世界の終わりって、何なんだろう?何かが終わるってことは、新しい何かが始まるってことなのかな。わかんないけど。
お兄ちゃんが、私のいない人生に価値が無かったなんて言ってたのを、ふと思い出した。そんなことないのに、それ言っちゃったらみんなに失礼だよ。
でもね、もしも逆の立場だったら、私も同じこと考えちゃうと思うんだ。死んでから楽観的になっていたけれど、生きているときはもっと感情的で、馬鹿みたいなことで泣いたり、笑ったり、怒ったりしてた気がする。だから、今こうして色々思い出してみると、すごく切なくて、感傷的になってしまいそう。私、生きてるのかな?なんて勘違いしちゃいそうだよ。
早々に話が脱線しちゃったね。私が話したかったのは、この世界が終わった後のこと。次の世界がどんな感じなのかってことなんだ。
鈴那お姉ちゃんは、どんな世界がいい?あ、ごめんね。この声は届かないんだった。死人に口なしとか、上手く言ったものだよ。
私はね、みんな笑顔になれる世界がいいな。世界が変わるって、たった町一つが変わるだけだけど、それでも平和が一番だね。
欲を言えば、お兄ちゃんと一緒に夏祭り行って、りんご飴を食べて、花火を見て・・・ううん、次の世界ではみんなで行きたい!お兄ちゃんと、鈴那お姉ちゃんと、露ちゃんと、ゼロさんと、みんなで。あ~、蛇さんも連れてってあげようかな。暇そうだし。
って、今の私はもう死んじゃってるんだけどね。あーあ、願い事いっぱい言ったけど、もう叶わないかも。
まあ、それでもいいよ。お兄ちゃんやみんなが幸せに暮らせてるなら私も幸せだし、それが私にとってのユートピアかな。ユートピアって、トマス・モアの描いたユートピアを私は見たこと無いし、この言葉を当てはめていいのかもわかんない。でも、私の描いた理想郷がこの世界から見たユートピアだとして、私達が世界を作る手助けをしたなら、正しいんじゃないかな。お兄ちゃんは、きっとそう言ってくれる。だって、優しいから。
長くなっちゃったけど、そろそろお別れだね。お兄ちゃんと、もっと話したかったなぁ。こんなひとり言じゃなくて、もっと、ちゃんと・・・やっぱり、贅沢はいいや。
どうせ全部終わる。あの夏の喧騒も、三分前のことすらも、全部・・・だから、今度こそ本当にさようなら。
また、夏のどこかで。
作者mahiru
39話。少女の独白。