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短編2
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鳴り出したラジオ

10年前の丁度この日、勤務のシフト上は飛び石連休になっていた為、今日の休みを終えたら、さて明後日はどうしようかなと、私はのんびりと横になっておりました。

身内より電話が。

母方の祖父が息を引き取ったとの連絡。

グワっと込み上げつつも、何故か弾かれたバネの様に私は勤務先に飛んで行き、その旨を上司や店長に伝えて、新幹線へと飛び乗ったのが鮮明に思い出されます。

……1ヶ月と1週間前、8/21に施設にて過ごす祖父を訪ねて、穏やかに車椅子を押したあの瞬間が蘇って来て、急過ぎる別れがジワジワとボディブローの如く効いて参りました。

───横たわる祖父の穏やかな表情、綿を口に含まされていて僅かに開いた様に見える感じは、死に化粧を施されながらも、揺すれば起きて来てくれるのではと錯覚する位です。

娘である母や伯母、妻である祖母に対しては頑固一徹で不器用を絵に描いた様な男だったかも知れませんが、私からすれば素晴らしい職人で、時折微笑む表情が大好きだったのと、彼女等の前では語らなかった戦争の話をしてくれた、或る意味では歴史の生き証人とも言える様な人だっただけに、身内が傍で生きているのに、何かがガラガラと崩れ去る様な気持ちになっておりました。

岩手県北部のやり方ですと、四十九日法要を御別れの際に兼ねて行(おこな)ってしまう為、告別式や火葬も含めて三日程で終えて、地元の自宅に一旦戻りまして、たまたまその時に鞄の中に、最期迄祖父の傍らに置かれていたラジオが入っていたのを確認しました所……

着いた途端に、鳴り始めたではありませんか。

「御祖父ちゃんが鳴らしたのかな」

誰かが言いますが、「やめてやめて!」と怖がる声も無かった様に思われます。

スイッチがたまたま入ったと片付けられる事も出来ましょうが、やはり祖父が一緒に来てくれたと思うと、怖さも何も無いのが不思議でもありました。

────祖父の命日に捧ぐ。

Concrete
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