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或いは、その意識こそ呪いであるか

長編12
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或いは、その意識こそ呪いであるか

「人間て、案外みんな自意識過剰なんですよ」

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コークハイに顔を酔わせ、饒舌に後輩は言う。

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「ほら、あるじゃないすか。中学とか高校とかで、先生がテスト返すのに生徒一人ひとり名前読んで取りに来させるときとか、部活中に顧問の先生がちょっと離れたとこでふざけてる奴を注意しようと名前呼ぶときとか、野田~!って、言ってるのに近くの小田君が反応しちゃったり、堀~!って、言ってるのに森さんがびくってしちゃったり……

普通に違うって分かってるのに、似た名前を呼ばれているだけで、もしかして自分の名前呼ばれてるんじゃないかって、勘違いするような、そういう現象。

まあ、似た名前の人とかじゃなくても、先輩みたいによくいる苗字の人はもっと直接ドキッてさせられるタイミングあるんじゃないですか、例えば、病院の待合室とか。

分かってても体が反応しちゃうんすよねー。それだけ、人間って自意識過剰なんですよ」

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けらけらと、軽い笑みを浮かべて喋る後輩。アルコールも手伝ってか、大型のトカゲのように片側の口角が上がっている。

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「しかもネット上の自分の名前でだって、全く同じ現象が起こる。いやむしろ、自身が心を込めて付けた名前であるなら…、もしくは、現実の世界よりネットに居場所をもっているのなら、本名以上に敏感に反応してしまうでしょう。

僕のように、動画投稿で生活しているような奴とか、或いは、先輩のような、ねぇ?」

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年上の俺を敬いもせず、顔を向けるだけで毒を吐く不快な後輩。俺は、こいつのことがずっと嫌いだった。

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「あー本当うっざ。先輩、絶対彼女いなかったでしょ?まあモテる訳ないですよねw顔面だけじゃなく性格まで歪みまくってますからねえwさっきからずっと死にかけの魚みたいに口パクパクさせていますけど、キモすぎて吐き気ヤバいんで、さっさとどっか消えてくれませんか?」

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こいつといるとイライラする。

だが俺はこいつがこの店で一人飲んでいるのを見て、その正面に座った。他に席が空いていようとも、嫌がられようとも、関係ない。

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「僕は何も先輩にしてないって言ってますよね?全部先輩の自意識過剰さがそう思わせただけの、自爆じゃないですか」

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何が自爆だ。俺はこいつの悪意を目の当たりにしたんだ。全部こいつのせいだ。こいつのせいで俺は恥をかかされた。こいつさえいなければ、俺はあんなに周りから白い眼を向けられることもなかった。

俺の世界が敵だらけになったのは、みんながこいつの信者になったせいだ。俺は何も間違っちゃいない。間違っているのはこいつだ、こいつの信者共だ。俺はずっと正しいことを言っていただけだった。絶対に、俺は悪くない。

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「前々から思ってましたけど、その癖なんなんですか。誰かから何か言われる度、言い返せない代わりに口だけぱくぱくぱくぱく……

言いたいことがあるなら何か言えばいいじゃないですか。…って無理かーwチキンな先輩にはできっこないですよねwだからあんなクソアンチなんかに身を落としているんですもんねw」

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俺は悪くない。この世の中に間違った奴らが多すぎるだけだ。

正しい日本語さえ使えやしない、クソガキのくせにでかい口を叩く、直ぐにパクリをする、誰も求めていない自慢話ばかりする、俺を苛立たせる、つまらないつまらないつまらないつまらない……

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「直ぐに否定から入る典型的なクソアンチ。

鶏肉がおいしいと言えば、牛農家や豚農家を否定する最低野郎だとか、言ってもいない歪曲で他人を悪人に仕立て上げようとする。

一瞬単語に刀が出てきただけで、その作品をパクリ呼ばわり。

雑談で夜中にコンビニへ行ったと言えば、店員の迷惑を考えろとキレだす。

何も言うことが思いつかなければ、つまらないと叫ぶ。

急に自分語りを始め、マウントを取ろうとする。

些細な言い間違い一つで、関係の無いファンごとレベルの低い認定……

近頃よく目についた邪魔なコメント、これ全部先輩だったんですね。

僕が動画サイトに投稿しているのを知ってから、過去の動画にもアンチコメントを書き続けて、しかもそのほとんど全部が虚偽のこじつけ。

先輩、日本語読めなんですか?どう考えても伝えている内容理解できてないですよねぇ。

そんなにも羨ましかったんですか?

新入りの癖に偉そうなこと言って会社を辞めた後輩が、ネット上では有名な動画配信者で、対して自分はいつまでも下っ端会社員としてこき使われる毎日。あーかっこ悪―w

自分が書き込んだアンチコメントは無視され続けて、だから余計にあることないこと書き重ねて、先輩無能なくせにプライドだけは無駄に高いですもんね?

僕が会社辞めた理由も、仕事が遅いくせに年上だというだけで威張り散らして、その上自分の失敗は全部後輩のせいにし続ける、誰かさんのせいでしたからね。

会社の上の人間は僕のことを引き留めたんですよ?僕は先輩と違って優秀でしたし、実際一年ちょっとで業績は前任者の倍でしたから。

でも上司が先輩のような人格破綻者なんて死ぬほど嫌だったんで、やりたい事をしに会社辞めさせてもらいましたw

ああ、ちなみに先輩は僕が会社辞めてから大変だったでしょう?

折角の将来有望な新人がいなくなった理由が、先輩だったなんてことは、みんな知っていましたから。

僕は辞めるずっと前から、愚痴も相談もいろんな人にしていたんですよ。

だから会社に先輩の居場所なんてある筈もないですし、下についていた僕がフォローしていた無能さ加減も、全部露呈してしまったでしょうからね」

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そうだ、全部全部こいつのせいだ。

こいつのせいで俺は会社中から白い目で見られるようになった。こいつが会社さえ辞めなければ、あとちょっとでこいつの業績で昇進だって出来たはずだった。

こいつがずっと俺の下で働いてさえいれば、こいつが会社を辞めなんてしなければ……

なにもかも、こいつのせいで俺の人生は狂わされたんだ。

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「先輩?なんで先輩が無能なのか教えてあげましょうか?先輩のそのゴミみたいなプライドのせいですよ」

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五月蠅い、俺は無能じゃない。俺はゴミじゃない。年下の癖に上から目線で喋るな。鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい鬱陶しい……

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「先輩、いつも正論を言われるとチキン丸出しに何も声出せなくなりますけど、後から影でよく言ってましたよね?『俺のせいじゃない』『あの後輩が無能なせいで』『あの客が馬鹿だから悪いんだ』って……

他人のせいにし続けるから、自分は何も反省しないし改善しようともしない。

だから間違ったことをしていてもそのままですし、プライドが邪魔して他人からのアドバイスにさえ聞く耳を持たない。それじゃあ成長する訳無いですよ。

因果応報、悪因悪果、自業自得、身から出た錆…つまり、そういうことなんです。

まあ、今さら先輩にそんなこと言ったって、意味ないですけどねぇ……」

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そう言って、後輩は気持ち悪いにやにや笑いでぬるい酒を飲み切った。

自業自得だと?俺が悪いっていうのか?そんな筈は無い。俺よりも年下の癖に自分こそが正しいと言わんばかりの態度が気に食わない。俺の下の癖に俺より目立つこいつが気にいらない。周りにちやほやされるこいつが気にいらない。

俺は悪くない、全部こいつのせいだ、なのに、なのに、なのに、なのに、気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない気に食わない……

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「でも、まさかあんな思い付きのアンチ対策がここまで効果あるなんて僕もびっくりですよ」

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余裕ぶった顔が鬱陶しい。少し顔が良いだけで、少し仕事が出来るだけで、少し人当たりが良いだけで、どいつもこいつもこいつに騙されている。こいつはクズだ。こいつはゴミだ。こいつなんかより俺の方が正しいに決まっているんだ。俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない……

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「新しい動画のエンディングに、ぼそぼそとしたノイズのような音を入れたのですが、しつこいアンチコメする奴のアカウント、ああ先輩のアカウントでしたね。正義の代行者を気取った寒い名前でしたが、そいつの名前の母音に似せた音の連続と、適当に不気味な声っぽい音を流したんです。

言葉でもないので何言っているかなんて当然わかる筈もありませんし、呪詛にもなっちゃいませんでした。

でも、自意識過剰な先輩はそれが自分に向けられた呪いだと思い込んだ。

言葉にもなっていない音から自分の名前を勝手に連想して、それに続く音も自分の死を願う呪詛だと更に連想を重ねて、そして…その思い込みに囚われた。

サブリミナルに気持ち悪がって、近寄らなくなってくれればよかったんですが、まさかあんなことになるなんて……」

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違う、違う違う違う違う違う違う違う違う!

あれは俺に対する悪意のメッセージだった!ぼそぼそと、間違いなく俺に対する呪いの言葉を吐いていた。間違いなく俺の名前を呼んで、間違いなくお前はもうすぐ死ぬお前はもうすぐ死ぬと、気持ちの悪い予言を繰り返していた。俺にはそれが分かった。こいつが俺を殺そうとしていた!俺は何もしていないのに、こいつは善良な視聴者である俺を呪い殺そうとしていた!!!

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「滑稽でしたよ。コメント欄でこいつは俺を呪い殺そうとしていると騒ぎ立てる、いつもの五月蠅いアンチ。エンディングのBGMに俺の名前が紛れ込んでいる、俺に対して呪詛を吐いていると、言葉でも無いただの音の連続なのに。一体どんだけ自意識過剰なんですかw」

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違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!

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「当然、そんな幻聴を真に受ける視聴者なんて誰もいません。そもそも、執拗なアンチアカウントなんて誰からも相手にされませんし、先輩に味方なんている筈はありません。なのに寒い被害妄想を騒ぎ続けて……そして、消えた……」

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違う!俺は間違ったことは言っちゃいなかった!こいつの信者共が寄ってたかって俺の叫びをかき消した!全員でグルになって俺のことを妄言者だと決めつけた!

あの日から俺の周りの全部が敵になった!俺が誰かの間違いを正しても、間違ったそいつの味方にばかり付く!街を歩いてもみんな俺に蔑んだ眼を向ける!会社に居ても腫れ物に触れるように扱いやがる!

全部が敵だ!俺を認めない世の中なんてクソだ!

全部全部お前のせいだ!お前のせいで俺に味方は居なくなった!お前が俺に呪いをかけたから俺は不幸になったんだ!お前の呪いのせいで俺は世界から否定された。この世界に消されたんだ!お前のせいで俺は消えたんだ!!!

そうだ……消えた…消えた…消えたんだ、ああ…消えた、消えた、消え…きぇ………ぇ……ぇ…………、

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

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「アハハハハハハ!そうっ!消えた!消えたんだ!最初はあまりの荒らしっぷりにアカウントが停止されたのかと思った。でも、そうじゃなかった。

死んだ。死んだんだ。死んだから消えたんだ!」

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消えた。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。

頭がつぶれて死んだ。ぐちゃぐちゃになって死んだ。脳髄が散らばるのをどうしようもできずに死んだ。俺は死んだ。死んだんだ!

全部こいつのせいだ。全部こいつが悪いんだ。偶然なんかじゃない、不幸な事故なんかじゃない、こいつのせいで俺は死んだんだ!俺はこいつに呪い殺されたんだ!こいつさえいなければ俺は死ななかったんだ!!!

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「あんたは死んだんだよ。だから消えた。だからどこにも居なくなった。クソアンチが消えて僕の動画は平和になった。みんな喜んだ。不快な思いをする奴は誰一人居なくなった!

なのに、なのに……

なんで幽霊になって僕の前に現れたんだよ……

もういい加減居なくなれよ!地縛霊だか何だか知らねえけどっ、僕の目の前から消えてなくなれよ!」

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五月蠅い。黙れこの人殺しが!俺を呪いやがって!俺を呪い殺しやがって!なんで俺が死ななくちゃいけなかったんだ!なんで俺が苦しまなきゃいけなかったんだ!死ね!お前が死ね!死ね!死ね!死ね死ね死ねしねしねしねしねしねしねしねしね……

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「うざいんだよ!キモいんだよ!その目が!顔が!パクパクうるさい口が!

喋られもしないくせに、いつまでもいつまでも、パクパク、パクパク、パクパクと…!

何が言いたいんだよ!しつこく付きまといやがって!」

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しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね。

人殺し、人殺し、生きている価値なんてない、ちょっと人気者だからって調子こいてんじゃねえ。俺よりちやほやされてんじゃねえ。

しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね。

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「ああ分かってるよ…、死ねつってんだろ?俺の目の前に現れた時からずっと、死ね死ねって言っているんだろ?

ふざけんなよ…?あんたがあの動画で呪われていると思い込んだのは、全部あんたの勘違いじゃないか!

仕返しのつもりか?復讐のつもりか?

元々あんたがあんなコメントをするようになったせいで流されるようになった害虫除けだった、さっさとブラウザバックしていれば聞くこともなかった筈だ、なのにあんたはそれを聞きに動画を開いた。何度も、何度も、自分の意志でその自意識に呪われ続けた。そして死んだ!どうやって死んだかは知らないが無関係ないことで死んだんだ!

勝手に動画を開いて、勝手に暴言吐いて、勝手に呪われて、勝手に死んだくせに!全部人のせいにして被害者ぶってんじゃねえよ!僕の目の前に現れるな!うざったらしく口を開くな!

しつこく粘着質に目の前へ現れやがって!動画を撮っていても、誰かといても、個室に居ようがトイレに居ようが寝ていようが顔を背けようが、パクパク、パクパク、死ね死ね死ね死ね、ゲームのバクみたいにいつまでも居続けやがって!!!!」

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しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね

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「ああああああああああああああああああああ!

消えろ!消えろよ!死んでからも人に迷惑かけてるんじゃねえよ!亡霊になって現れてるんじゃねえよ!自己顕示欲を満たすために周りを巻き込むなよっ!!!」

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しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね

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「消えろ!いいから消えろ!さっさと消えろ!今すぐ消えろ!消えろ!消えろ!消えろよおおお!!!

消えろ消えろきえろきえろきえろああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

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目の前の後輩が発狂する。

頭を掻きむしり、上半身をバタつかせ、開いた口は耐えきれず端から裂けて、血を流す両目は落ち窪んでいる。

ははははははは、死ぬ。こいつは死ぬ。もう一度死ぬんだ。

暴れまわり、のたうち回り、絶叫し続けても発狂は止まらない。

俺は嗤う。

後輩の叫び声は、もはや家畜の断末魔と相違なかった。

俺を見下した報いだ。

俺よりも周りに認められた報いだ。

椅子から転げ落ちたゴミ虫を見下し、歩み寄る。

そして片足を上げ、叫ぶ後輩の顔面を……思い切り踏み潰した。

ぐしゃりと床には赤黒い花が咲き、動かなくなった体は墨色のドロドロとした液体へとなり替わった。

静寂、腐臭、そして…ねばつく足裏の感覚。

かつて飲食店であった店内に、隙間風が吹く。

ひび割れたガラスに、埃の積もる散らばった椅子。

蜘蛛の巣が張る蛍光灯は、とうに生者を照らさなくなっていた。

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明日になったら、また……

…ははははは。

ああ、何度、何度殺しても、この愉悦は堪らない。

無音の部屋でねちゃりという音が一つして、俺は嗤いながら、ドロドロに溶けた。

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