"眠り姫"は僕のクラスメートだ。
ところ構わず寝ているので、そう呼ばれている。
先生たちも彼女に関しては諦めているらしい。
ある休み時間のこと。
「えー、また私寝てた?」
「え、あんた自覚ないの?」
「だって私ちゃんと授業聞いてたもん」
「私にはぐっすり眠っているようにしか見えなかったけどね」
「高橋がアメリカと中国がなんちゃらーって話してたの覚えてるし」
「寝ぼけながら聞いてるから覚えたんじゃないの?」
「ちゃんとノートもとってたし。ほら」
そう言って彼女が見せた地理のノートを見て、彼女の友人と僕は固まった。
「え…」
そこには紛う事なくさっきの授業の板書が書かれている。
しかし、先程の授業で彼女はノートを取るどころかペンすら持たずに眠っていた。
先生が授業中に言っていた「ここテストに出るぞー」もご丁寧に赤で書かれているから、予め書いておいたノートではなさそうだ。
彼女の友人が詳しく聞こうとすると、タイミングがいいのか悪いのか、チャイムが鳴ってしまった。
「お前ら席つけー。チャイムなってんぞー。教科書105ページの問題解けー」
数学の佐々木が入ってきて言った。皆一様に問題を解き始める。
僕はふとあることを思いつき、それを否定するために後ろの席の彼女の教科書を手にとった。
彼女は性懲りもなくまた眠っている。
105ページを開く。
そこには___________解が書かれてあった。
しかし、問題の途中で数式が途切れている。
「何するの?もぉ…。せっかく解いてたのに…」
タイミングが良すぎるほどに彼女が寝言をささやく。
背筋になにか冷たいものが流れ落ちていく。
彼女の夢と現実はリンクしている…
それが僕の仮説だ。
まさかとは思ったが、そのまさかだったらしい。
そこで、ふと思った。
リンクしているのではなく、ここはもう既に彼女の夢の中なんじゃないのか...
…いやいや、いくらなんでもそれはありえな
「気づいた?ここは、私の、夢の、中」
彼女の声にも、全然別の声にも聞こえる声が僕の頭の中に響く。
突然、僕の視界が揺れ出した。
ここは本当に現実なのだろうか。
彼女の夢の中なのだろうか。
それとも自分自身の夢の中だろうか。
僕でも彼女でもない、他の誰かの夢の中なのだろうか。
あなたのいるそこは、現実…?それとも
夢?
作者退会会員
こんにちは。はじめまして。意を決して初投稿してみました、にゃんころべえです。
少しでも奇妙で不思議な心地を味わってくだされば幸いです。
駄文失礼いたしました。