太郎さんは会社の飲み会終わりの帰宅途中に尿意を催し、公園脇の公衆トイレに入った。
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そこは、最寄りの駅から自宅までの丁度中間ほどにある場所で、夜中ともなると人の往来はほとんど無い。
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夏のジメジメとしたトイレの悪臭を我慢しながら、太郎さんは急いで用を足していた。
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その時、ふと後ろの個室が気になり振り返ると、先程は気づかなかったが、隅の個室が埋まっている。
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落ち着かない気持ちを抑えて、用を済ませると手を洗っている時だった。
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ぴりりりりり
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閉じている扉の向こうから電話の着信音が鳴り響く。
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ギョッとする太郎さんであったが、気を取り直して公衆トイレから出ていった。
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翌日、出社する為に駅へ向かっていると昨日の公衆トイレの付近が騒がしい。
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規制線が張られ警察官が出入りしている。
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野次馬の人に尋ねると、男子トイレから遺体が見つかったらしい。
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驚きはしたが急いでいたのでその場を後にし、出社した。
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昼休みにスマホでネット記事を調べてみると、公衆トイレの個室からめった刺しにされた遺体が見つかったとのこと。
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被害者の持ち物が一切なく身元不明であることや、司法解剖から犯行予想時刻が昨日の深夜ごろであることが書かれている。
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太郎さんは震える手でスマホの画面を消した。
作者帰り道の暗がり