人は(見た、聞いた、感じた)ことによって出来事を記憶に定着してると思います。
その中でも僕は(感じた)が一番記憶に定着しています。
早い話が匂いで物事を記憶するのが得意なのです。
例えば、大好物の焼肉の匂いがすれば、頭の中で口に入れた時のあの舌触り。ザラザラとしているが、簡単に咽頭を通り抜け、食道、胃まで到着できる感覚がフラッシュバックされる。とここまでは誰でも想像できると思います。
ここからが僕の特技なのですが、匂いと共にその時見た物、聞いたことを記憶できるのです。
例えば学校の試験前日に試験範囲をレモンの匂いを嗅ぎながら勉強してたとします。
すると次の日、マスクなどに少しレモン汁を垂らしておくだけで、満点が取れます。
もちろんレモンの匂いを嗅いでなければその範囲は頭に浮かびません。
ですがこの方法を僕はあまり使いません。良いように語ったかもしれませんが、欠点もあります。というか欠点だらけです。
まず先ほどレモンの匂いを嗅げば試験範囲をフラッシュバックさせることが出来ると都合よく語りましたが、その時フラッシュバックされるのは試験範囲だけじゃありません。今までのレモンの匂いを嗅ぎながら見た光景、聞いたことが一斉に頭を駆け巡ります。
その膨大な情報量で頭がいっぱいになるのです。その情報量の中から試験範囲を思い出すことは出来ますが、その後の疲労感がすごいのです......
だから普段僕は、両鼻に詰め物を入れ、口で呼吸するようにしています。
体育の時間はちょっとしんどいけど......
長々と語りましたが、ここからが本題です。
僕は雨の日の匂いがとても嫌いです。
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~ある日の学校帰り~
いつも僕の帰宅ルートはあまり人気がない、川沿いの高架下を通ります。
今日もいつものように学校を出て、雨が降っていたので、傘に水滴をポタポタ鳴らしながら、泥濘のある道を歩いていた。
いつもの高架下、川沿いになればなるほど道は泥濘、歩行が困難になる。
ここを通らないで帰ることもできる、だがかなり遠回りになってしまう。
早く帰路に着きたい僕は仕方なくこの道を選んだ。
今思えば後悔しかない......
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川沿いを歩き続け、高架下に差し掛かった時のこと、
高架下は雨が通らないけど、わざわざ傘を閉じるのも煩わしいと思い、そのまま傘をさし続けて歩いていた。
するとその高架下で傘に「ドボッ!」っと音が鳴ったと共に傘が地面へ持っていかれた。
何事かと、まず傘に目をやった.....
傘はなにか緑黄色や茶色の液体で一部が塗られていた。
直観で理解した。
これは嘔吐物と.....脱糞......
僕は恐る恐る上を見上げる.....
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そこには40~50代ぐらいの男性だろうか......
スーツ姿で中年太りした体型、脚は宙に浮き、目は飛び出て、定期的に脱糞や嘔吐を繰り返している.....
僕は驚きの余り後ずさった。
恐らく首を吊ったのは吐しゃ物や糞尿の時間から考察するに、僕が川沿いを歩いていた時だろうか......
驚いたと同時に鼻の詰め物も勢いよく取れてしまった。
雨の日の独特の匂いがする。さらに吐しゃ物や糞尿の匂い.....いや、臭(にお)いも微かにする.....
高架下は天井も高く、どうやって首を吊ったのか......
その日以降、僕は雨の日の臭いが嫌いだ......
作者ゲル
この話はフィクションです。