短編2
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子供の殺意

私が住んでいるところの近所に、最近ちょっと有名になった場所がある。

海が広く見渡せる崖みたいなところで、インスタで騒がれたとかで急に人が来るようになった。でもそこには柵のようななものもなく、かなりスリリングなロケーションでもある。

しかも地元の人には良く知られているのだけれど、そこは昔から自殺の名所でもあったりする。

そんな危険な場所で、ある恐ろしい現象が起きているという噂を耳にした。

今では親子連れなども多く、物心ついたばかりのような子供もよく見かけるようになった。

そういう子供がふと、そこにいる人の誰ともなく……

「この人が崖から落ちるところを見たい!」

「この人なら突き落としても良いに決まってる!」

という、一見サイコパスのような思想とも取れる妙な興味に駆られることがあるらしい。

地元では当然、そこがそもそも自殺の名所だからだろうと言われている。

自殺者の怨念的なものというのは、理性ある大人にはほとんど効かなくて気づきもしないものでも、純粋な子供の心は簡単に乗っ取られてしまうことがあるそうだ。

とはいえ結局は親御さんの目もある中では子供たちも滅多なことはできず、今のところその現象による事件や事故は起きてはいない。

問題は子供にそう思われた人。

要するにその人はすでに、やがて悲惨な末路を辿るレールの上にいるということらしい。

その場で自殺のような行動に出なくとも、良くないものに取り憑かれていたり、強い恨みを買って呪われていたり、罰当たりなことをして祟られていたりと、何かしら不穏なものを背負っているということなのだと。

実は私も、かつてその場所で子供に突き落とされそうになったことがある。

そのときはぎりぎり気が付いて事なきを得たんだけれど、まさか自分が取り憑かれていたために起きていたとは思いもしなかった。

もっと早くそのことを知っていたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

最後に、こんな愚痴みたいな話を読んでくれて本当にありがとう。さようなら。

遺 書

Concrete
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