あたしは姫子。こんな名前だけど、あんまり可愛くない中学生。体も中学生にしては太ってる方だと思うし、それが原因でよくからかわれたりバカにされたりする。勉強も全然出来ないし、運動もダメダメ。毎日が辛い。
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今日も学校に行かなくちゃ‥そう思いながら通学路を一人で歩く。友達は殆どいない。学校までの道はいつも一人だ。そんな時、声をかけられた。
「そこのお嬢さん。良い話があるんですよ。」
「だ、誰?」
「しーっ。あっしは他の人には見えやせん。調整人と申しやす。以後お見知りおきを。」
「あ、あたしに何の用ですか‥?!」
「いやねぇ。お嬢さんが可哀想で。今のあなたの毎日、良いことが一つもないんじゃないですかい?非常に調整が取れてないんですよ。そんなあなたにね。一つ力をあげましょうかと。」
「力?」
「コイントスできます?出来ないなら練習してくだせぇ。ここに100円玉があります。例えばあそこに猫がいるでしょう?あなた猫好きですよねぇ?」
「猫は好きだけど」
「あの猫がこっちに来たら嬉しいでしょう?そこで、コインが表なら猫が来る。裏なら来ない。って考えてからコインを投げてくだせぇ。ささっ。早く早く」
「う、うん。えいっ。」
「おっ。表がでやしたね。ほらほら見てくだせぇ。猫が来やしたよ。」
「ほんとだ!かわいい!」
「それで少しでも幸せになってくだせえ。それで調整がとれるってもんです。ただし、身の程をわきまえて程々にして下せえ。あと、ルールは破らんで下せえ。そんな事はしないと思いやすがね。では、あっしはこれで。」
「ありがとう!」
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それから毎日が少し楽しくなった。晩御飯が好きなものが出てくるのが増えたり。コインでからかわれないっていう願いが当たった日は何も言われなかったり。でもそんなある時、明日テストだって言われたの。嫌で嫌でしょうがなかった。だから本当に偶然。
「コインが表なら明日のテストが無くなる。裏でもテストがなくなる」って考えてからコインを投げたの。表がでたわ。それを信じて寝たの。
次の日、その科目担当の先生が怪我で学校にこられなくて、テストがなくなったの。もちろん最初は信じてなかった。だからもう一回。
「あたしをよくからかう勝は、表が出たら教室ですっ転んでみんなの前で笑われる。裏でも同じ。」って念じてコインを投げたわ。裏だったけれど、その日、勝は教室で転んでみんなの笑い者だったわ。
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それだけじゃないわ。太ってたのもこのコインの方法で簡単に痩せることが出来たし。あたしをからかうやつはこの方法でどんどん消していったわ。本当に嫌いだったやつを殺すことさえ出来た。もう怖いものなんか何もないわ。このおまじないさえあれば何でも出来る。友達も一杯出来た。
そんなある日の夜、遊んでいた帰りに久しぶりに一人で歩いているとまた声をかけられた。
「とうとうやっちまいましたね。しかも随分な数。あれはタブーですぜ。というか気付いていたんじゃないですかい?」
「いいじゃないの。あたし今すっごく幸せよ?」
「今のあんたの幸せは普通の人が得ていいものじゃねえって事ですよ。すぐに辞めれば今回は見逃すんで、今すぐ辞めてくだせえ。そして、もうあのおまじないはやらない方が身のためですぜ。」
「何よ。えらそうに。よし。コインで表が出たらあんたが死ぬ。裏でも‥」そう考えようとした。
その時頭の中で暗い声が聞こえた
「コインで表が出たらあたしは悪い大人に犯された挙げ句殺される。裏でも同じ。」
何よこれ。もう一回‥
だめだ、考えられない
「コインで表が出たらあたしは悪い大人に犯された挙げ句殺される。裏でも同じ。」
この言葉しか頭に出てこない。コインを投げてはいけない‥だめだ‥でも、手が勝手にコインを投げた。‥表が出た。
あたしの体は勝手に暗い路地に入っていった。
そこでは裸の女の人が男の人になにかされていた。
あたしはその男の人に向かって、自分から服を脱いで近寄っていった‥
「少しの幸せを願う位であるべきだったのに、あんな無茶なやり方で無理な幸せを掴んだらそれ相応の報いを受ける。そんな事もわからないとは。後はお察しくだせえ。調整をとるのがあっしの役目なんでね。さーて。取り敢えず、あの二人の幽霊を何とかしねえとなぁ‥どうすっかなぁ‥」
作者嘘猫
新キャラ作ったんで、そいつに関係する話を書きました。普通の怖い話です。たまにはこちらもどうぞ。