以前、夫の仕事で東北にいた時、同じ社宅に、霊感があり霊と話すことができる奥さんがいた。
視えることを大っぴらにしているわけではないので、最初は知らなかったが、心霊現象に悩むママ友の話を聞いているときに、その奥さんが言った言葉で知った。
「その霊と話してみようか?」
これは以前投稿した「心霊写真 (注1)」のその後の話。
心霊写真を撮ったことがきっかけで、霊が視えるようになった男の子に集まってくる霊の存在に悩むママ友に、同じ社宅に住む霊感のある奥さんが言ったのが上記の言葉。
写真に写っていたのは、生前その社宅に関係があった男性だった。
霊感のある奥さんが言うには、その男は写真には偶然写り込んだだけで、悪いものではないそうだ。でも視えるようになってしまった男の子のもとには多くの霊が集まるようになり、幼い男の子はその対処ができなかった。
結局ママ友はその地域の有名な霊能者に相談し、一応は解決した。
その辺りのことは、ママ友があまり話したがらない様子だったので詳しくはわからない。だが、ママ友とその息子さんは霊能者にかなりキツいことを言われたようだった。
詳しく話を聞いたらしい、霊感のある奥さんは、
「霊障に悩み困り果てた末に相談にきた人を罵倒するなんて、私はその霊能者のこと、ちょっと信じられない。しかも相手は子供なのに…」
そう言った。
まあ、色々視える霊能者から見れば、必要以上に怖がりかえって状況を悪化させている人に対して怒りがわくのかもしれない。
でもね、罵倒する前に想像してみてほしい。
霊感ゼロで、そういったモノとは無縁の生活を送っていたのに突然、愛する我が子が眼に見えないモノを視るようになったら…。突然、日本語ではない言葉を話したら…。
パニックになってもおかしくないと思いませんか?
私なら全力で子供の視てるものを否定するかもしれない。実際、今住んでいる家に引っ越した当初、幼い娘が壁から白い手が出てきて捕まりそうになったと言った時、そんなことあるわけない、見間違いだと娘に言い聞かせた過去がある。
だから、私は突然の霊現象に過剰反応してしまったママ友の気持ちがわかるような気がする。
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霊能者の仕事って何なのだろう?
訪れる人が抱える霊現象を解決することだろうか。
霊視によって視えたモノ…それが相談者の不利益になることだったとしたら…。霊能者は事実をそのまま伝えるべきなのだろうか?
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交通事故で娘を失ったある父親の話。(注2)
その父親は霊能者に、死んだ娘がまとわりついている。父親が自分に気づいてくれないことを不思議に思っていると言われたらしい。
その後、父親は行方不明となりその地域にある霊山へと向かう山道で遺体となって発見された。
一人、黄泉路を行くのが淋しい娘が父親を道連れにしたのか、それとも父親が後を追ったのか…。
そのどちらでもない、分かち難く離れ難い父娘の絆がもたらした結末なのか…。
父親に、死んだ娘がまとわりついていると言った霊能者は、どこまで視たのだろうか?
死んで尚、父親のそばから離れない娘。本人は自分が死んだことを理解していない。父親はなぜ自分を無視するのか…? 何故気づいてくれないの?
愛する娘を失って悲しみの淵にいる父親は、死んだ娘が側にいることを知ってどう思っただろうか?
娘に語りかけることも、抱きしめることもできない。
この父娘に霊能者は何をしてあげたのだろう…
視たものを視たままに伝えるのは正しかったのだろうか。
もし霊能者が父親に、娘は成仏しているから大丈夫。
そう伝えてたらどうなんだろう。父親にそう言いつつ、影で娘が成仏できるよう手助けしてあげてたら結末は変わってただろうか。
実際はとても難しいことなんだろう。そんなことしても霊能者の功績にはならないし、金銭も絡むことだろうから。
霊能者にも全てが視えるわけでもないのだろうしね。
誰の責任でもない話。
でも失われた命は帰らない。
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霊能者の側にいると、霊感が強くなって今まで視えなかったモノが視えるようになることもあるようだ。
お世話になった霊能者の手伝いをしていた女性は、手伝いをするようになってから、黒い人影を見たりすることが多くなったという。
霊能者の送迎をしているときに、霊に憑かれて祓ってもらうこともあったようだった。
彼女は言う。
「一度、霊に憑かれた時にそれが疵になって、色々感じるようになったんだと思う」
その後、彼女と霊能者の間で金銭トラブルが発生し、今は別の霊能者を探しだしてその人の側にいる。
霊能者と言う肩書きが好きなのか、側にいることで自身の霊感を強くしたいだけなのか…。
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別な女性は、ある人物(故人)から祟られ浄霊してもらいつつ、自分でも祓えるように訓練した。
その女性は何かに憑かれると、般若心経の経典で身体を拭き払う。そうすると霊を祓うことができるようだ。
「霊能力が高くなったから、もう大丈夫」
なんだそうだ。
その女性は自分が祟られていることを認めないどころか、祟っている故人から護られていると話す。
霊能者はその女性に真実を話すことを諦めている。
「自分で祓うことができるから、もう霊能者はいらない」
これからもこの憑かれやすい体質の女性(本人はそう信じてる。でも実際は特定の人物から祟られているだけ)は、高くなった霊能力で祟りを祓いながら生きていくのだろう。
でも真実から眼を逸らしたままでは終わらない。
しかし聞く耳をもたない彼女の眼を開く術はない。
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髪の毛が伸びる人形
知人がこの人形を二人の霊能者にみてもらった。
一人はこの世に生まれてこなかったその知人の姉妹が人形に憑いていると言った。
もう一人は知人とは無関係の白人の霊が憑いていると言った。
さて、どちらが正しいのだろうか。
どちらの霊能者も正しいのかもしれないし、そうでないかもしれない。
霊能者自身の主観も入るだろうしね。霊能力は万能ではないだろうから。だから相談を受けるときに相手から情報収集するのかもしれない。
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最後に、私はこれまでに二人の霊能者と会ったことがある。自分の家でおこる怪異の解決を求めてのことだったが、結局それは叶わなかった。
まあ、死に至る怪異ではないので、いつか家を出て行くことを目標に、日常を送っている。
人は思うより案外しぶとく強い。
怪異に悲鳴をあげても、己の軸を曲げることなく立ち上がれ。
この世に生を受けた瞬間から、死へと歩を進める私たち。だけど今は生きている。この世では生きてる者が一番強い。
作者國丸
久しぶりの投稿です。久しぶりなのに物語の投稿じゃないのが自分で残念です。
ブログの整理をしていて思うことを綴ってみました。
ここで話すことでもないような気もしますが…
もし不快に思う方がいたらごめんなさい。
話の中の注1と2は怖話に投稿した作品の話です。
注1 心霊写真
https://kowabana.jp/stories/33474
注2 父娘
https://kowabana.jp/stories/33402