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中編6
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夢と現実

幽「突然ですけれど。あなたには殺したい人がいますか?」

令「なんなんすか。いるわけないでしょうそんなの。てかまともな人間はそんなこと考えすらしないでしょうに」

幽「どうでしょうか。人間って案外脆い生き物ですからね。この男みたいに‥」

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幽「その男は日々を悶々としてすごしていました。年齢は35才。毎日勤めたくもない会社に向かい、やりたくもない業務をやり、時々へまをして上役に怒られ、家に帰ってくれば昇進が遅いと文句ばっかり言う妻の愚痴を聞き、睡眠薬を飲んで寝る。こんな生活を長い間過ごしているのですよ」

令「こういう人間自体は結構いますよね。生活があるから会社辞められないみたいな。」

男「なんでこんな毎日をすごしているんだろうか‥畜生。解ってはいるんだ。全部あのBのやつが悪いんだ‥」

幽「男にも薔薇色というか、人生が輝いていた時期がありました。それは学生時代。彼には大学時代に、同じサークルに好きだった女性がいたのですよ。本当に身の焦がれるような、ね。二人は良い関係まで進行したのですが、悲しい事にライバルもいたのです。それがBでした。Bは男と同じサークルの人間だったのです。Bは顔の良さ的にも性格的にもそんなに男と変わりませんでしたが、男に比べて機転がききました。それによって、色々勝負を行った末に彼女はBと付き合うことになり、男は身をひかなければなりませんでした。皮肉な事に、彼女もBを本心から愛していたのですよ」

令「失恋ってやつですねえ」

幽「その彼女さんが、有名企業のご令嬢だったのが幸いしたのか、Bはそのままその有名企業に就職が決定したとB本人から男は聞きました。一方男はその彼女との失恋を引きずっていました。それと関係があるか解りませんが、就活も上手くいかずやりたくもない会社に入社するしかありませんでした。その後、体裁上今の妻である女性と結婚しましたが、昔の彼女を忘れる事が出来ませんでした。勿論男から彼女を奪ったBのことも。」

令「これはめんどくさいパターンですねぇ」

男「俺が今の妻にいつも怒られるのも、会社で上手くいかないのも、全部Bのせいだ。あのまま彼女と付き合い、あの会社に入れたら上手くやれたんだ‥畜生‥」

令「そんな考え方してたら、上手く行くこともいかないでしょうに」

幽「その男の考えは、悪い方、悪い方へ伸びていきました。そしてついに、Bに復讐するまでになりました。具体的には、Bを殺してしまうのです。

男「俺は犯罪は素人だ。だから計画は単純。Bの住所を調べ後をつけ、暗がりで待ち伏せキリで心臓を一刺。凶器は海に放り投げ、あとは家に帰ってなに食わぬ顔をして寝てしまう。警察は調べるだろうが、大学時代なんてはるか昔のこと。今のBと俺は何も関係がない。俺がBをここまで恨んでいるなんて、誰も知らない。それがこの計画の強みだ。警察がいくら調べようが、動機で俺が出ることはない。今のあいつの人間関係が調べられるかもしれないが、俺には関係がないことだ。よし。やるぞ。」

幽「男はそこで立ち上がり、ズボンをはいたところで、目が覚めたのです。そう。これは夢だったのですよ」

妻「あんた。いいかげん起きなさいよ。会社に遅刻するじゃないの!」

男「うるさいな。今起きるよ」

妻「ねえ。さっき寝言でやるとか言ってたけれど、何をするの?」

男「知るか。寝言なんか一々覚えてねえよ」

幽「昼間は仕事。夜は妻の愚痴を聞きながら眠る生活。それをしながら男は思うのです。

男「やっぱりこうなったのはBのせいだ。復讐しなくては。計画したことは‥キリは家のを使うか。下手に買うと怪しまれる。住所も調べないとな。忙しくなるぞ‥」

幽「ついにその決行の日が来ました。男はいつも通りに家を出て、会社の後Bを待ち伏せました。あとは計画通りにBが一人になるのを待ち、心臓を一刺。ああ、スッキリしたと男が思った瞬間に、男は妻の声で目が覚めました」

令「え、これも夢ですかい?」

妻「あんた。いいかげん起きなさいよ。会社に遅刻するじゃないの!」

男「うるさいな。今起きるよ」

妻「今日は機嫌がいいのね。変な夢でも見たんじゃないの?」

男「夢の内容なんか忘れちまったよ」

妻「そういえば、今朝キリを使おうとしたらなくなってたのよ‥確かここにしまったはずなんだけど‥あなた使った?」 

男「知るもんか」

幽「その後の日々は驚くほど以前と何もかわりませんでした。男は思いました。

男「確かにBは殺した。でもだからなんだ?俺の生活は何も変わらないじゃないか。相変わらず会社では上手くいかないし、妻は文句ばっかり言うし。あいつを殺す必要はなかったのかな‥」

幽「その時、男の背後でBの声がしました。

B「その通りさ。なぁ。なんで俺を殺した?」

男は飛び上がり、そこで妻の声で目を覚ましました」

令「ん?」

妻「あんた。いいかげん起きなさいよ。会社に遅刻するじゃないの!」

男「‥あれは、夢か?」

妻「どうしたの?最近何か変よ?医者に見てもらいなさいよ」

男「うーむ」

幽「男は医者に行きました。でも特に何も以上はありません。しかし、困った点が増えていきます。なんと、殺したBの声と姿がはっきりとしてきたのです。

B「なんで俺を殺した?絶対に許さない。お前も道連れにしてやる」

幽「そう言いながら、Bは男の首をしめはじめて‥あまりの激痛と、妻の声で男は目を覚ましました」

妻「あんた。いいかげん起きなさいよ。会社に遅刻するじゃないの!」

男「え‥夢?それにしてはやけにはっきりと‥」

妻「もの凄くうなされてたのよ。本当にどうしたのよ」

男「‥何でもないよ」

幽「Bの幽霊はその後いつも男に付きまとって来ました。いつも何かしら殺されかけるのですが、その度に目が覚めて夢だと認識する。そんな日々が続き、男の精神は参っていきました。結局、男は洗いざらい罪を告白し自首をしました。男は逮捕され、裁判の結果死刑を宣告されましたが、精神を疲労しきっていた男は何も感じませんでした。いつの間にか、Bの幽霊は居なくなっていました。しばらくの日数を刑務所で過ごし、ついに死刑執行の日がやってきて、首吊りの縄がかけられ、床が開く‥その瞬間、男は妻の声で目が覚めました」

妻「あんた。いいかげん起きなさいよ。会社に遅刻するじゃないの!」

男「‥夢か」

令「ええと‥」

幽「そう。これまでの事は夢だったのです。これまでと変わらない毎日を過ごし、変わらない妻を見ながら、変わらない日々の中で男は思うのです。

男「なんでこんな毎日をすごしているんだろうか‥畜生。解ってはいるんだ。全部あのBのやつが悪いんだ。昔は俺にも薔薇色の日々があった。Bのせいで、全てがおかしくなってしまった。憎いBのやつをこのままにしておいて良いのだろうか‥」

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幽「話は終わりです」

令「あの、質問いいっすか?」

幽「はい。私に答えられる事であれば」

令「大体あんたの話は訳がわかんねえ話が多いけど、今回の話は話自体がわかんねえ。そもそもどっから夢で、どっから現実の話なのかそれすらわかんねえし。なんなんですかこの話は。」

幽「そう言われましても‥この話はこうやって表現するしかないのですよ。それに、一応解る様に話したつもりなのですが」

令「結局、この話何がいいたいんですかい?」

幽「人を殺そうとしたものは、録な目にあわない、でしょうか」

Concrete
コメント怖い
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@むぅ

コメントありがとう。
話が会話形式で進む都合上、片方は相槌とかつっこみ役になるんですよね。

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