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短編2
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噂の怪物

とある里山の集落で聞いた話。

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その集落には、五つの農業用溜池があった。雨の少ないその土地では、昔から溜池の水をうまく管理することで、農地全体に必要な水を回しているのだという。

そのすべての溜池に、蛇女なる妖怪が出るのだそうだ。

蛇女は全身を鱗に覆われ、下半身は蛇のそれだという。長い髪を身体中にまとわせ、池の中心からゆっくりと現れる。そして、そこだけ異様に赤い唇を歪めながら「わたし、きれい?」と訊いてくる。

溜池は、水が必要な農繁期以外は立ち寄る人も稀なのだが、それでも時折釣り人などが訪れる。そういった人々が、二、三年に一度「蛇女を見た」と大騒ぎするのだという。

五つの溜池すべてで目撃されており、蛇女が一体なのか複数いるのかはわからない。ただ、目撃証言は毎回ほぼ一致するそうだ。

一度神主を呼んで溜池全体のお祓いをしてもらったこともあった。しかし今でも時々、蛇女の名前は集落を騒がしているのだという。

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なんとも、どこかで聞いたような話の詰め合わせだな。

私は口には出さないものの、そう思った。

話はこれで終わりかと思いきや、話してくれた男性はまだなんだか言い足りなさそうにチラチラとこちらを見てくる。

「もしや、後日談などありますか?」

そう問うと、男性は白髪交じりの髪を撫で付けるように何度も手を動かし、迷いながら切り出した。

「その、あんたはよそから来た人だか言うけどな。その、蛇女の話な。元は、俺の作り話なんだ」

「はぁ?」

「まだ若かった頃、当時のオカルトブームに乗りたくてな。それで、蛇女なんて話をでっち上げて噂を流したんだ。今話した通りの内容でな。そしたら、思いの外それが広がっちまってなぁ。あれは俺の作り話だと言っても、もう誰にも相手にはされなかった。おまけにいまだに、蛇女を見たと言う話が出てくる」

長年の秘密から解放されたためか、男性は饒舌だった。

「俺は、時々薄ら寒くなる。元は確かに俺の作り話だったはずのものが、いつの間にかひとりでに動き回っている。蛇女を見たという奴らは、一体何を見とるんだろうなぁ」

大きくため息をつく男性を見つめながら、私は本当はいないはずの蛇女の姿を想像した。

そして、先ほどの話ではちっとも感じなかった怖気が、背中を走るのを感じたのだった。

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なるほど。想像の創造物が現実に、ということですかね。
皆の心に棲みついた蛇女、怖い😱

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