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中編5
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百物語についての考察

「そういえば、みんなは百物語って知ってる?」

「当然知っているわよ。というかオカルト好きなら知らない方が珍しい位有名なものじゃないかしらね。」

「あたしも知ってるぜ。実際にやったことはねーけどな。どうしたいきなり?」

「この前テレビ見てたら、それをやってる芸能人がいてね。咲ちゃんオカルト詳しいから、何か知ってるかなって。」

「今時そんな番組やってるのかしら‥?まぁそれはそれとして、今回は百物語についての解説でもしようかしら。いい加減考察のネタも無くなりつつあるし、ちょうど良い機会ね。」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

「まず百物語のメインは、夜に一定の人数で集まって怖い話をすることよ。」

「それあたしらもやってね?」

「百物語において大事なのは、その舞台。つまり、火をつけた蝋燭を100本用意して、一つ怖い話を語り終えたら火を消していくの。

蝋燭が100本消えたら、恐ろしい何かが起こる‥といわれているわ。巷では降霊術の一種‥と言われてるけど、そんな時間かけなくても霊を呼ぶ方法はたくさんあるし、手間と時間に見合った霊を降ろせるとは限らないわ。

それを目的としてやらない方が良いわね。そもそも降霊術自体タブーだけど。」

「ん?じゃあみんな百物語をなんのためにやるんだ?」

「一番の目的は、怖い話を出汁にみんなで集まりたいのよ。百物語に参加するような人達なんて、みんなオカルト好きって公言してるようなものじゃない。

同じ趣味の人が集まれば、自然に会話も弾むし何より同じ趣味についてお互いに話すというのは今も昔も変わらない楽しみなのよ。」

「まぁ確かに、オカルト好きってリアルじゃ中々集まりにくいし、公言しにくいからなぁ。あーあれだ。趣味のオフ会とかにいく感じか?」

「昔の時代から怖い話好きは一定数いたみたいね。こんな話があるわ。10人で夜通し百物語をやろうとしたんだけどみんな途中で寝ちゃって、一人が起きて、ふと外に出てみたらお化けがうじゃうじゃいて、みんなで「百話目はまだかー!待つのは退屈だぁ!」って愚痴ってる話。

とか。純粋な怖さだけを目的にしてる訳じゃないのよ。因みに、蝋燭の件だって昔からの名残なの。意外に歴史が深いのよ。」

「なんか話聞いてると、宴会みたいなイメージなんだけどよ。」

「まぁそれは怖い話好きな人達だから、舞台設定は本気でやるのよ。語る話もそれ相応に恐ろしい話を考えるわ。怖い話好きの宴会‥というのはある意味間違ってないけれど。‥そうね。でもそういうオーソドックスな話は他の人達に任せて、私は変化球の話をしようかしら。」

「何いってんだ?」

「いいのいいの。こっちの話よ。百物語関係の話をもう1つ2つするわ。昔の有名な話よ。ある所に、怖い話好きだけど、怖い話を全然怖がらない侍がいてね。自分で噂を流したの。

「今日、俺の屋敷で百物語を開くから、俺を怖がらせたいやつはこい。もし俺が怖いって言ったら金をやるよ。」なんて宣言して。当日の夜、その男の屋敷にはこの噂を聞き付けたらしい見知らぬ大勢の人が来て、侍は大喜び。どんな怖い話がきけるだろうかと蝋燭を100本ともしてお出迎えしたのよ。いざ百物語が始まって、最初に話し出した男が、「これから話しますのは、これからのあなた様の話でございます。」って言った瞬間に蝋燭の火が全部一気に消えて、それどころか周りにいた観客、百物語に参加してた人も全員煙の様に消えてしまって、真っ暗な中に侍一人‥という話ね。

100本消えないと幽霊が出ないというルールを変化球で返すっていう話ね。私は結構好きなのよ。

あとはいたずら好きな3人組が百物語を開いて、蝋燭の火が消えた瞬間にお化けの格好をして客を驚かせて、いい気になっていたら本物のお化けに遭遇して全員気が狂うっていう話もあるわ。因果応報なんだけどね。これらの話に共通するのは、昔はそうやってみんなが気軽に集まってそういう話会を開いていたという事なの。夜の外出が厳しい今は中々そういう事が出来ないから、百物語を開く事自体は難しくなったのよね。」

「そうなんだ‥そうやって聞くと少し寂しいかな‥今の時代だって怖い話好きな人いると思うけど‥」

「あ、勘違いしないでほしいのは、形を変えて怖い話を語るのは続いているわ。ある意味サイトとかで集まり易くなっている所もあるし、何より素人がこんな話を書いて発信出来るなんて昔は考えもしなかったわ。これだって一種の百物語よ。」

「お前時々メタい事言うよな。一応あたしら作中の幽霊なんだけど。」「いいのいいの。」

「そういう訳で、結局の所書き手、語り手がいるから怖い話が生まれるのよ。素晴らしい事じゃない?」

「ねぇ、その話聞いてて思ったんだけど、わたし達で百物語やってみない?」

「こりゃまた急だな。別にほかにすることねーからいいけどよ。あ、でもあたしそんなに話持ってねーぞ?」

「話自体はあるけれど、準備とか色々大変なのよね。別にそこまで本格的にやらなくてもいんじゃないかしら?まぁ私は普通の怖い話もかなりのストックがあるから、それはいつか話したいと思っていた所よ。」

「そうなんだ!じゃあプチ百物語って感じだね。色んな聞いてみたいな。まぁ蝋燭使うと火事とか怖いし、本当に100話話した後に本当に幽霊出てこられても困るしね。」

「‥うん?なんか引っ掛かるな。まぁいっか。んじゃまた後でな。ちょっと準備してくるわ。」

「私も。話を整理しないといけないわ‥少し準備してくるわね」

「それじゃ、また後でね!」

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感想

咲ちゃんはともかく、舞ちゃんから怖い話が聞けるとは思わなかったな。どんな話持ってくるんだろう‥このノートには、それについての感想もかいていくつもり。明日が楽しみです。

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コメント怖い
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@春秋 さん

コメント、怖いありがとうございます!本当に嬉しいです!

この拙いシリーズなんですが、読んで下さっている人からコメントを貰える時が一番嬉しいんですよね。まだまだ書いていきますので、どうかよろしくお願いします。何か要望などがあれば聞かせて下さいね。

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こんばんは、春秋と申します。

この3人のやりとり、好きです!

いつも読ませていただいております、続きが楽しみです!

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