中編3
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私には三つ年上の姉がいる。

居た、と言う方が正しいのだろうか?もう何年も前から消息不明だ…

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私が母のお腹にいた頃、医者から双子だと言われていた。

妊娠8ヶ月になる頃には三子かも知れない、とまで言われ母はお腹が小さ過ぎると強制入院させられる事になった。

当時まだ2歳だった姉は父の実家に預けられる事になった。

幼かった姉は、妹が産まれるせいで自分は捨てられたのだと思い込んだらしい。

母は入院中、数メートル先のトイレにすら行かせて貰えず、完全寝たきりの状態で私が産まれるまで無駄に入院させられた。

数ヶ月後産まれたのは双子どころか、丸々と太らされた女の子一人。

母は大学病院だから信頼してたのに、本当に無駄な事させられたと今だに私に文句を言ってくる。

この誤診のお陰で姉の人生すら変わってしまうなんて、誰一人思っていなかった事だろう…

3歳の女の子と言うだけで可愛い盛りなのだろうが、それよりも小さな赤ちゃんが現れれば大人達がどちらを構うかなんて決まっている。

姉は妹が大嫌いになっていった…

大きくなるにつれ姉妹喧嘩も増えていき、いつも姉が勝ち妹がギャン泣きして終わりの繰り返し。

両親も祖母も妹の味方、祖母は妹が一番の孫と言って特に可愛がっていた。

姉は妹に「お前なんか殺してやる!」と言ってしまう。

妹も「やれるもんならやってみろ」と強気に言い返してしまった。

姉は母の鏡台から剃刀を取り出すと、妹の手首を躊躇無く切り裂いた。

血がポタリと落ちる、力が弱かったのか、やはり少し加減したのかは分からないが、切り傷程度の浅い傷だった。

その行為だけで妹には充分過ぎる程の恐怖を与えた。

絆創膏で隠せる大きさだったので、姉は「親に言ったら今度こそ殺すからな」と妹を脅し部屋に入っていった。

妹は恐怖で泣き続けるも、両親には姉にされた事は言えなかった。

それから何年も姉妹は仲良くなる事は無かったが、姉が高校2年になる頃父が病気で急死する。

その事がきっかけかは分からないが、付き物が取れたかのように姉が優しくなっていった。

妹は早過ぎる父の死を受け入れられず、何日も泣いて過ごしたが、姉が泣いている所は一度も見る事は無かった。

そんな姉が自殺未遂をしたのは高校を卒業した直後だった。

妹にしたのとは比べ物にならない位に手首を深く切っていた。

幸い母がすぐに発見して一命は取り留めた。

自殺理由は決して言おうとはしなかったので未だに分からない。

数年後、妊娠がきっかけで職場で知り合った男性と結婚。姉は22歳で母になった。

順調に幸せになってくれると思っていたが、その3年後に二人目を出産、その頃から旦那のDVが目立つ様になってきた。

姉は離婚を決意すると、二人の子供と一緒に小さなアパートに越して行った。

その頃から姉は夜のお店で働くようになった。

小さな子供二人で留守番をさせ、ご飯はコンビニで買ってきた物を適当に食べさせ、昼間は寝ているから子供と接する時間なんて殆ど無く、全てが荒れ果てていった。

子育てに行き詰まった姉は育児放棄し、元旦那に子供を押し付け姿を消した。

幼い頃、妹が出来たから捨てられたと勘違いをし両親からの愛情を貰えなかったと思い込んでいた姉は、自分は必ず愛情のある家庭を作ってやると結婚前に言っていた。

今、姉は何処で何をしているのだろうか?

再婚でもして少しは幸せになっているのだろうか?

それとももう生きてはいないのかも知れない…

姉が消えてからもう10年が経つが、連絡も無ければ消息も掴めない。

私が産まれなかったら姉は幸せだったのかもしれない。

せめて双子という誤診が無かったら…

姉が産んだ子供達も、私が産まれていなかったらきっと両親から愛されて幸せに暮らせたのだろう。

私が産まれたせいで不幸になった人が沢山いる、私は何の為に産まれてきたのだろうか?

姉は一生私を恨み続けるのだろう。姉の人生を変えてしまった私をきっと許してくれない。

何故なら、今年に入ってから毎日の様に姉が夢に出て来て、満面の笑みで剃刀を握って立っているのだから…

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@ともすけ2 殿、お帰りをずっと待っておりましたぞ(´っω・`。)
お名前を見て、ん?と思い、コメント読まさせて頂いて本物だとテンション上がってしまいました( ˙꒳​˙)✧
作品まで読んで頂いてありがとうございます♪
ともすけ2殿の作品、書いて頂けるならいつまでも待ちますので、またココでお会い出来るのを楽しみさせて頂きます(`・ω・´ゞ

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むぅさん、大変ご無沙汰しておりました。
ともすけ改め、ともすけ2です!
退会後、また怖話に帰って来たのですが忙しい日々続きでなかなか作品を出せずすみません。

むぅさんの作品、読ませていただきました。
怖くもあり、また悲しいと思わされる話ですね。。
原因元は病院の誤診…
今も昔も病院の大袈裟な誤診はあるものですね。
なのにそれを認めようとしない。
それが家庭を壊すことになってしまってもと思うと怒りを通り越しますね。
お姉さんの気持ちもわかりますが、話を読んでて思いましたが心から恨んでるとかは無いと思いますよ(^^)
どんな形かはわかりませんが、お父さんを失った後に優しくなったというのには何かしらの変化が芽生えたのだと思います。
って久しぶりで上手いコメント出来ずにすみません。
とにかく、家族、姉妹の絆は簡単には壊れないと私は思いますよ(^^)
しかしながら当時の私の作品よりも伝わるものがあり、読みやすかったです!
ありがとうございます!
しばらくは私も作品は書けませんが、落ち着いた時に少しずつ書ければと思います!

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