もろに幽霊の仕業なのかわからないが
リビングにいた全員が熱を出して寝込んでしまった
そして師匠も熱を出して3日間苦しんだようだ
いやはや・・・・
4日目になんとか回復できた
この3日間は熱による幻聴や幻覚に悩まされた
このことを和尚様に連絡をした
「そうですかい・・・こりゃ災難でしたわい
話の内容からすると恐らく・・・その師匠という方が連れてきたんでしょうな
その師匠という方、常連のお店の中で恐らく憑かれたんでしょうな
それがずーと師匠に憑いていたわけですわい
なんという執念でしょう
いまも師匠の肩に憑いてるはずですわい
こりゃ早めにお寺へ来てくだされ
偶然なのか・・・1組のお客さんからキャンセルが出ましたんですわい
ですから師匠夫婦の分の部屋は確保しておきますわい」
「え!!師匠の奥さんも呼んだほうがいいのですか?」
「もちろんですわい
一番の原因は師匠の奥さまですわい
恐らく・・・師匠の取り合いをしたと思いますわい
その師匠の肩に憑いてる方は恐らく奥さん関わり合いなはずですわい
師匠の肩に憑いているのは悪霊ですわい
話の内容からすると今回の悪霊はなかなかお祓いが難しくなると思いますわい
早くお祓いをしないとまた災難が起きますわい」
「そうですか・・師匠に奥さんを呼んでもらいます」
「そうしてくだされ
それと・・・師匠に薬とお守りを渡してあげてくだされ
餓鬼ともはこの事態を絶対に見てるはずですから
隙あらば必ず攻撃してきますわい」
「わかりました
お薬とお守りはすでに渡しています
餓鬼の警戒を強めますね
今回は私の家族全員と師匠夫婦の12人です
また大所帯でご迷惑をかけます」
「いやいやなんのなんの・・・おふくろ様には感謝しておりますわい
でわお待ちしておりますわい」
和尚様の眼力はすごい
話を聞いただけでなにもかもわかってる
しかし・・・キャンセルが偶然とは思えない・・・なにかしらの合図なのかも
何かの罠・・・そう思えてならない
「F子・・・どう思う・・・このキャンセルは偶然だと思う?」
「ううん・・・絶対におかしい・・・師匠を誘うための罠のような気がするよ、アニキ
餓鬼・・・かな・・・その生霊の方じゃないように思える・・・今はわからないよ」
「そっか・・・F子の言う通り、罠だな・・・・餓鬼が濃厚だけど・・・よっし!その罠の中に飛び込むか!!」
「うん・・・危ないけど・・・まずは師匠に憑いている生霊をまずなんとかしないとね、アニキ」
しかし・・・師匠も仕事やスケジュールで結局7月になってしまった
その間にも師匠自身がいろいろな怪異に遭遇したとか・・・
これはいよいよ危ない・・・
あれよあれよと月日が過ぎて
7月の下旬になってしまった
土曜日のお昼すぎにS君たちが家に来た
今夜中に出発しよう
「お疲れさま、あっちのほうでなにかあった?」
「いや・・別に・・・これといったことはなかったよ」
「そっか、よかった」
「只な・・・奥さんのほうが「なんでお寺へ行かなくちゃいけないの」と師匠とけんかをはじめてな・・・説得するのに時間がかかったよ
いまだに半分は理解してないと思う・・・」
「そっか・・・こりゃ厄介だな・・・本人が協力してもらわないと生霊の思う壺だぞ」
「だろ・・・師匠もなんとか奥さんを理解させようとあれこれしてたけど・・・
奥さんのほうが気が強くてな・・・まるで・・F子・・・いや・・・なんでもない」
「なに!Sアニキ!!最後のほうちょっと聞こえなかったけど・・・私が何?」
「いや・・・そのぉ・・・なんでもないよ、F子」
いやはや・・・S君が何を言おうとしているのかすぐにわかったよ
F子の性格が年々、おふくろの性格に似てきてる
さすが母と娘だな・・・いやうちの家系だろうな・・・S君・・・いずれオヤジみたいにこき使われるぞ・・・
「皆さん・・本当にすいません・・・私のために高熱を出されたり・・・なんといってお詫びしたらいいのやら・・・」
「いいんですよ・・気にしなくても・・・」
とおふくろがねぎらいの言葉をかけた
「あのさ・・・何で私がお寺へ行かなくちゃいけないのかしら・・・
ちゃんと説明してください!!!」
と師匠の奥さんは不機嫌な顔をしていた
いつもは穏やかな奥さんだが・・・最近、何かしら不機嫌だと師匠は言っていた
「あのぉ・・実は・・・奥さんには内緒で・・奥さんの写真集を出すプロジェクトを内密に進めていたと聞いております・・・もう奥さんは現役を引退されていますからね
もう1度奥さんにモデルになってもらいお寺のロケーションで撮影会をしたいという趣旨なんですよ」
とおふくろが嘘八百を並べ立てた
「もちろん・・・費用は私の財団から出しますから
奥さんは気兼ねなくモデルとして専念してほしい」
「あら!!!そうだったの!!私ももう1度モデルとして撮影してもらいたいと思ってたのよ・・・そういうことならお寺へ行くわよ」
一気に上機嫌になった
やれやれ・・・なんという単純・・・
「総帥・・・すいません・・ありがとうございます」と師匠は小声でおふくろに礼を述べた
「ううん・・・和尚様から絶対に奥さんも連れてくるようにと言われてたからね」
今回は子供たち4人を連れていく
というのも・・・夏休みの間、山頂の神社で「星を見る会」という和尚様の企画で天体望遠鏡を使って星を見るというのを匠や仁がお寺のホームページを見てて見つけたらしい
ちょうどいいタイミングだから子供たちを連れていくことにした
地元の子供たちや宿泊している子供たちが参加して盛り上がるんだそうだ
もちろん大人も参加OK
それを去年からやりはじめたらしい
せっかくお寺へ来たのだから山頂から見る星をぜひ見ていってほしいと和尚さんはおふくろに話をしたらしい
それでおふくろが感動して天体望遠鏡を10セット寄付したそうだ
あとの雑費も財団が払うらしい
たしかにあの神社から見る星は本当にきれい
マジで手が届きそうなくらい近くに見える
山頂からは京都市内も見える
神社から見る夜の京都市内も風情があってカップルや家族連れがよく来るらしい
出発の準備ができた
「よぉし!!お寺へゴー!!!」
「ちょっとまって・・・・アニキ!!!大変!!パパ(オヤジ)がいないよ」
「え?・・・あ!そういえば・・・昼あたりからオヤジの姿見かけてないぞ
どこ行った?」
「じっちゃ・・・そういえば・・・なんかウキウキした顔でお昼前に家を出て行ったよ、パパ」
と楓が教えてくれた
「へ?・・・ウキウキした顔で・・・・」
これは・・・・嫌な予感がする・・・いつも無愛想なオヤジがウキウキした顔をするとなにかしらのドラブルをもってくる
まさに疫病神
「アニキ・・・ウキウキした顔って・・・やばいじゃない・・・私、嫌な予感がするよ」
F子も同じ考えだ
「そうだろ・・・俺も嫌な予感がする・・・おふくろ・・・どうする?」
「あ・・・・もう置いていくしかないわね・・・あんなのが付いてきても何も役立つことはないし・・・」
「え・・・総帥・・・旦那さんを置いていくんですか?」と師匠はびっくりした顔でおふくろに聞いてきた
「あんなのがいても邪魔なだけ・・・子供じゃないんだから・・・後からお寺へ来るでしょ」
「そういうものですかね・・・」と師匠は半ば呆れた顔をした
「パパ・・・パパ(オヤジ)がニコニコしてるとダメなの?」とS子が聞いてきた
「あぁ・・・そういうこと・・・以前もな・・・オヤジ、ニコニコしてどっかへ行っちまって・・・1週間くらい帰ってこなかったことがあったんだよ・・・おふくろがカンカンに怒ってな・・・どこ行ったと思う?」
「おっちーーー、さぁ・・・?」
「はずかしいけど・・・オヤジ・・・ソープへ1週間通ってたんだよ!!
それもおふくろが貯金していた金を使い込んでな・・・
おふくろ、激怒してすごい修羅場だったよ」
「えええ!ソープって・・・あそこにあるところ?え・・・・」
「そう・・S子ちゃん・・・パパとママ、すごい喧嘩してたよ」
「おやっさん・・・すげーな・・・やることがビッグだ!!」
「S君、笑いことじゃないよ・・・今回も・・・おそらく・・・」
「うえぇ・・・・こんな大事なときに・・・おやっさん・・・」
「もうそろそろ出発しないとね・・・あんなのは放置していきましょう」
「そう・・・ですか・・・・」と師匠は負い目があるからそれ以上何も言えなかった
和尚様に連絡をした
「今から出発しますね」
「はい!ゆっくりと来てください
それと・・・そのとり憑かれた方・・・おそらくお寺へ近づくほど体の変調をきたすと思いますわい
車を2台に分けてきてください
1台目はF君夫妻と子供たちとF子さんとおふくろさん、オヤジ殿
2台目はS君とそのとり憑かれた方夫妻
S君には特に師匠という方の行動には特に気を付けるように言っておいてください
ちと困ったな・・・1台しか借りてきていない
仕方ない・・・私のボロ軽で行ってもらおう
S君に和尚様の言いつけを説明をした
「OKOK!了解!!何かあったら連絡するわ」
S君を先頭に出発した
高速に入り休憩をしながら一路お寺へ
しかし・・・やはり、和尚様の言った通り師匠の様子が段々とおかしくなってきたとS君から連絡が入った
私は一旦SAへ入るように指示した
どんな容態なのか確認しないとね
SAへ入りトイレ休憩をした
師匠の顔面がすこし青白くなってるのがよくわかった
奥さんが心配そうにしていた
私は急いで和尚様に連絡をした
「やはりですな・・・一応薬を2粒ほど飲ませてあげてくだされ
それで少し落ち着くと思いますわい
高速を降りたらゆっくりと来てくだされ」
「はい・・・薬を飲ませますね・・・」
師匠に2粒ほど薬を飲ませた
少し楽になったのか表情が明るくなった
休憩も終わり高速を降りてスピードを抑えながらなんとかお寺に着いた
だが・・・師匠は降りたとたんに吐いてしまった
私たちは急いで師匠を仏間へ連れて行った
「お・・これは・・・だいぶ・・・このまま・・・ここで供養しますわい
奥さんも旦那さんの横に座って目をつぶっててくだされ」
と言いながら和尚様はお経を唱え始めた
奥さんは何が起きているのか分からずに狼狽していた
師匠の体が横や縦に激しく動き始めた
「おまえらーー、なにをしたーーわたしの大事なダーリンに何をした」と女の叫び声が師匠の口から出始めた
「ううううう・・・・苦しい・・・くそぼうず!!!お経をやめんかいーーー
喉が閉まるーー苦しいーーーー愛しい人ーーーずーーとそばにいたかっただけなのにーーー
おのれーーーぼうずーーー忌々しいーー女が隣におるーーおのれーー横取りしやがってーーー」
次々と恐ろしい言葉が出てきた
およそ1時間のお経を唱え最後に
「ガッーーー!!!生霊退散!!!!」
と和尚様のでかい声が響いた
途端に師匠は横に倒れた
そして奥さんも気絶した
「ふぅーーなんとかなった・・・だが・・・こりゃ・・・相当な念が強い女ですわい
これで諦めたとは思えませんわい・・・とりあえずは一旦は退けましたわい」
と和尚様は額に汗をかきながら私たちに説明をした
「和尚様・・・師匠はこのままだと危ないんじゃないんですか?」
「そうですわい!!悪霊なのだが・・・なんか後ろにも数体・・・得体のしれないものが見えましたわい」
「え?・・・後ろにも数体?」
「うむ・・・一体だと思っていましたわい・・」
「まさか・・・?」
「はい・・・よくわからんのですが・・・この数体の悪霊が操ってるような気がしますわい」
「なんか・・・うむ・・・今日はここで一応終わりにしましょう・・
師匠と奥様を隣の部屋へ運んでくだされ
隣の部屋を結界で囲みますわい」
「はい・・・そうします」
私とS君は師匠を
F子・S子とおふくろで奥さんを隣の部屋へ運んだ
子供たちはあまりの恐怖に固まってしまっていた
「パパ・・・和尚様の顔・・・いつもの優しい顔じゃなかったよ・・・怖い顔・・・
」
「そうだよ!楓、相手は悪霊、甘い考えで対峙していては和尚様がやられるんだよ」
「うん・・・」
「あたち・・・・今日寝れそうにもないよ、パパ」
「そっか・・・でも今夜はこの部屋でみんないるからね、葵、安心して寝ればいいよ」
「葵、兄ちゃんたちがいるからな、俺や仁がいるから安心だぞ」
「うん!!兄ちゃんや楓ねえちゃんがいるもん!!」
「おっちーー、もう遅いから子供たちは寝るんだぞ!!」
「わかったよ、ママ!!」
和尚様の奥さんが布団一式を持ってきた
「今夜・・恐らくとてつもないことが起きるかもしれませんわい
子供たちが目を覚まさなければいいですけれど
本当は子供たちだけ私たちの寝室へ移したいですけれど・・・
結界の外へ出てしまいますからな
必ず餓鬼連中が襲いに来るはずですわい
困り申したわい・・・・
何ことも起きなければいいですけれど・・・」
「アニキ!!わたしもそう予感がする・・・楓ちゃんたちは私やS子ちゃんで守るから
・・・布団で子供たちを隠すから・・・とにかく怖いものを見させないようにするね」
「そうだな・・・そうしてくれ・・・おふくろも手伝ってくれ」
「もちろんだよ、とにかく子供たちを守るからね」
「隣の部屋でなんとか収まればいいですけれど・・・」
「ところで・・・オヤジ殿は?見かけないんですけれど」
「あぁ・・・そのぉ・・・オヤジはいまのところ行方不明です・・」
「はい?行方不明?」
「はい・・・昼前に一人でどっかへ行っちゃいました・・それっきり家へ帰ってきてないです」
「はぁ・・・残念・・・先週にうまい日本酒を手に入れたのに・・・」
「はい・・・おそらく・・・酒の匂いを嗅ぎつけて来ると思いますよ」
(冗談で言ったのだが・・・マジで来やがったよ、オヤジ)
「さようですかい・・・ならいいのですけれど・・・」
「ではいまのうちに皆さん休憩なりしてリラックスしておいてくださいね
深夜に事が起きそうですわい・・・今のうちに一休みしたほうがいいかもですわい」
「ですよね・・・S子・F子・おふくろは今のうちに少し寝てたほうがいいかも」
「パパ、そうするね、子供たちの横で寝るよ」
「わたしもそうするよ、アニキ」
「すまんのですが・・誰か廊下で様子を見てくれればありがたいのですが・・・」
「じゃあ、俺が廊下で様子を見るわ」とS君が言ってくれた
「廊下・・・というと?」
「はい・・・一応ということで・・・もし子供たちがトイレなどで起きた時に一人で行かないようにしなくてはね・・・もしなにかあればすぐに対処できるはずですし・・・」
「なるほど・・・トイレまでちょっと遠いしこの廊下は少し暗いですからね」
たしかにこの廊下は長く照明もちょっと暗め
トイレはこの廊下の一番奥にある
和尚様の寝室の隣なのだが・・・
S子・F子・おふくろは子供たちの横で仮眠に入った
S君は廊下に出てスマホをいじくっていた
ここの棟は一般の客はいない
この棟の離れに宿泊客が泊っている
時折、宿泊客の声が聞こえている
今日も満室とか・・・
本堂のほうでも仏様にお祈りをするお客の声がしている
私は庭側の方に座って庭を見ていた
神社の山頂では人のはしゃぐ声が響いていた
時折、登る人や下りてくる人が見えた
昼間の湿気がありの蒸し暑さが嘘のように消えていた
涼しい風が頬をかすめていく
天然のクーラーだ
夏休みも入りいつもより登山客が多いと和尚様は言っていた
アベックも結構多い
隣の部屋も静かだ
夫妻は静かに寝ている
もうそろそろ0時
山頂からどんどんと下りてくる
また
本堂からお客が徐々に帰っていく
別棟の宿泊客の声も聞こえなくなった
シーンと静まり返っている
子供たちもスヤスヤと寝ている
「もうそろそろ・・・皆さん、落ち着いて対処してくださいね」
と和尚様が仏間に入ってきた
いつのまにやら空が雲一面に覆われていた
ドオーーーンと稲光が1発光って雷が落ちた
ザァーーと土砂降りの雨になった
「うわぁ!!!雷かよ・・・・びっくりした」
S君はスマホを片手にウトウトしていたようだ
S子・F子・おふくろも目が覚めた
「おっちーー!!びっくり!!雷が落ちたね・・・」
「うん・・・S子ちゃん!!!子供たちを守ろうね!!」
「おっちーー、守るんだぞ!!」
隣の部屋から奇声が聞こえてきた
急いで和尚様は隣の部屋へ走っていった
「おのれーーー、私の愛おしい人はどこだーーー、くそぼうず!!!隠しやがったな!!!
何も見えんぞ!!」
和尚様は大きな声でお経を唱えていた
「おのれーー、おのれーー、私は負けんぞ!!!愛おしい人!!あいつに取られてたまるかぁーー!!!!」
一層、和尚様のお経を唱える声が大きくなった
外では雷が連発で落ちていた
雨も土砂降りを超えて滝のような雨が降っていた
ドーーンとどうやら雷が落ちたようだ
部屋の電気が消えた
「うわぁーー、マジかよ、電灯が消えた・・・
マジやばい懐中電灯を持ってこなかった・・・
スマホ・・・よっしゃ・・・」
「アニキ・・・早くスマホの明かりを点けてよ!!」
「わかってるよ・・・」
S君がスマホのランプを点けた
部屋の中は真っ暗でS君のスマホの辺りだけ照らしていた
「お姉ちゃん・・・怖いよ・・・」
どうやら子供たちが起きてしまったようだ
「おっちー、大丈夫だよ、ママやF子姉ちゃんがいるからね」
隣からは和尚様の大きな読経が響いていた
「S子、F子、子供たちの布団をかぶせて周りを見えないようにしてくれ」
「おっちーー、わかったんだぞ、かぶせるんだぞ」
「うん、アニキ・・・みんな布団の中にいるんだよ、みんなの手を繋いで怖かったら目をつぶってるんだよ」
「楓姉ちゃん、お手て~~」
「葵、手を出してーー、そう、仁兄ちゃんの手もだよ」
次々と子供たちはお互いの手を繋ぎ始めた
ガタガタガタガタ
ガタンガタン
と部屋中が揺れ始めた
「ええええー、地震?マジかよ」
「いや違うぞ、S君・・・こいつは隣の霊の仕業じゃないのかな」
「そっかぁ・・・すげぇパワーだな・・・」
「あたち・・・怖いんだぞ・・・楓姉ちゃん、もっと強く握ってほしいんだぞ」
「うん、葵、わかったよ」
子供たちは布団の中でジッと耐えていた
巧が様子を見に布団から顔を出した
「わ!!なんじゃこりゃーー、真っ暗けーー、部屋が揺れてるし・・・」
「こら!巧、見ちゃダメだろ!」
「だってさ・・・パパ・・・気になって仕方なかったんだよ」
確かに気になるわな・・・
隣では和尚様が大きな声を出して戦ってる
いつまで続くんだろ
外は土砂降りで雷鳴が響いていた
山の神社から慌てて本堂へ逃げてくる人たち
本堂ではお客たちがざわついていた
慌てて和尚様の奥さんが本堂に集まった人たちに水ようかんとお茶を出していた
ようやく本堂に集まった人たちも落ち着いてきたようだ
隣ではさらに大きな声で相手と戦ってる和尚様の声が響いていた
部屋中に響く女のうめき声
相当な悪霊だろ
私は墓場の方を何気なく見た
部屋の中が暗いので外の景色が一層よく見える
時折稲光が辺りを照らすのでじっとよくみた
目が光ってる・・・
間違いない餓鬼たちだ
餓鬼たちが私たちの部屋を見ている
「S君、大変だ、餓鬼たちが集まってきてるぞ」
「え!!うわぁ・・・マジかよ・・・今襲われたらもう終わりだぞ」
「それよりも本堂に集まってる人たちが心配だ・・・俺、お守りと塩を持って本堂へ行ってくる、S君、ここはまかせたぞ」
「おっし、気を付けてくれ!!」
私はありったけの塩とお守りを持って本堂へ走った
本堂では30~40人ほどの人々が集まっていた
私は急いで四方の方角に塩とお守りを置いた
これで緊急の結界ができたはず
私は走って仏間へ戻った
「結界を作ってきたよ・・・あれで一応はなんとかなるはずだ・・・」
「後、部屋のお客さんたちがパニックにならないことを祈るだけだ」
仏間から本堂を見るとお客さんもだいぶ落ち着いてきたのが座って談笑をし始めていた
相変わらず餓鬼の鋭い目が光っていた
いきなり隣の部屋でドドーーンと人が倒れた音がした
私は慌てて隣の部屋へ入った
和尚様が師匠の奥さんに首を絞められていたのだ
師匠は横に倒れていた
「うわぁ!!!和尚様!!!」と私は首を絞めている指を力づくで解こうとしたがものすごい力で首を絞めていた
「どけぇーー!F!!お前じゃ無理だ!!」と
オヤジが駆け込んで師匠の奥さんにタックルをした
師匠の奥さんはそのまま倒れてしまった
「うふぅ・・・危なかったですわい・・・おやじ殿!感謝!」
「間に合ったぜ!!!この悪霊は悪霊と悪霊が交じり合っててよ
坊主一人では無理だぜ!!俺も神様の末裔だからな!!!仏と神が手を合わせれば必ず勝てるぜ、クソ坊主」
「なるほど!!ではお互いのパワーでこの生霊を退散させましょう」
「おう!!!F!!!、お前は仏間へ戻れ!!ここからは仏と神の領域だ
生身の人間の次元ではなくなる」
「わかったぜ、オヤジ!!」
わたしはすぐに隣の部屋へ戻りオヤジが来たことをみんなに教えた
「おおお!おやっさんがきてくれたんだ!もうこれで完全勝利だぜ!!」
隣ではオヤジと和尚様の読経らしき声が響いていた
1時間後・・・・
読経がピタリと止んだ・・・
隣から私を呼ぶオヤジの声がした
私は慌てて行こうとしたらS君が
「ちょいまち・・・たしかにあの声はおやっさんの声かも・・・なんか・・・怪しいぜ、F!!、ちょっとまって、行くなよ!!!」
またオヤジの声らしき声で私を呼んでいた
((おのれーーー人間ともーーー我を完全に馬鹿にしやがってーーー、クソ坊主、クソ神主、おまえらは必ず地獄へ道連れにしてやるーーーーー))
と大きな太い声が響いた
危ない・・・あのまま隣の部屋へ行ってたら・・・オヤジ、和尚様、私は地獄行きだ
あとは・・・餓鬼どもがこの寺で大暴れしてお客さんたちを食っていただろう
1時間後・・・隣の部屋が急に静かになった・・・
外の土砂降りもいつも間にが止んでいた
墓場の光る眼も消えていた・・・
オヤジたちが勝ったのか?
「俺・・・隣を見てくるよ、S君」
「おう、気をつけろ」
私は恐る恐る隣の部屋をのぞいた
4人が倒れていた
「おわっ!オヤジ、和尚様、師匠、奥様!!、おーーい、S君、来てくれ」
私はあわててS君を呼んだ
「わっ!大丈夫かな・・・一応救急車を呼ぼう」
S君が119番をした
4人は救急車で病院へ運ばれた
幸いにも命に別状はないとのこと
1週間後には4人とも、退院した
私たちは一旦自宅へ帰つた
1週間後・・・オヤジから電話があった
「よぉ!無事に退院したぜ!!当分、このクソ坊主の寺で静養するわ」と勝手に切ってしまった
怒ったのはおふくろ・・・仕事はどうするんだと電話でもめていた
まぁ静養といっても3日間だけだった
あとはおふくろの奴隷として朝から晩まで働かされていた
師匠夫婦も事の詳細を聞き改めて驚いていた
特に師匠の奥さんが原因だったことで奥さんは信じられないという感じだったらしい
奥さんには双子の妹がいたらしい
だが奥さんが子供の時に妹は病死をしたということだ
死んでからも姉に頼ってきていたのかもしれない
それが・・・師匠を見て亡くなった妹さんは恋心を抱いたんだろうと
姉と同じ人を好きになってしまった・・・妹さんには肉体がない
実体がないので・・・告白もできない・・・
それが段々と苛立つようになり悪霊を招き入れる結果となってしまったようだ
というのが和尚様が除霊をして分かったことだと話してくれた
その話を聞いて師匠夫婦は妹のお墓参りをしてくるそうだ
作者名無しの幽霊
しかし・・・このクソオヤジ・・・いつもカッコええしばっかだな
いつもはとんちんかんな行動を起こして人に迷惑ばかりかけてるのにな
この件で一層、和尚様と仲良くなってしまった
和尚様から隠れた銘酒が届くようになりオヤジは上機嫌
毎晩、晩酌として飲んでる
子供達にはかわいそうなことをした
次回はちゃんと星空を見られるようにしないとね
いつでも・・・餓鬼たちは私たちを見張ってる・・ということがよくわかった
隙あらば攻撃しようと・・・