長編10
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忘れ物

オヤジがいなくなってからというもの子供たちの元気のなさ

特に楓と葵は遊ぶ相手がいなくなったせいか笑顔も消えた

仁と匠はそれぞれが忙しくとても妹たちの相手をしてる暇がない

家族間の異様な雰囲気・・・・

ある日、巧が明日の宿題のノートを学校に忘れてきたみたいだ

どうしても明日には宿題を提出しなくてはいけないらしい

巧はすぐに学校へ行ってノートを取りに行くとS子に言ってきた

「ママ、明日の宿題のノートを学校に忘れじゃった

今から学校へ取りに行くよ」

「え!、ちょっと待って、今から学校へ行くの?

一人で?」

「そうだよ、僕、一人で行くけど・・・」

「ダメ!絶対にダメなんだぞ!」

「どうしてさ、明日、どうしても出さなくちゃいけないんだよ、ママ!!」

「おっちーー!!絶対にダメなんだぞ、ちょっと待って、パパを呼んでくるから!!」

S子が中庭にいる私のところへ駆けてきて、巧が一人で宿題のノートを取りに行くことを伝えてきた

私も「絶対にダメだ!」と少し声を荒げてしまった

傍にいた葵がびっくりして飛び跳ねた

近くてお絵描きしていた楓も手を止めて私を見ていた

思い出した!あれは私が小3の時だ

巧と同じで宿題のノートを学校に忘れてきた

それも気づいたのがもう夜の9時過ぎだった

それまでS君と部屋でTVなど見てて遊んでいたのだ

ふとS君との会話が途切れた時に宿題のことを思い出したのだ

「あっ!忘れてた、明日の宿題をしなくちゃ!!」

「え?宿題があったんかい!」

「そうだよ、すっかり忘れてたよ」

「今から間に合うの?」

「おそらくね・・・あはははは」

かばんの中に宿題のノートを入れたはずと思いかばんの中に手を突っ込んだ

「あれ・・・ノートが無い!!!」

私は焦った

もしかして机の上に置いたのかもと思い机の上を探した

無かったのだ

間違いなく学校に忘れてきた

明日には必ず出すようにと先生から言われていた

「やばい!!ノートを学校に忘れてきたみたいだ」

「おいおい・・・・どうするんだよ」

「今から学校へ行ってノートを取ってくるさ!」

「え!!!もう夜だよ、学校は誰一人もいないぜ、やめたほうがいいってば」

「でもな・・・明日出さないと先生に怒られるんだよ」

「わかってるさ・・・でもな・・・夜の学校は・・・あんまし・・・」

「あんまし?なに?S君は留守番しててもいいよ、俺、一人で行くからさ!」

そこへ能天気S子とわが妹、F子が部屋に入ってきた

「あ!お兄ちゃんたち、またなにか悪いことを計画してるでしょ?この前は私たちに内緒でお兄ちゃんたち2人でどこか行ったでしょ?今度はどこ行くの?私たちを連れて行ってよ!!」

「はぁ?悪い事?あのさ・・・俺、宿題のノートを学校に取りに行くんだよ」

「おっちーー!!!なに?お兄ちゃん、今から学校へ行くの?おっちーー!!やめたほうがいいよ」

「なんでさ?」

「あれ、知らないの?夜の学校って出るんだよ」

「何が出るんだよ?」

「お化けだよ」

「はぁ???おばけ?やめてくれよ、そんなもんいるわけがない、俺さ、明日本当に出さないとやばいんだよ」

あのサイクリング事件や例のお墓の前のこと

お化けなど全然信じていなかった

まぁ・・・例の通学路のあの墓場の雰囲気の気持ち悪さは感じていたけどね

でもお化けを直接見たことはなかった

「いや、俺、一人でいくさ」

「仕方ない、俺も付いていくよ」とS君も付いていくことになった

「あ!!じゃぁ・・・私も行くんだぞ」

「ええええ!!!S子ちゃん、本当に行くの?私・・・そのぉ・・・ついていく」

気持ちはありがたいけど妹たちはまだ小さいし・・・

「あのさ、S子、F子、おまえらは留守番だ!」

「え!嫌なんだぞ、お兄ちゃんたちと一緒に行くんだぞ」

「ダメ!!!おまえらちびっ子は留守番、はい、決定!!!」

「お兄ちゃん!!ずるいんだぞ」とS子は部屋から飛び出していった

しばらくするとオヤジが飛んできた

「おい!!F!テメェ!!S子ちゃんを泣かしたな、しばくぞ、こらぁ!!!」

おいおい・・・

「おい!S子ちゃん達も連れていけ、いいな!!」

「え!ダメだぞ、ちびっ子は留守番だよ」

「はぁ!?ちびっ子だと!おまえもチビじゃないか、とにかく連れていけ!!」

オヤジに怒鳴られて私は仕方なしに妹2人とS君を含めて4人で行くことになった

それが後々・・・大変なことになるとはいざ知らず・・・

特にオヤジは行き先をS子から聞いていなかったらしく後から聞いてオヤジの顔が真っ青になってた

オヤジも学校にお化けが出ることは知っていたらしくその時に言っていれば俺も必ず「行くな」と言ってたのにな・・・とぼやいていた

時すでに遅く、オヤジはさんざんおふくろから説教を受け2、3日、部屋から出てこなかったな

とりあえず、懐中電灯を手に持ち自転車に乗った

ところが・・・一番、チビのF子が自転車に乗れない

あぁぁ・・・仕方ない歩いていくことになった

学校まで2Kmくらいある

それに例の墓場の傍を通らないといけない

懐中電灯1個のためにみんなかたまって歩いていた

当時は家も少なく街灯もほとんどなかった

あんまし夜に外出したことがないから余計に暗闇が怖かった

「暗いなぁ・・・」

「お兄ちゃん、なんか怖いよ」

「おっちーー、周りが真っ暗けなんだぞ」

おチビのF子のペースで歩くから遅い遅い

「しまったな、懐中電灯もう1個持ってくるんだったな」

「だな・・・」

妹たちはお互いに手をつないで私たちの後ろからついてきた

「おっちーー!!怖いんだぞ、先が真っ暗なんだぞ」

「だから!言ったろ!家で留守番してろって!!」

「お兄ちゃんの言うとおりだった・・・F子、お家へ帰りたい・・・」

「ええ!!いまさら・・・もうすぐ学校だよ」

「・・・わかった、F子、ついていく・・・」

「おっちーー、私がついているから安心なんだぞ、F子ちゃん!」

「うん、S子姉ちゃんがいるから安心!」

いや・・・むしろ不安だ

能天気S子がいるとろくなことがない

その場の雰囲気が明るくなるのはいいけど場所によりけりだ

とくにこのS子は空気を読まない

ましてや夜の学校は静かすぎて怖い

そこにおしゃべりS子がいるとなると・・・・

「さぁ、ついたぞ、裏から入れるから行こう」

「おう!」

「なんか静かで不気味なんだぞ!」

「うん・・・」

裏の入り口から入って2階の教室へ行く途中でF子がなにか感じたらしい

「お兄ちゃん・・・F子、少し気分が悪いよ」

「F子ちゃん、大丈夫?」

「あんまし・・・S子姉ちゃん・・・」

「お兄ちゃんたち、どうしよう?」

「だから・・・留守番してろって言ったのに・・・」

「ごめんね、お兄ちゃんたち」

「早めにノートを持って早く帰ろう」

「うん」

「だな」

2階へ着いた

何かしら足音が聞こえてきた

私たちはすぐそばの教室へ慌てて入ってソォーと廊下の足音を聞いていた

「お兄ちゃん、なんか足音が聞こえてくるんだぞ」

「俺も聞こえてる」

「俺もだ」

「私も聞こえてるよ」

「でももう夜の10時過ぎだよ、誰もいないだろ」

「おっちーー、なんか足音がどんどん近づいてきてる気がするんだぞ」

「確かに近づいてきてる」

どんどん歩いてくる足音が聞こえてきた

私は少しだけ頭を上げて教室の窓から廊下をのぞいてみた

たしかに廊下から足音が聞こえてくる

「おっちーー、誰だろうね、こんな夜に、お兄ちゃんと同じで宿題のノートを取りに来たのかな?」

「ありえんだろ・・・こんな夜にだぞ」

「でも、私たちがその「ありえん」だよ」

「うっ・・・S子、お前・・・」

「あれ?足音が止まったよ、お兄ちゃん」

ガラガラ・・・

隣の教室のドアが開く音がした

「え?隣だぞ!!」

「おっちーー、やはりお兄ちゃんと同じなのがいたね」

「S子!お前は・・・」

ガラガラ・・・・

「お!ドアを閉める音がしたな

忘れ物を取りに来たんだな」

「だな・・・」

遠くへ行く足音がした

私はドアをソォーと開けて廊下を見た

私は目を疑った

足音はするけど人影が見えない

「え!!うそだろ、誰もいないぞ!」

「はい?なに?F!、どうした?」

「あのさ、廊下を見たけど廊下に人がいないんだよ、でも足音は聞こえるよな」

「足音は聞こえてるよ、人がいないって?からかうのはよせよ」

「いや、からかってないよ」

S君も私の隣にきてソォーと廊下を見た

「え?誰もいない・・・そんな馬鹿な・・・」

どんどんと遠くへ行く足音だけが聞こえていた

「うそだろ!おいおい・・・まさか・・・お化け?」

「まさか!でも・・・」

これはまずい・・・

「S君たちはここで隠れていてくれ、俺、一人でノートを取ってくる

2つ隣の教室だからさっと行って取ってくるよ」

「おいおい・・・大丈夫か?一人では危ないだろ」

「いや・・・4人一緒だと足音を聞かれる恐れがあるよ

俺、一人で静かに歩いていけばいいとおもう

とにかく俺が戻るまでここで隠れててくれ」

「わかったよ、妹たちは任せておけ、気を付けて行ってこい」

「うん、まかせたよ」

私はそっとドアを開けて足音を立てないようにゆっくりと自分の教室へ向かった

例の足音はとっくに消えていた

一つ目の教室の傍を通るときにふと一つ目の教室が気になり視線を教室へ向けた

誰かが椅子に座っているような気がした

もう1度前を見てまた教室を覗き込んだ

気のせいだったようだ

誰もいなかった

私は恐怖心と闘いながら2つ目の教室、自分の教室のドアを静かに開けた

教室の中を見た

真っ暗闇

懐中電灯を自分の机の方向へ照らした

ゆっくりと自分の机の方向へ歩いた

机の中に手を突っ込んだ

あった!宿題のノートがあった

それを手に取ってまたソォーとドアの方向へゆっくりと足音を立てずに歩いた

するとまた廊下のほうから歩いてくる足音がした

「え?まじかぁ・・・今出ると見つかる・・・」

どんどん近づいてくる

「うわぁ・・・どうしよう・・・見つかるかもしれない」

するとその足音は隣の教室の廊下あたりで止まった

ガラガラ・・・

ドアが開いた

ガラガラ・・・

ドアが閉まる音がした

「げっ!隣かよ・・・どうしよう」

今のうちに行こうかそれとも隠れていようか迷ったが

今のうちにS君の所へ行こうと決心した

ソォーとドアを開けて廊下を見渡した

誰もいない

「今のうちだ」とおもい足早にS君たちがいる教室へ向かった

ドアをあけて中へ入った

「おーい、S君、どこ?」

返事がない

「え?どこにいるの?」と小さな声を出した

返事がない

まさか・・・自分たちだけで帰ったんじゃないかと思った

その時だ

「バァ!!!S子だよ」とS子の顔が懐中電灯の光に照らされた

私は心臓が止まりそうになった

「馬鹿野郎!S子!!脅かすなよ!!」と少し大きな声を出してしまった

廊下にドアが閉まる音が響いた

「おい!声がでかい、聞かれたかもしれんぞ!」

「すまん、ドアが閉まる音がしたよな」

「あぁ・・・ちょっと待って・・・足音がこっちへきてるぞ」

やばい・・・聞かれたかも・・・

どんどん近づいてくる・・・

「やばい・・・近づいてくる・・・」

すると、また、隣で足音が止まった

ガラガラ・・・

「隣だぞ・・・どうする?」

「いまのうちにここから出よう」

「だな・・・」

「おっちーーー、そうしようよ、お兄ちゃんたち」

ソォーーと4人一緒に教室を出た

廊下には誰もいない

私はF子を背負って歩いた

S君はS子の手を握り忍び足で足音を立てないように階段まで歩いた

階段まで来て私はF子を降ろした

階段の陰から廊下をしばらく見ていた

ガラガラ・・・ドアが開く音がした

人影が見えた

「あれ・・・人だぞ、誰だろう?」

「どれどれ・・・おっ!確かに、人だな

先生かな・・・宿直の先生かもな」

「でも・・・あれ?あの歩き方・・・用務員のおっさんじゃないか・・・」

「どれ?確かに、あの歩く癖は用務員のおっさんの感じだな

でも、夜中だぞ、あのおっさん、学校で何してるんだろう?」

ここの学校の用務員のおじさんは片足が悪くひきずって歩く癖があった

その人影の歩く癖がまさに用務員のおじさんの歩き方とよく似ていた

「お兄ちゃん、なんか寒気がするよ」

F子が何かを感じてるようだ

「寒気がする?急いで家へ帰ろう」

「だな」

「おっちーー、帰ろう」

1階に降りた時だ

2階から大きな声が聞こえてきた

「こらぁーー!!!お前たちここで何をしてるんだ!!!」

「うわぁ!!!見つかった!!!」

「やばいよ、お兄ちゃん、はやく!!!」

私たち4人はびっくりして私はまたF子を背負いS君はS子の手をつないで

一目散に学校から出た

校門の外へ出た時に立ち止まって学校の中を見た

追いかけてはこなかったようだ

「うわぁ・・・用務員のおっさんに見つかってしまった、びっくりした」

「ほんと、びっくりした!」

「おっちーー!!びっくりしたんだぞ」

追いかけてこないみたいだからゆっくりと歩いて家へ向かった

私はF子を降ろした

「F子、大丈夫かい?びっくりしたろ?」

「うん、びっくりした!!お兄ちゃん、ありがとう!!」

私たちの体験談を巧に話した

「でもさ、パパ、その用務員のおじさんだったんでしょ

俺さ、やはりノートを取りに行くよ」

「絶対にダメだ!!!!明日、素直に先生に叱られたほうがいい」

「え!嫌だよ、パパ、なんで?取りに行ったらダメなのさ?」

「お前、まだわからないのかい?」

「え?なにが?」

「その用務員のおじさんは3日前に交通事故で死んでるんだよ!!!」

「えっ!・・・・・」

そう・・・あれが初めて見た幽霊だった・・・

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