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日本神話の神についての考察

中編6
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日本神話の神についての考察

「こんちは。今日はあなた方に伝言が会って参りやした。あっしは調整人と呼ばれるものでさぁ。以後お見知りおきを。」

「なんだお前。見たこと無いやつだな。何しに来たんだよ。」

「今回はただ伝言を伝えに来ただけなんで安心して下さいよ。

本来なら特に恨みのない幽霊なんて存在しちゃいけないんですわ。ま、それを見逃す代わりに、あちらの世界のお願いを聞いて頂こうという訳でして。」

「その話。断ったらどうなるのかしら?」

「別に断っても良いんですぜ?その場合はあんたら3人に然るべき処置をするだけなんで。」

「な、なにそれ‥一体どういう‥?」

「良いわ。依頼の内容を聞かせなさいよ。ただし、依頼を達成出来る保証は無いわよ?あと成功したらそれなりの報酬をちゃんともらえるかしら?」

「まぁその点は追々。えーと、イザナギとイザナミの生んだ神々に関する考察‥を話してくれとのことで。はいこれレコーダー。その内回収しに来ますんで。んじゃあっしはこれで。」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

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「大丈夫なのかよお前。あんな依頼受けちまって。」

「一度死んだ私達に怖いものなんてあるのかしら?」

「だけどよ。もしかしたら強制的に消されるかも‥」

「忘れたのかしら?楓はまだまだだけど、私とあんたは大分長いこと幽霊やってるのよ。幽霊は長い間存在し続けると霊力はどんどん強くなっていくし、その力ぶつければ悪霊だって消せたり、無害の霊に戻す事だって出来るわ。あいつが悪霊かは知らないけど、二人分の力ぶつければあいつを消す位簡単にできそうじゃない。」

(実はあたしは前にそれをお前にやってんだけどな。)「にしても、あいつも中々力有りそうだったけどなぁ‥てかお前。色々考えてる用で意外と勢いで突っ走る所あるだろ。そこ直さないといつか痛い目見るぞ。」

「うるさいわね。取り敢えず考察入るわよ。といっても、日本神話は私もあんまり得意じゃないのよね‥」

「神話かぁ。あたしは神なんて信じてねえけどな。」

「イザナミとイザナギは国を作った神様の事だよ。あ、二人が最初に生んだ。神様はヒルコって言ってね‥」

「あら楓。意外に詳しいじゃない。」

「こ、古典の授業で読んだことあって。ついでに色々調べたの。わたしも本好きだから‥」

「そうなの。じゃあ今回は楓に語ってもらおうかしら。私が捕捉するわ。」

「今回はあたしの出番は無さそうだな。ま、聞いてるとすっか。」

「え、えっと‥確かイザナギが男で、イザナミが女の神様で日本の島の形を作った神様なんだよ。最初に2人の間に生まれた神はヒルコっていうんだけど、何にも出来ない出来損ないの神様だったの。二人目もそんな感じで、更に上の神様に理由を聞いたら、子供を作りたいっていう話を女の方からしたのがいけなかったみたいで、それを治してからは普通の色々な神様を生んでいったんだよ。」

「その子作りの話の件なんだけど、やっぱり性欲は男性の方が強いっていうのは昔からの通説で、それを裏付けしてるものと考えることも出来るわ。

それに、昔は女性が下世話な話題をするのは女性らしくないって思われてたの。今はそんな事ないかもしれないけれど、それが今の恋愛にも通じたりしてるのよ。プロポーズは男性からするのがまだまだ一般的だし、告白もデートに誘うのも本では結構男性からしているじゃない。‥私には関係無かったけど。」 

「へへっ。そういやお前は本でそっち系の話も読んできたんだっけ。やっぱりそういう所は乙女チックなんだよな。」

「あんたがそういう事に興味無さすぎるだけよこの単細胞。」

「は、話を戻すとね。最後に生まれた神様はカグツチっていう火の神様だったの。それを生んだせいでイザナミが焼け死んじゃって。」

「マジかよ。自分の生んだ子に殺されるのか‥恐ろしいなそれ。」

「まぁ自分の生んだ子に殺される親というのは別に珍しくはないのだけど、この場合は焼き殺してるっていうのがえげつないわよね。」

「で、ここからが多分一番有名な黄泉返りの話になるんだよ。」

「黄泉返り。単純に言えば生き返ることね。怪談としても有名な部分ね。イザナギはイザナミが死んだのが悲しくて悔しくて、死者が暮らす黄泉の国までイザナミを返しに貰いに行くのよ。何とかしてイザナミを見つけ出すんだけど、既にイザナミは黄泉の国の住人になってしまってたの。」

「住人ってお前。こっそり抜け出せねえのかよ」

「あの世のものを一口でも食べたら、あの世から抜け出せ無くなるのよ。実はお供えものの食事も、あの世に引き留めておいて、現世で幽霊として戻って来ないようにするためだって考えられてたり。

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でも、神様だから何とかして抜け出す許可を貰ったんだけど、それが決して黄泉を出るまで後ろからついてくるイザナミの姿を見ない事だったのよ。あ、因みにその会話の最中も、イザナギはイザナミの姿を見ていないわ。でもどうしても姿を見たくなったイザナギは振り返ってしまうのよね。そしたら、体が朽ち果てたおぞましい亡者の姿をしたイザナミが居たのよ。」

「そ、そうそう。で、イザナミは怒ってイザナギを殺そうと、子分の鬼達をけしかけるの。こんな姿を見られた私はもう二度と黄泉から出られないから、代わりにお前を殺すって。」

「げぇ‥今でいうメンヘラだな」

「そこの攻防も面白いんだよ。イザナギが持ってた櫛を筍にかえて鬼に食べさせて時間を稼いで逃げたり、持ち物を果物に変えて投げて鬼が食べてる間に逃げたり、川を作って足止めしたりね。」

「黄泉の国の鬼、餓鬼は食べ物に餓えた亡者の成れの果てとも言われてるし。川みたいな物理的な足止めとかより、食べ物が一番効果的というのも変な話よね。」

「それで何とかして逃げ出して、イザナミは黄泉の国の死者の王に、イザナギは生きてる者の神様になったんだよ。黄泉の国の穢れを落とした時にも神様が生まれたんだけどね。二人についてはこんな所かな。」

「何か子供の神様っていうより、イザナギとイザナミの考察になってしまったわね。これでもいいのかしら?」

「まぁあたしらただの高校生だし、取り敢えずこんな所だろ。やれることやったよ。レコーダー切るぞ?」

「私達のそもそものスタンスがあんまり怖い話に詳しくない人に話を解説するというものだから。これが精一杯よ。専門家でもないしね。

だから早く出てきたら?そこに隠れてる調整人さん?」

「いやはや驚いた。バレてたんですかい?いやいや。巷で噂の幽霊3人組の話を直に聞いてみたかったんですよ。」

「一応記録もしておいたから。はいこれ。で?報酬は?」

「いやぁ何とも。依頼者が気に入るか解りませんしねぇ。まぁその時はまた来ますんで。ではでは。」

感想。

何か今日はわたしが殆ど喋ってた気がする。神様の話はオカルトなのかな?それにしても、あの調整人って人。どこかで見たような‥?考えてもよくわからないや。あ、もうページが無くなりそう。新しいやつ用意しなきゃ。もう寝よう。

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ノートを自分の部屋で読んでいた生徒はページを閉じた。

「やれやれ。こんな所にあったとは。」

真後ろから声が聞こえた。

「ったく。こんなもん残してやがったとは。こういうあっしが来た証拠みたいなのは残されるとマズイんだよなぁ。消しておかねえと。それにしても‥あいつへの記憶処理が不完全でしたかねぇ。」

馬鹿な。誰だこいつ。ここは俺の部屋だぞ?さっきまで俺一人だったのに。

「まぁあいつはまだ使えるだろうし。今はあの二人とも仲良くやってるようで何よりって事にしておきますか。それなりに仲良くならないと意味無いからな。あ、君。このノートはもらっていきますぜ。後。この内容とあっしの事は全部忘れてもらいますよ。XXXX」

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いつも通りの朝。なにも変わらない日常が少年を待っている。そこにノートなんて無かったみたいに。怪談なんて知らなかったみたいに。

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@たーちん

勿体無きお言葉ありがとうございます!色々頑張ってみた結果ですので、満足頂けたら本当にうれしいです。これからもよろしくお願いしますね!

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