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中編3
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エアーベッド

万年床に別れを告げようと俺はベッドを探していた。

色々探しているとネット通販で『エアーベッド9,800円、収納持ち運びに便利、雲の上の寝心地』と言うキャッチコピーを見つけた。

腰痛持ちの俺にぴったりだと思った。

正直普通のベッドで1万切る値段はそうそう無かった。

すぐに注文し、ワクワクしながら配達を待つ。

一週間程で無事商品が届いた。早速開けてみる、コイルが張り巡らされた少し厚みのあるビニール製のベッド。

スイッチを入れるとブィーンと大型掃除機の様なけたたましい音を立てて膨らんで行った。

簡単そうだったので、説明書等は端から読まなかった。

ある程度膨らんだのでスイッチを切り、寝心地を試そうとベッドに乗る。

ギュッギュッと、パンパンに膨らんだ時の浮き輪を踏んだ

様な音が出る。

雲の上、は分からないが確かにふわふわして気持ちがいい。

俺はうつ伏せに寝転がってそのまま寝てしまった。

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…夢を見た、何処かのホテル街を俺の彼女と見知らぬ男が親しげに歩いている。

最近彼女にねだられて買ったお気に入りのワンピースを着ていた。

俺は何故か冷静に後を付けた、案の定2人はホテルに消えて行った。そこで目が覚めた。

新しく買ったベッドの初夢がこれかよ…嫌な気分の目覚めにムカつきながらも、たかが夢だと思う事にした。

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夕方彼女から電話があり、今から行く♪と言われ、ベッドの事は秘密にしていたので夜を楽しみにしていた。

チャイムが鳴り彼女を迎え入れようとドアを開けた俺は一瞬固まった。

彼女の服装が夢で見たワンピースを着ていたからだ。

この服は彼女が特別な日にしか着ない、と買った時に言っていたからだ。

俺は「何でその服着てるの?」と、つい聞いてしまった。

彼女は「今日ちょっと凄く久しぶりに会う友達がいて、お洒落したかったから着ちゃった」

と答えてくれた。

「男だよね、俺昼間ホテル街歩いてるの見たんだけど」と、咄嗟に言ってしまった。

言った後で夢だったよな、俺何言ってんだと思い彼女に謝ろうとすると「なーんだ、バレてたんだ。そうだよ、貴方の方が遊び。もうちょっと遊んであげようと思ってたのに、こそこそ後付けるとかマジキモいんだけど。まぁ、いいわ。そう言う事だから、もういいわよね?サヨナラ♪」と言い捨てるとそのまま出て行ってしまった。

俺は暫く、何が起こったのか分からず立ち尽くした。

だって、あれは夢だろ?何なんだ、俺はずっと家にいたじゃないか。俺は部屋に戻りベッドに腰かけた、ギュッと音が鳴る。

ふと床に置いたままにしていた説明書が目に入る。

使用上の注意『尖った物が近くにあると破損のおそれがあります。ベッドの上で飛び跳ねたり、強い衝撃を与えないで下さい。うつ伏せでの就寝禁止』

は?最後の一文に目を疑った、うつ伏せ禁止って何だよ。聞いた事ないぞ。

俺は子供の頃からうつ伏せで寝るのが癖になっている。いや、そんな事はどうでもいい、意味が分からない。うつ伏せで寝たから俺は変な夢を見て、彼女に振られたのか?

うつ伏せで寝ると予知夢を見るのか?

そんなバカな事あってたまるか。ふざけるな、今夜もう一度試してやる。

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…夢を見た。あの男と彼女が腕を組んで歩いている。

俺の右手にはナイフが握られていた。

現実な筈は無い、これは夢なのだから…俺は男の背中に向かって全速力でぶつかって行った。彼女が悲鳴を上げる…そこで目が覚めた。

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起き上がるとやはりベッドの上にいた、右手に血塗れのナイフを握って。

注意書きは守らないとダメだなぁ、もう一眠りするか…だってこれは夢なのだから。

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