二千十九年、十二月三十一日。織川飛燕は松毬とともに、家で年末特番を見ながら蕎麦を・・・食べていなかった。
「なんで大晦日に出るんだよ畜生!」
平成という時代が終わり、令和という時代の元年も、今まさに終わろうとしているというのにも関わらず、飛燕達は邪鬼の討伐の真っ只中であった。相手は雪鬼という氷の邪鬼だが、対応できる清火術の使い手が遠征で不在のため、急遽駆り出されたのである。
「奴氷属性!僕清風術!圧倒的不利!」
「似非中国語みたいなこと言ってないで真面目に戦ってください!」
「真面目だよぉ!一の巻・旋風陣!ピィーッ!」
飛燕の笛の音により、放たれた燕折り紙達が円を描くように舞い踊り雪鬼を囲い込むが、相手は氷の邪鬼である。雪鬼から放たれる冷気は、飛燕や折り紙達の力すらも奪っていくのだ。やがて折り紙は渦を巻いたまま凍りつき、氷のオブジェのような形で雪鬼の周囲を覆った。
「清風術四段・空圧斬!」
氷の渦に囲まれた雪鬼の上部、飛燕はこうなることを狙っていたのだ。
「もう無茶してでも倒すからなぁ!寒いよぉぉ!」
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〇
飛燕達は無事に雪鬼を討伐し、帰路に着いていた。時刻は零時三十分、散々な形で令和二年を迎えたのである。
「松毬、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、旦那様」
新年早々、仕事帰りの夜道を二人・・・否、一人と一妖並んで歩く。
「新元号にも、すっかり馴染んできたねぇ」
「そうですね~。旦那様、今年はどんな年にしたいですか?」
「今年・・・まぁ、またみんなが平和に過ごせるならそれが一番だよ。特別なものは、何もいらないからさ」
「ですね。私も、皆様が幸せに暮らせることを祈ってます」
令和二年、飛燕達の活躍に乞うご期待あれ。
作者mahiru
皆様、あけましておめでとうございます。
この度、活動名義を「空海まひる」から「mahiru」へと改名させて頂きました。
今年はしっかりと藍色妖奇譚のほうも書いていきますので、何卒よろしくお願いいたします。