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短編2
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ふるさと

悪いことは重なるもので、恋人と別れた一週間後に、勤めていた会社が潰れた。

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公私ともに虚しくなった私は、ある朝小さなボストンバッグひとつさげ

甲府行き特急かいじ一〇九号に乗りこんだ。

自分が生まれ育った、山梨の実家へ帰るためだ。

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季節はもう秋めいて、駅へ降り立つと肌寒さで身がちぢんだ。

それでも空はよく晴れわたり、遠く見はるかす山々の稜線がくっきりと青く波うっていた。

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家には老いた両親が暮らしている。

「ただいま」と言って玄関をくぐると、母はエプロンで手を拭きながら

まるで修学旅行から帰った娘でも迎えるように「おかえり」と微笑んだ。

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父は縁側で盆栽にハサミを入れていた。

「お父さん、わたし帰ってきちゃった」と言うと

こちらに背を向けたまま「そうか……」とだけつぶやいた。

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それからの数日、私は父の庭いじりを手伝ったり、飼い犬を散歩させたりして過ごした。

夜になれば、懐かしい母の手料理が待っている。

久しぶりにのどかで平穏なときを過ごし、満ち足りた気分でいた。

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ところが六日目の朝になって、母がぽつりと言った。

「あんた、そろそろ帰りなさい」

しかめっ面で朝刊をひろげていた父も、無言でうなずいた。

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私はなんだか腹立たしくなり、当てつけのようにボストンバッグへ荷物を詰めはじめた。

外では木枯らしが吹いている。

またあのなかへ戻るのかと思うとうんざりしたが

「元気でやるんだよ」という母の声に送られて家を出た……。

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気がつくと枯葉のうえに横たわっていた。

頭がぼんやりしている。

ゆっくりと身を起こし、周囲を見まわした。

足もとにはボストンバッグと、そして空になった薬ビン――。

体はすっかり冷え切っていたが、なんとか立ち上がりコートに付いた土を払った。

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ごめんね、ありがとう。

私は、両親の墓に向かいそっと手を合わせた。

Concrete
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@あんみつ姫さま、いつもコメントありがとうございます。

ぼくも友人に勧められてfacebookに登録してたのを今思い出しました。
使い方がよくわからず放置したまんまです(汗
札幌在住なので山梨へは行ったことありませんが、むかし興味があって武田信玄の居城がどういう立地に造られていたかを調べたことがあります。本当にぐるっと山に囲まれていますよね。Wikipediaでその風景をシュミレートできるのですが、稜線がすごく美しいです。
怪談はただ怖いだけではなく、なかには笑いや涙を誘うものもありますよね。
ある意味、人間ドラマの縮図なのかもしれないと思ってます。

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