私は大手のスポーツ用品メーカーで事務員として働いている。
そして同じ会社に好きな男性社員がいる。名前は弘樹さん。でも最近、恋敵が出てきた。
そいつの名前は弘美。最近中途入社で入ってきた年下の女だ。
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shake
許せない!!!!
shake
私が先に好きになったのに!!!!!!
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だから私はコイツを呪う事にした。
深夜の2時にアイツを象った藁人形を作り、そこに五寸釘を打ち込む。
そう、よくある丑の刻参りだ。
白装束は手に入らなかったので普段着のままやる。自己流かもしれないが人の、しかも女性の念は強いと聞いた事があるから、「憎む」念が強ければ効果はきっと現れるはずだ。
そうだ、さらに確実にするためにアイツの髪の毛を手に入れよう。
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翌日、私一人になるまで会社に残り、皆が帰った後にアイツの机の周りを入念に探した。そしたら椅子の背もたれに髪の毛が1本ついていた。
茶色の長い髪の毛。
間違いない、アイツの髪の毛だ。
カラーのし過ぎで傷んだ髪。私のような黒髪で長髪ストレートの綺麗な髪とは大違いだ。アイツと私では髪の質からして違うのだ。なのに先輩に媚を売りやがって。腹が立つ。
まあでも目的の物は手に入れた。今夜が楽しみだ。
私は逸る気持ちを抑えて帰路につく。2時になるのが待ち遠しい。
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待ちに待った深夜2時。
私はアイツの髪の毛を埋め込んだ藁人形の前にいた。
さて、どこから打ち込むか…
初めに心臓を突いて殺すのは勿体ない。どうせなら苦しめてやりたい。
だからまず右足から始める事にした。
shake
カーーーーーンッ!!!
右足に深々と釘を打ち込む。
根元まで深く刺さったが、憎しみの強さから何度も何度も打ち込んだ。
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朝、出社するとアイツが皆に囲まれていた。遠巻きに見ていると今朝、出社途中に駅の階段で転び、右足首を捻ったらしい。
思わず笑いそうになった。
ざまあみろ!
こんなに早く効果が表れるとは驚きだ。
今夜が楽しみだ…
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shake
カーーーン!
今夜は左肩を打ってみた。
会社に行くとまだアイツには何も効果が出ていなかった。でも昼前、書類を運んでいる時に私の前で何もないのに派手に転んだ。そしてアイツは左肩を強打した。
他の社員の手を借りながら立ち上がっているアイツ。その痛みを堪えている表情を見ていると、また笑いそうになってしまい、知らずのうちにニヤけてしまった。
その時、アイツと目が合った。不思議そうな何とも言えない目で私の事を見てきた。
ニヤけていたのがバレたかな?ニヤけているのを見てムカついたのかもしれない。
ふん、好きに思っているといい。お前の命は私が握っている。お前は何もできずに死んでいくのだ。
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その日の深夜も釘を打ち終えた。今回は左手にした。左肩、左手が使えなくなったらアイツはどうするだろう?
その日の帰り道、誰かにつけられている気がした。
振り返ってみたが誰もいない。気のせいか?そう言えば丑の刻参りは誰かに見られるとマズイって聞いた事があったな…。
深夜に外出する人はあまりいないと思うけど気を付けなくては。
出社した時、アイツは左手に包帯を巻いていた。どうやら朝、包丁で誤って切ってしまったらしい。
相変わらず皆から同情を受けていた。これもいい加減ムカつく。アイツの事なんて放っておけばいいのに。
そう考えると、この光景を見るのが嫌になってきた。もう痛みはじゅうぶんに与えたし、そろそろ終わらせるのもいいのかもしれない。
丑の刻参りを誰かに見られるリスクもあるし、もう今夜にケリをつけるか…。
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その日、アイツは手を怪我していていつものように仕事ができず、遅れが出たので残業しますと上司と話していた。1人で残って残業をするらしい。
上司は帰ってもいい。皆で助け合えばいいから無理するな。と言ってくれているのに言う事を聞かないつもりか。責任感があるのか、いや、また皆からの同情を誘っているんだろう。
全くもってうっとおしい。
でもそれも今日までだ。今日で終わらす。お前の心臓に釘を打ち込んで終わりにしてやる。
覚えておけ。
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深夜2時…心臓の上に釘を当て狙いを定める。
一気に打ち込むよりも、徐々に打っていった方がアイツも苦しむ。せいぜい苦しみながら死んでいけ!
shake
カーン!
shake
うっ!!!!
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なにっ!?心臓が痛い…!
心臓にズキッとした痛みが走った。
あまりにアイツが死ぬのを楽しみにしていたから私にも痛みが伝わった?
でも、アイツも今頃心臓が痛くて苦しんでるのは間違いない。むしろ、今の痛み程度では済まないと思う。何せ心臓に釘が刺さっているんだから。
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shake
カーーン!
ううっ!!!!
また心臓に痛みが走った。何これ?
もしかして因果応報とか、人を呪わば穴二つとかそういうの?
shake
冗談じゃないっ!!!
死ぬのはアイツ。呪いが返ってくるとか冗談じゃない!
こうなったら次の1回で一気に終わらせてやる。呪いが返ってくる暇もないくらいに思いっ切り打ち込んでやる!
shake
カーーーーン!!
sound:39
瞬間、心臓に物凄い激痛が走り、立っていられなくなってその場で崩れ落ちた。
うう…何で私が…ヤバい、痛い。痛すぎる…
意識が朦朧としている私を誰かが見下ろしていた。
何でコイツがここにいるの…
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私が呪い殺そうとしていたアイツが目の前にいた。ニヤニヤしたうっとおしい笑みを浮かべながら藁人形から何かを取り出していた。
その手に持っていたのは長い黒髪。あれ?入れた髪の毛と違う。コイツの髪じゃない。
何で?この髪ってもしかして…
気付いた時にはもう目の前が真っ暗になっていた。
アイツは最後までニヤニヤしていた。
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本当に、うっとおしい…
作者村松明美
丑の刻参りのお話です。
よろしくお願い致します。