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高校を卒業したばかりの頃の話です。
高校の時、毎日遊んでいた4人組がいました。
しかし卒業して、進学や就職、フリーターなど、僕たちの生活は一変し、遊べる時間は金曜日の夜だけになりました。
4人とも原付に乗っていて、遠くまで4台の原付で走る事が毎週金曜日の楽しみになっていました。
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その日は他県まで足を伸ばし、海まで行く事になりました。
待ち合わせ場所のゲームセンターに、1人、2人と集まってきます。
4人集まったところでハンバーガー屋に行き、ご飯を食べて話しました。
「やっぱ就職はツラい」「いや。進学の方がつまんない」などと、とりとめも無い話を延々としました。
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そして日をまたぐ時間になった頃、「そろそろ行くかぁ!」と、原付で走り始めました。
途中、ガソリンを入れたり、行った事の無いゲームセンターでトイレがてらゲームをしたりしながら、のんびりと国道を走りました。
長い坂道を下っていくと、右手に海が見えてきました。
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ビーチの手前の道路に原付を停める3人。
僕の原付はオフロードっぽいブロックタイヤを履いた車種だったので、そのまま砂浜を走ったりしました。
「おお!すげぇな!」
3人は羨ましそうに見てましたが、そのうちパンツ一枚になって海に入るやつがいました。
それを見て、全員一斉にパンツになり、みんなで夜の海に入りました。
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1時間も遊ぶと、もう疲れ、砂浜にあがってたき火をし始めました。
「やっぱ夜だし、濡れると寒いな」と、7月の砂浜でまったりしました。
そのうち、一人が「ちょっと、おしっこ行ってくるわ」と立ち上がりました。
「俺も」「じゃあ、俺も」と、結局、僕以外全員、草むらの方に消えて行きました。
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一人でいる、夜の砂浜のたき火はとても神秘的で、「あぁ。僕一人しかいない世界のようだな」なんて思いながら火を眺めていました。
すると草むらの方ではない方向から足音が聞こえてきました。
あれ…。大回りしてきたのかな…、と思い振り返りました。
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しかし真っ暗闇の中、ずっと眩しいたき火を見ていたため、振り向いても何も見えません。
暗闇です。
しかし足音は聞こえ、確実に誰かがいます。
「ん?誰?○○?もうおしっこ終わったのかよ」
と声をかけましたが、返答はありません。
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しかし小声で会話をしているのが聞こえました。複数人いるのです。
「誰だよ。オマエらか?どこまでおしっこに行ってたんだよ!」
と再度声をかけると、あちらからも会話が聞こえました。
「一人じゃないのか」
「でも今は一人だ」
「やるか」
と小さな声で聞こえました。
完全に友達ではありませんでした。
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その時です。
草むらの方から友達が帰ってきました。
「おーい、KOJI。誰?そいつら」
と、人影に気付き、声を掛けてきました。
その途端、足早に去っていく音が聞こえました。
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だんだん暗闇に馴れて来た目でよく見ると、中年男性3人組でした。
そしてその内の一人の手には、大きな麻袋があったのです…。
これでこの話は終わりです。
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どうも、あの国の工作員だったのではないでしょうか。
上手な日本語を話していたので、違うかもしれませんが。
日本海側では良く耳にしていた拉致でしたが、太平洋側でも…と、身震いしました。
友達が来てなかったらと思うと生きた心地がしない出来事でした。
作者KOJI