これは僕が18の時の話です。
高校を卒業して社会人になった夏、高校の時の友人AとBを連れてとある心霊スポットに肝試しに行きました。
元々オカルトが好きな僕と好奇心旺盛なB。その2人と腐れ縁であるA。3人でとにかく面白いことをしよう、ということで向かったんです。
場所は県境の山道にあるトンネル。そのトンネルにはいくつか怪談話があり、地元でも有名な心霊スポットであることを事前に調べて向かいました。
深夜0時、僕の運転する車で男3人雑談をしながらその山道へ向かいました。
心霊スポットに向かうという怖さはあったものの見知った顔、興奮とワクワク、道中は馬鹿みたいにはしゃいでいました。
「んでさ、今から行くとこなんだけど、色んな怪談があるんだよ」
B「へぇ例えば?」
「トンネルを車で渡ろうとしたらトンネルの入口だか出口だかで女が飛び降りてきてボンネットに張り付く〜とか、トンネルを歩いて渡るとずっと女の声が着いてくる〜とか」
A「なんだそれwホラー映画の見すぎだろw」
B「それなwてか女が降ってきても怖くねえってのw」
「なんならナンパでもしちまうか?w」
A「美人ならな?ブスだったら轢いちまおうw」
そんな感じで話していると山道に入る直前にあるコンビニが見えてきて、いよいよ山道だなって3人でいっそう盛り上がりました。
お菓子や飲み物をそのコンビニで買ったあと再び車に戻り山道を道なりに進んでいくと例のトンネルが見えてきました。
トンネルが見えてきたのでそのまま車を進めようとしたのですが、残り2人が直前でビビって歩きにしようと言い出したのです。
B「あれじゃね?いきなりボンネットとか怖いとかじゃなくて危ねぇし先に歩いてみてこねえ?」
A「確かにな。帰りにでも通ればいいだろう」
そういう2人に半ば呆れながらも僕も賛同し、トンネルの付近に一時停止用に膨らんだところがあったのでそこに車を停めて3人で歩いてトンネルへ向かいました。
トンネルは割と長くて、L字?と言えばいいんでしょうか、トンネルの途中で右に曲がっていく造りになっていて、入口から出口が見えませんでした。
A「えっと、トンネルを歩くと後ろから女の声が着いてくる…だったよな?」
「あぁ、それであってるよ。ほんとに現れるのかな?」
B「へっ、そんなの現れるわけねえだろ。現れたら俺がナンパしてやるよw」
そういいBが入っていきます。Bについて行くような形で僕とAが入り、しばらく歩きました。
400メートルくらい歩いたところでAがとあることに気づきました。
A「うわっ、ここ圏外かよ」
「マジで?…ほんとに圏外じゃん」
Aと僕はお互いにスマホを見ながらブツブツ言っていました。しかしその間もBは妙にテンション高く、
B「ちょ、俺出口先に見てくるわw」
そう言いながらかなりの速度で走り出しました。
心霊スポットということで僕もAも内心ビビっていたので、あいつやべぇな。良く行けるよな。なんて話しながら2人でノロノロついて行きました。
そのままBだけが興奮気味に走っていき、Bの姿が見えなくなるところまで進んでいきました。
Bの姿が見えなくなったところで、あいつ先行き過ぎだよな、アホすぎwと馬鹿にしていると急に、
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shake
『うああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああぁぁ』
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とBの大絶叫が聞こえてきました。
声が聞こえたと思うと見えなくなった曲がり角くらいからBが叫びながら走ってくるのが見えます。
僕とAは叫び声で固まってしまい、こっちに走ってくるBを見ながら何か見たのか?何か出たのか?と震えました。
そうして僕とAの前、30メートルくらいの所までBが走ってきたので、
「おい!いきなり叫んでどうしたんだよ!」
A「何か見たのか?」
そう声を掛けたのですが、Bはそのまま僕とAを通り越して入口の方へ叫びながら走っていきます。
てっきり止まるものだと思っていた僕とAは余程やばいものを見た、もしくはいたんだ、と思い口々に叫びながらBの後を追いました。
僕とAが全力で走る中、僕達よりも長い距離を走っているはずのBに全く追いつける気配がないまま入口まで来ました。
そのまま3人とも後ろを振り返らないようにしながら車を目指しました。
先に車に着いたBはドアを開けようとガチャガチャ忙しなくしていました。追いついた僕が車のドアを開け、なだれ込むように3人車に入りました。
運転席に僕、後部座席にAとB。乗ったことを確認して僕はUターンし、急いでその場を離れました。
運転中も後ろを見てはいけない、と昔見た怪談話で得た知識を活かして、ひたすら前だけを見て運転しました。
そして、静寂が怖かったのでずっとBとAに話しかけていました。
「おい!B!何を見たんだ!何があった!?」
A「そうだ!何があった!話せよ!」
僕達がまくし立てるように話しかけるのですが、Bは答えません。
僕は確認出来てなかったのですが、どうやらBは後部座席でガクガク震えて黙り込んでいた様です。
A「おい!答えろっ…B!大丈夫か!?B!!!!」
突然Aの大声が聞こえました。
「どうした!?Bに何かあったのか!?」
A「すごい汗だ!それにものすごく冷たい!大丈夫か!?B!!!クソっ!早く!!来る時あったコンビニ目指せ!」
十数分車を走らせたくらいでようやく行きがけに寄ったコンビニが見えてきました。
僕が安堵しかけたその時、
「ウゴヴォウウェ…オエエエエエ!!!」
Bが嘔吐したのです。車内には嘔吐特有の酸っぱい臭いが充満しました。急いで窓を開け、
「B!!大丈夫か!?どうなってるA!!!」
A「わからない!!!Bが突然吐き出したんだ!!!早くコンビニに車停めろ!!!」
コンビニに着くなり車を停め、Aが後部座席のBを引きずり出し、コンビニ内に入っていきました。僕は急いで後部座席の状況を見て、吐血していないことを確認してから後を追いました。
コンビニに入ると既にAがトイレにBを押し込んでいるところでした。
入口からトイレまでが嘔吐で汚れていたので僕は店員に謝りに行きました。
「すみません。かくかくしかじかで、心霊スポットにいったら友人がおかしくなってしまいまして…」
「本当にすみません!掃除道具はありますか?責任もって掃除します!本当に申し訳ありません!」
そういい、道具を借りて掃除を始めました。
店員もとても優しい方だったみたいで、気にするな。私も手伝う。そう言って下さり、Aも加わって掃除を始めました。その間もトイレからは嘔吐する声、音が店内に響いていました。
掃除をしていて気づいたのですが、Bが嘔吐していたもの。普通嘔吐したものは食品であったり胃液であったりなはずなのですが、泥が混じっていたりゴミが混ざっていて僕達はそれを見て絶句してしまいました。
おおよそ人間の体から吐き出されるようなものではなかったのです。
『テテテテテン、テテテテテン』
突然僕のスマホが鳴りました。
誰だよ、と思いながら画面を見ると、
B
Bからの着信でした。
は?と思いながらトイレを見ます。Aが扉を閉めていたので姿は見えませんがずっと嘔吐音が聞こえています。
隣にいたAも画面を覗いてきて僕と同じようにトイレを見ています。
どう考えてもあの状況で電話をかけるなんて無理なはず。そう思いながら電話に出ました。
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shake
『お゛い゛!゛!゛な゛ん゛で゛置゛い゛て゛い゛く゛ん゛だ゛よ゛!゛!゛!゛』
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電話越しにBの泣き声とも叫び声とも取れる声が聞こえてきました。
「は?いや、なんの事だよ。ていうかお前大丈夫なのか?」
そう聞くも、
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shake
『な゛ん゛で゛俺゛を゛置゛い゛て゛帰゛っ゛た゛ん゛だ゛!゛!゛!゛』
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電話の奥で大絶叫、大号泣です。
何が何だか分からない僕が途方に暮れていると、
隣でAがスマホを取り話しかけます。
A「おい!B!今どこにいる!!!!」
僕がポカーンとしていると電話の奥で、
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shake
『ト゛ン゛ネ゛ル゛だ゛よ゛!゛!゛!゛!゛置゛い゛て゛い゛か゛な゛い゛で゛く゛れ゛よ゛!゛!゛!゛!゛!゛』
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どうやらBはまだトンネルにいるようです。
なんか他人事みたいですけど本当に僕は理解できなくて固まっていました。
するとAが、
A「今から向かう!ちょっと待ってろ!!!」
といい電話を切りました。
A「おい!B迎えに行くぞ!」
「いや、迎えに行くも何もBはそこに…」
A「気づかねえのか!?」
なんの事かさっぱりです。
A「音聞こえねえだろ!!!」
音?……そう思い、気づきました。
先程電話に出たあたりからトイレから音がしないんです。
店内に響いていた嘔吐音がしないんです。
僕は急いでトイレを開けました。
そこには誰もおらず、それどころかトイレがひとつも汚れていませんでした。
Aはもう車の中に入っており、
A「早く車を出せ!!!!Bがやばい!!!!」
そう言って何やらスマホで検索していました。
僕は来た道を引き返しトンネルに向かって走りました。
しばらく走るとトンネルが見えてきました。
トンネルの前ではBらしき人影が立っています。
車を停め駆け寄ると、
B「怖゛か゛っ゛た゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ご゛め゛ん゛な゛さ゛ぁ゛ぁ゛い゛」
Bがボロボロ泣いていました。
泣きじゃくるBを連れ車に戻り、コンビニまでひたすら走りました。運転中も、またBじゃないものを乗せているんじゃないか?と不安でいっぱいだったのですが、Aがずっと、
A「大丈夫。これはBだ。大丈夫。」
と言うのでそれを信じる他なく、走りました。
コンビニにつき、3人店内に入り飲み物を買ってイートインスペースで話し合いが始まりました。
序盤は泣きじゃくるBをひたすらなだめて、それからは事実確認です。
B曰く、あの時トンネル内を上機嫌で走っていたら後ろで誰かの叫び声を聞いたらしく、慌てて戻ってみたら僕とAの2人が叫びながらトンネルの入口に向かって走っているのが見えたみたいです。急いで追いかけたもののとんでもなく速く追いつけないまま車が出ていってしまった。スマホで電話をかけようにも圏外で繋がらずパニックになって泣いていた。そう言っていました。
電話が繋がったのは泣きながら何度も掛けていたらやっと繋がったらしいです。
とりあえず帰路につき、その後は特にこれといったことは無いのですが、1つ。
数日後にAから教えてもらったことがあります。
どうして迎えに行ったBが大丈夫だと言ったのか。
Aが言うには、最初コンビニに向かった時、後部座席で吐いているBに触れた時、ものすごく冷たかった。それも氷とかの冷たさじゃなくとにかく気持ち悪い冷たさ。を感じて不思議に思っていた。
迎えに行った時Bに触れると普通に人間の体温をしていた。だから大丈夫だと判断したとの事。
A「あの時車で検索してたのはお祓いの仕方。もし取り付いていたら簡易的に祓う必要があると思ったから。もちろん祓い方もわからなかったけど…」
Bはそれからも普通に生活していて特に変なこととかはないので多分大丈夫なんだと思います。
ただ、1度だけ、帰路についてBの家に下ろした時、
Bの声ではない声で、
『ハハッ』
そう聞こえた気がしました。きっと気の所為だったんだと思います。僕も気が動転していたので。
後から色んな人にそのトンネルについて聞いて回ったのですが、僕が体験したような怪談はなく、どんなに探してもそのような話は見つかりませんでした。
あれが何だったのかはわからずじまいです。
ちなみに僕の車は泥だらけ(ゴミあり)になったのですぐクリーニングを頼みました。
以上が僕が体験した話です。
作者あやかし
実話なのですが所々うろ覚え(会話等)です。
話自体は全て偽りありませんのでご安心ください。