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中編3
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街の怪談ー電車にてー

昔住んでいた地域のY線は、通勤時間帯には、非常な混雑をする電車だった。

当時、高校生だった僕は毎朝7時30分にはこの電車に乗って学校に通っていた。大規模なターミナル駅の次の駅が最寄りだったことから、この時間帯に座れることは殆どなかった。

しかし、その日は運よく、目の前の席が空いた。

夏休み明け、2学期も始まったところだったが、まだまだ暑い。立っているのは嫌な季節だった。

ラッキーと思い、その席に座る。隣は白い長袖のワイシャツを着た中年の会社員風の男性だった。高校がある駅までは、ほんの三駅であったが、楽ができることに僕は喜んでいた。

「君、高校生?」

突然、何の前触れもなく隣の男が話しかけてくる。

「え、はい」

僕は答えながら、『これはヤバイ席に座ったのかも』と思った。

普通、この電車のこの混みよう中、見ず知らずの隣の席の人に話しかける人はいない。いるとすれば、それはどこかおかしい人だ。

男性は、40代後半か50代前半くらい。禿げているというと怒られるだろうが、頭髪は相当薄くなっている。右の頬にちょっと目立つほくろがあった。

見た目はそんなにおかしくない。どこにでもいそうなサラリーマン風だ。

最初の質問から特に話が続くわけではなかった。男は、こちらを見ることもなく、じっと前を見ている。

立ち上がるのも何だし、僕は早く自分が降りる駅にならないかなと思っていた。あと、二駅だった。

最後の一駅。次で降りるところだった。

良かった、あれ以上話しかけられなかった。

ところが、

もうすぐ駅に着くというところで、男が口を開いた。

「さようなら。」

どきりとした。駅に着くと、僕は男の方を振り返らずに一目散に扉から外に出た。

ーなんだよ、あいつ

電車のドアが閉まる。今自分が座っていた席が見える。そこは2つ空いていて、前に立っていた人が座ろうとしていた。

ー2つ?

あの男も同じ駅で降りたのだろうか?

僕はあたりを見回す。僕が降りる駅はそんなに多くの人が降りる駅ではなかったので、目に映る範囲でおそらく降りた人全員だ。

あの男はいなかった。

おかしなことがあるなと思いながら学校に向かう。

本当に驚いたのはその日の夕方だった。

僕は、その頃運動部に属していて、帰りは体力錬成のために家まで走って帰っていた。都会の電車なので、電車で三駅とは言え、走っても45分位でつくのであった。

走っていると、途中でパトカーが2台、それと救急車が1台、止まっているところに出くわした。人だかりができている。

物見遊山で人混みに混じってみていると、周囲の野次馬の話が耳に飛び込んできた。

「なんか、一人で死んでいたらしい」「変死だって」

「原因は?」「わからないらしいよ」

「一人暮らし?」「そうみたい。会社に来なかったからって、夕方に上司が来て、たまたま発見されたって」

「いつ死んだの?」「今朝早くらしい」

「病気?」「さあ?」

「あ、運び出されてきた」

ーマジか、今から運び出されるのか?

人の死体なんて初めて見る。僕は好奇心から、野次馬をかき分けて、前に行っていた。

救急隊が担架で人を運び出している。白い布がかけられているので、直接見ることはできない。

ーなんだ

と思った瞬間、布が何かの拍子にずり落ちて、死人の顔が見えた。

そこで僕は凍りついた。

今朝の人だ。

右の頬の特徴的なほくろ。間違いなかった。

「さよなら」と言った男だった。

しかし、先程の野次馬の話だと、死んだのは、早朝。僕が会えるはずがない。

だったら、あれは何だったのだろうか。

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死んだ人が電車に乗っていてもよほどのことがない限り気づかないと思うでゴザル。
でもそのときに気付くよりもあとからそのことに気付いたほうが300倍怖いでゴザル。。

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