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中編3
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つくり話

A子は作り話が好きだった。

光が写り込んだり、手足がないように視える写真を『心霊写真』と偽って友達に見せたり、

自分で作った心霊話を話して聞かせて、友達を怖がらせていた。

最後にいつも、

「この写真、(もしくは、『このお話』)ホントやばいから、みんな必ず私の言うとおりにしてね」

と言って、経文を唱えさせたり、持っている仏の絵が入っているという財布で頭や肩をぽんぽんしたりして

「これで大丈夫!」

と言って、笑うのだった。

A子はちょっと顔が良かったので、男子たちにも人気があり、

部活帰りなどに、男子たちに囲まれて怖い話を披露したりしていた。

ちなみに、A子の話が作り話だと知っているのはたぶん私だけだった。

私はA子とはずっと学校が一緒で、昔からよく知っている。A子は良くも悪くも注目をあびるのが好きな子だった。

A子の話は実害があるわけではないので、特に仲が良かったわけではない私はA子が作り話をしていても放っておいていた。

ただ、あの時は止めればよかったのだ。

あの日、A子はいつものように、クラスメート数人に取り囲まれて怖い話をしていた。最後に「この話ホントやばいからさ、」

という、いつものセリフを付けている。

その日、ちょっと違ったのは、隣のクラスのB子がいた事だった。

B子は多分、A子をちょっと妬んでいたんだと思う。B子も可愛い感じの子だったが、そんなに注目されるようなところはなかった。

何より、B子が好きだった、C君がA子の話を面白がっていたのが気に入らなかったのだと思う。

B子はA子が言ったお祓いの方法を否定した。

「そんなやり方で霊なんか落ちないって。その話もネットでよくあるやつだよね〜。」

私はA子がどんな話をしていたのか分からなかったし、A子が提案したお祓いの方法についても聞き取れなかったが、

A子が「でも、・・・危ないよ」と何時になく狼狽していた。

そんなにこだわらなくても、別に作り話なんだから「あ、そう」で良さそうなものなのにな、と思った。

結局、お祓いは実施されず、A子は最後まで「みんな待って」とか言っていたが、クラスメートはそのまま流れ解散となっていた。

A子の顔色がみるみる悪くなっていく様子に私の方が驚いてしまった。

次の日の昼休み、B子がA子にすごい剣幕で怒鳴っていたのに、私はとても驚いた。

「あんた、何考えているの!嫌がらせにも程があるわ!」

どうやら、A子が昨日の夜、B子の家のポストに何やら御札のようなものを入れたらしい。

あとでわかったのだが、実はあのとき話を聞いていた他の子の家にも入れていたようだった。

B子はA子が嫌がらせをしたと決めつけて、激昂していた。

B子は御札をA子の目の前で破り去ってしまった。

異変が起きたのは、1週間ほど経ったときだった。

B子が学校を休んだ。数日前から顔色が悪く、窓際に立って独り言を言っていたりしていた。

悩んでいる様子ではなく、何かに怯えている様子だった。

担任の先生はB子の休みについて何も言うことはなかった。私は1週間前のA子とのことを思い出していたが、どうすることもできなかった。

その後、1ヶ月、B子は学校に姿を見せなかった。噂ではB子は部屋に引きこもり、食事もろくに取らずにぶつぶつと独り言を言うようになっているという。完全な精神病になった、と言う子もいた。

あの事件から2ヶ月後、B子は学校をやめてしまった。「病気で社会復帰できなくなったらしい」というのがもっぱらの噂だった。

A子も夏休み明けには引っ越しをしてしまった。

実は、B子が学校をやめたあと、私は一度だけA子に聞いたことがある。

「あの話、本当だったの?」と。

その時のA子の顔は一生忘れない。

ひどく嬉しそうにニヤリと笑って、

こう言った。

「ざまあみろ」

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