある日、そんな彼女のもとに、とある相談が持ちかけられた。
相談の主は、隣のクラスのカノコ(カップルの彼女の方)だ。
カノコはどこにでもいるような普通の女の子だが、
最近、ある悩みを抱えているのだという。
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カノコによると、事の起こりは先週の日曜日。
彼氏のカレオ(カップルの彼氏の方)たちと数人のグループで、
軽い肝試しのつもりで、心霊スポットに出掛けたのだそう。
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そこは、街の郊外にある、空き家になった廃墟で、
肝試しの最中は、特に恐怖体験は起こらず、
無事に帰って来ることができたが、
その日以来、毎晩のように悪夢にうなされるようになってしまったのだという。
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そこで、霊感のあるミエコなら、なんとかしてくれるかもしれないと思い、
相談にやって来たというわけだ。
カノコの悩みの具体的な内容はこうだ。
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深夜、寝苦しさを感じて目を覚ます。
すると、何故か部屋のドアが開いていて、
そこに見知らぬ少女が背を向けて立っているのだという。
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その少女が現れると、それと同時に、廊下の方から、
得体の知れないなにかが、不気味な足音をたてながら、
だんだんと部屋に近づいてくるのだという。
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恐怖に怯えるうちに、いつの間にか意識を失ってしまい、
夢の中で、その得体の知れないなにかに追いかけられるというのだ。
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そして、追い付かれる寸前になると、
どこからともなく現れた淡く白い光が、
カノコの身体を包み込み、
気付けば、朝を迎えているのだという。
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こんな悪夢を毎日見るようになってしまったことで、
安心して眠ることができず、
たとえ眠ることができても、
夜毎悪夢にうなされてしまうため、
カノコは心身ともに疲労困憊なのだという。
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カノコの話を聞き終わると、
ミエコはいつもの明るい表情で、
こう言った。
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「原因はハッキリしているわ。
心霊スポットに行ったときに
悪霊に取りつかれてしまったようね。
でも安心して。
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部屋の四隅とドアの外側に、
天然の粗塩で盛り塩をしておけば大丈夫。
たいていの悪霊はこれで退治できるから。
帰ったら、さっそくやってみて」
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意外にも明るいミエコの態度に勇気づけられたのか、
カノコは久々に笑顔を取り戻し、
「ありがとう。忘れずにやっておくね」と
感謝していた。
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僕も、ミエコの自信に満ちた態度に、
感心と尊敬の念すら抱いた。
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しかし、事態は、そう易々と解決には向かわなかった。
いや、むしろ悪化へと転じてしまったと言えるかもしれない。
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どうしたものか、翌日からカノコが登校しなくなってしまったのだ。
カノコが休みはじめて3日後、心配に思ったカレオが、
お見舞いのために自宅を訪れたが、
カノコは自室のベッドから離れようとせず、
ケダモノのような凄い形相で睨みつけてきたのだという。
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「カノコがおかしくなってしまったのは
ミエコの入れ知恵のせいなんじゃない?」
そんな噂を聞きつけたカレオは、ある日の放課後、
ミエコを捕まえると、猛烈な勢いでミエコに詰め寄った。
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「ミエコが変な入れ知恵をしなければ、
カノコがこんなことにはならなかったんじゃないのか!?
ええ!!どうなんだよ!!
お前、本当に霊感なんかあるのかよ!!
デタラメ言ってんじゃねえぞ!!」
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カレオの怒りは相当なもので、
物凄い勢いで一気に捲し立てた。
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カレオの剣幕に押され、少々後ずさりをしたミエコだったが、
普段から負けん気の強いミエコも攻勢に出た。
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「なに勝手に決めつけてんの!?
私のせいにしないでよね!!
そもそも心霊スポットなんかに行ったアンタたちが悪いんじゃない!!」
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僕は思った。
たしかに、軽い気持ちで心霊スポットなんかに行ったカレオたちは悪い。
だけど、日頃からあれほど自分の霊感をひけらかし、
自信満々にカノコの相談に乗ったのに、
事態が悪化すると、自分に責任はないような物言いをするのは、
筋が通らないんじゃないのか?
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僕の心の中で、ミエコに対する怒りが
ふつふつと込み上げてきた。
それは、周囲で見守っていた友人たちも同じようだった。
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負けん気の強いミエコでも、
周囲から浴びせられる非難の視線に耐えきれなくなったのか、
その場から立ち去ろうとした。
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そんなミエコを引き留めようと、
僕は手を伸ばしたが、
僕がひきとめるまでもなく、
彼女の行く手を阻む者がいた。
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カレオか?
いや、違う。
カレオもまた、僕と同じように、
手を伸ばした姿勢でフリーズしている。
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…
「いい加減、霊能者ごっこはやめたらどうなの?」
…
無口で物静かな、普段の様子からは想像もできないような、
神々しいオーラを身にまとった彼女がいた!
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彼女はそう…
・・
・
ミコだ!
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(突如現れたミコとは一体?
心霊現象の真相とは?
そして、カノコの運命は!?
全ては後編で明らかに!!
とっつ史上初の前後編は意外な展開に!?)
作者とっつ
過去にホラテラに前編だけを投稿したままになっていたものです。
後編も投稿したかったのですが、サイト自体がメチャクチャになった頃と重なり、投稿しないままになっていました。
いつもは分割して投稿することはないのですが、ワクワク感を感じてもらえるようなホラーも書いてみたかったので、あえてチャレンジしてみました。